貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

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お父様の発見②

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 話し合いが終わると私たちは全員で水路の建設場所へと向かった。蛇籠が並べられ始めた水路は寸分も狂わず均一に並べられ圧巻である。やる気に満ち溢れている私たちは出来ることをそれぞれする。
 シャガとオヒシバはそのまま水路の建設に加わり、私と残った者とで持って来たスコップで地面を掘ってみることにした。住宅予定地にも岩盤があるかの調査だ。
 お父様のような人間重機になれない私たちは、見える範囲の全ての土を掘り返すことは出来ないのでポイントを絞り数ヶ所ずつ掘ってみると、意外にも川底予定地よりも高い位置に岩盤が広がっていた。そして広場に向かうにつれて岩盤は緩やかに下っている。そこそこ広い範囲を調べてみたがどこもそのような感じであった。その岩盤も川底と同じように頑丈ではあるが強い力を加えると掘ることが出来そうである。

「地盤がしっかりしているから大丈夫そうね」

「そうだね。では私たちも水路の建設に加わろうか」

 額の汗を拭いながらも爽やかに話すヒイラギに従い隣の建設現場へと向かう。イチビとハマスゲは出来た蛇籠を積んだり並べたりする組に入り、ヒイラギは蛇籠作りに加わった。ヒイラギにはピッタリの作業のようで「極限まで隙間を作らずに石を入れるよ」と張り切っている。
 水路は思った以上に遠くまで掘り進めていたので、先頭にいると思われるスイレンと人間重機たちを探しにまだ水の無い川底を歩いて行く。

「スイレーン! お父様ー! じいやー!」

 姿を確認し走り寄るが三人は何か話に夢中である。

「ずいぶん遠くまで掘ったのね。……どうしたの?」

「僕も夢中になっちゃってこんなに離れているのに気付かなかったの。それでね、お父様とじいやが音が聞こえるって言うんだけどカレンは聞こえる? 僕には聞こえないんだけど……」

 スイレンの言っている意味が分からず、でも耳を澄ましてみるが風の音と建設現場の音しか聞こえない。

「水路からではなくて?」

「違うな。もっと南からだ」

 お父様の返答にじいやも頷く。この人たちは聴力すらも常人離れしているのだろうか?

「……カレン、スイレン、少し探索してみるか」

 お父様はワクワクとした表情でニッコリと笑う。それにつられて私とスイレンも大きく頷いた。

「では私は水を貯めれるようここを掘っております。気を付けて行ってらっしゃいませ」

 じいやはここに残り人工オアシスの為に岩盤を掘るようだ。お言葉に甘えて私たちは冒険へと出かけることにする。お父様が南へ行きたいというので、また方向音痴になってしまわないように私たちは左右に分かれてお父様と手を繋ぐ。とは言っても人工オアシス予定地のすぐ南には人の背丈ほどの砂山があり、まずはこれを越える。
 砂山を越えてみたもののすぐにまた砂山があり、スイレンはげんなりとしている。その砂山を越え、心地良い風を浴びながら東側からゆっくりと周囲を見回す。初めて見た時は絶望しか感じなかったどこまでも広がる赤い砂の大地は美しいとすら思えてきた。そして顔を南に向けた時に風によって何かが聞こえる。私たちは顔を見合わせ、何気なく西側を見ると砂丘の間に赤でもない砂でも土でもないものを見つけた。

「先にどちらへ行く?」

 お父様は少年のように目を輝かせている。私とスイレンも興奮をしている。そこで少し話し合い、当初の目的は南を目指すことだったのでそのまま南へ直進することにした。かなりなだらかな砂の斜面を登るごとに音はハッキリと聞こえてくる。こうなると私たちは小走りになり、キャッキャと笑いながら坂の上に到着するとそれは雄大に現れた。

「川だ!」

 スイレンは喜び叫んでいる。川岸にはまばらにではあるが元々生えていたと思われる植物もちらほらと見える。

「広場から南はこのように坂が多くて、私たちはもう体力もほとんど残っていなかったから探索はしていなかったんだ。まさかここにも川があるとは思わなかった」

 お父様は驚きと喜びの入り混じった顔をして川を見つめている。

「私、川の向こうに渡ったでしょう? あそこはここよりも標高が高くて周囲をよく見渡せたの。いつも私たちが行く川は確かにこちら側に向かって曲がっていたわ」

「ということは同じ川だってこと?」

 私の話を聞いたスイレンは興味深そうにそう聞く。

「おそらくそうだと思うわ。意外にも水は無いように見えて豊富だったのよ。……ということはさっき見たあれも幻覚ではないわね」

 私がいたずらっぽく笑うと目の前の少年と、少年の心を持った大人は目を輝かせる。

「ではまた探索に行くぞ!」

 お父様の号令に私とスイレンは「おー!」と叫び、先ほど見た場所を目指して歩き始めた。もちろん頓珍漢な方向へ向かおうとしたお父様を止め、またみんなで手を繋いで一歩ずつ確実に進んで行く。
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