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珍道中は続く
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結局小屋の中ではあるがお母様のわがままから全員で雑魚寝をし、朝となり目を覚ました。私としてはヒイラギとナズナさんは個室に行ってもらおうとしたが「昔のようにみんなで寝ましょうよ」という空気を読まない発言から、眠かった私たちは「じゃあもう全員で寝よう」と無理やり話を終わらせたのだった。
外へ出ると昨夜は気付かなかったが石材が置かれている。それを見ていると、すぐに国境を作れるように石の加工を出来る者がここに来ると付近の石を使って石材を作っていると教えられた。もちろん最初にやり始めたのはタデである。
今朝も焚き火を囲みながら売り物を食べているとふいにヒイラギが口を開く。
「あ、始まったみたいだね」
「何が?」
唐突な言葉の意味が分からず聞き返すと私とスイレン以外のみんなは山を見ている。
「姫には聞こえない? 爆発の音が」
ヒイラギはそう言うのだが、スイレンと顔を見合わせ耳を澄ますがやはり聞こえない。お母様とハコベさん、ナデシコさんもほとんど聞こえないそうだが、それ以外の者にはかなり遠くでドカンという音が聞こえるそうだ。お父様をはじめ聞こえる人の聴力は一体どうなっているのだろうと苦笑いしてしまう。
今日ここに残るナデシコさんとキキョウさん、そして広場へ戻る者たちと別れ私たちはリトールの町を目指す。お母様たちは相変わらず話に夢中でなかなかスピードが上がらない。もちろん女性陣を置いて離れる訳にもいかず、いつものようにサクサクと進めなくてもどかしさを感じ私たち先頭集団は溜め息が出てしまう。もちろん後方を歩くお母様たちはそれに気付かない。
ようやく日も暮れ始めた頃に国境に到着した。もう今日はリトールの町に泊まるしかない時間帯だ。本来ならもっと早くに着いていたはずだが、私はもう気にしなくなった小規模な砂嵐に体の弱いハコベさんをさらす訳にもいかず、途中で立ち止まり荷車の陰に隠れてもらってやり過ごしたりといつもよりも相当時間をかけてここまで来たのだ。私とヒイラギですら疲れきっているのだから、久しぶりの旅をしているスイレンや初めての旅のタラはとてつもない疲労感に襲われていることだろう。にもかかわらず女性陣は「話しているうちにすぐに着いたわね」などと言っており、私とヒイラギは開いた口が塞がらなかった。
「ジェイソンさーん! 開けてくださーい!」
私は大きな声で叫びながら国境の扉をドンドンと叩くと、すぐに扉は開かれた。
「先生! ……先生? もしや先生に何かあったのかなお嬢ちゃん!?」
じいやラブのジェイソンさんはニコニコしながら扉を開けるとじいやを探してキョロキョロし、いないと分かると青ざめながらそう言った。
「あら、あなたが噂のジェイソンさんね。はじめまして、これでも一応王妃のレンゲです。いつもじいやや子どもたちがお世話になっております」
お母様がニコニコと挨拶をすると「……王妃……子ども!?」とジェイソンさんは驚きの表情で私を見た。そういえば自己紹介らしきものもしたことがなかったことに今さら気付く。
「今まで大変失礼いたしました!」
慌てて敬礼をしたジェイソンさんに私も慌てて返答する。
「ジェイソンさん、全く気にしていないし、むしろ今まで通りのほうが私も気が楽だから普通にして」
慌て合戦をしていたが、お母様は「今日はじいや抜きでリトールの町へ行くの」とウキウキしながら言うものだから、冷や汗をかいたジェイソンさんを始めとする国境警備隊は左右に分かれ「行ってらっしゃいませ!」と敬礼をしている。そこに自分の母親ではあるがかなりの美人であるお母様が「まぁ素敵」なんて言うものだから、国境警備隊はさらに汗をかきながら真っ赤になっていた。
国境を抜けて歩き出すも女性陣のペースは崩れず、むしろ「久しぶりにこの国に来たわ」とか「こうして来てみると空気が違うわね」とさらに話に花が咲いている。
間もなく長かった旅が終わると思った私とヒイラギは安堵の溜め息を吐いたが、急にポニーとロバが歩みを止めた。あとこの小さな丘を越えればリトールの町が見えるのにだ。どうしたものかと二頭を見ると、ポニーは「ヒヒン!」といななきロバは「イーヒ!イーヒヒ!」と騒ぐ。驚いているとまだ見えぬ丘の向こうからもっと立派ないななきが聞こえる。
「……え?」
まさか? その思いから一人で駆け出し丘を越えるとリトールの町が見える。その入り口にたくさんの馬車が見えたのだ。そのうちの一頭はずっといななき激しく前掻きをしている。原因が分からず興奮しだしたバに御者たちは慌てている。
「みんな! ニコライさんがいるわ!」
後ろを振り向きそう叫ぶと、女性陣も興味を示し歩みも早くなる。ようやく今日の旅が終わろうとしている。
外へ出ると昨夜は気付かなかったが石材が置かれている。それを見ていると、すぐに国境を作れるように石の加工を出来る者がここに来ると付近の石を使って石材を作っていると教えられた。もちろん最初にやり始めたのはタデである。
今朝も焚き火を囲みながら売り物を食べているとふいにヒイラギが口を開く。
「あ、始まったみたいだね」
「何が?」
唐突な言葉の意味が分からず聞き返すと私とスイレン以外のみんなは山を見ている。
「姫には聞こえない? 爆発の音が」
ヒイラギはそう言うのだが、スイレンと顔を見合わせ耳を澄ますがやはり聞こえない。お母様とハコベさん、ナデシコさんもほとんど聞こえないそうだが、それ以外の者にはかなり遠くでドカンという音が聞こえるそうだ。お父様をはじめ聞こえる人の聴力は一体どうなっているのだろうと苦笑いしてしまう。
今日ここに残るナデシコさんとキキョウさん、そして広場へ戻る者たちと別れ私たちはリトールの町を目指す。お母様たちは相変わらず話に夢中でなかなかスピードが上がらない。もちろん女性陣を置いて離れる訳にもいかず、いつものようにサクサクと進めなくてもどかしさを感じ私たち先頭集団は溜め息が出てしまう。もちろん後方を歩くお母様たちはそれに気付かない。
ようやく日も暮れ始めた頃に国境に到着した。もう今日はリトールの町に泊まるしかない時間帯だ。本来ならもっと早くに着いていたはずだが、私はもう気にしなくなった小規模な砂嵐に体の弱いハコベさんをさらす訳にもいかず、途中で立ち止まり荷車の陰に隠れてもらってやり過ごしたりといつもよりも相当時間をかけてここまで来たのだ。私とヒイラギですら疲れきっているのだから、久しぶりの旅をしているスイレンや初めての旅のタラはとてつもない疲労感に襲われていることだろう。にもかかわらず女性陣は「話しているうちにすぐに着いたわね」などと言っており、私とヒイラギは開いた口が塞がらなかった。
「ジェイソンさーん! 開けてくださーい!」
私は大きな声で叫びながら国境の扉をドンドンと叩くと、すぐに扉は開かれた。
「先生! ……先生? もしや先生に何かあったのかなお嬢ちゃん!?」
じいやラブのジェイソンさんはニコニコしながら扉を開けるとじいやを探してキョロキョロし、いないと分かると青ざめながらそう言った。
「あら、あなたが噂のジェイソンさんね。はじめまして、これでも一応王妃のレンゲです。いつもじいやや子どもたちがお世話になっております」
お母様がニコニコと挨拶をすると「……王妃……子ども!?」とジェイソンさんは驚きの表情で私を見た。そういえば自己紹介らしきものもしたことがなかったことに今さら気付く。
「今まで大変失礼いたしました!」
慌てて敬礼をしたジェイソンさんに私も慌てて返答する。
「ジェイソンさん、全く気にしていないし、むしろ今まで通りのほうが私も気が楽だから普通にして」
慌て合戦をしていたが、お母様は「今日はじいや抜きでリトールの町へ行くの」とウキウキしながら言うものだから、冷や汗をかいたジェイソンさんを始めとする国境警備隊は左右に分かれ「行ってらっしゃいませ!」と敬礼をしている。そこに自分の母親ではあるがかなりの美人であるお母様が「まぁ素敵」なんて言うものだから、国境警備隊はさらに汗をかきながら真っ赤になっていた。
国境を抜けて歩き出すも女性陣のペースは崩れず、むしろ「久しぶりにこの国に来たわ」とか「こうして来てみると空気が違うわね」とさらに話に花が咲いている。
間もなく長かった旅が終わると思った私とヒイラギは安堵の溜め息を吐いたが、急にポニーとロバが歩みを止めた。あとこの小さな丘を越えればリトールの町が見えるのにだ。どうしたものかと二頭を見ると、ポニーは「ヒヒン!」といななきロバは「イーヒ!イーヒヒ!」と騒ぐ。驚いているとまだ見えぬ丘の向こうからもっと立派ないななきが聞こえる。
「……え?」
まさか? その思いから一人で駆け出し丘を越えるとリトールの町が見える。その入り口にたくさんの馬車が見えたのだ。そのうちの一頭はずっといななき激しく前掻きをしている。原因が分からず興奮しだしたバに御者たちは慌てている。
「みんな! ニコライさんがいるわ!」
後ろを振り向きそう叫ぶと、女性陣も興味を示し歩みも早くなる。ようやく今日の旅が終わろうとしている。
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