132 / 366
カレンとヒイラギ②
しおりを挟む
ヒイラギを連れて少し離れた場所に行き足を止める。
「どうしたの姫? 泣いているの?」
「だって……私には何の力もなくて……」
移動しているうちに涙がこぼれてしまい、つい愚痴を言ってしまうとヒイラギは優しく微笑んで涙を拭ってくれた。
「何を言っているの? 姫のおかげで森も出来たし、畑から食べ物も収穫出来ているんだよ? 姫がいなかったら私たちは生きていけないところだったんだよ」
その言葉にナズナさんに申し訳ないと思いながらもヒイラギにしがみついて泣いてしまった。ヒイラギは嫌がるわけでもなく「姫は頑張っているよ」と頭を撫でてくれるので余計涙が出てしまった。
散々泣いて涙が出なくなるとヒイラギは「泣きやんだ」と言って笑っている。そして私の手を引き違う場所へと連れて行かれた。
「これも作って欲しいと言っていたでしょ? タデと作ったんだけどこんな感じで大丈夫かな? 今度はこれで何を作るの?」
ニコニコと微笑むヒイラギの前には頼んでいたものが置かれていた。
「まだ少し道具が足りないのだけれど……油を作ろうと思っていて……」
「えぇ!? どうやって!?」
あまりにもヒイラギが驚くものだからこちらも驚いてしまう。確かに油を購入した時に貴重だとは言われたが、そんなにも珍しいものなのかと首を傾げてしまう。聞いてみると森の民たちは少量の油分が含まれる植物よりも、森で狩りをした時にだけ動物の脂を使っていたらしい。そのほうが調達が早かったようだ。
「ナーの種を油に出来るのよ」
「嘘……」
ナーの匂いが苦手なヒイラギは驚きと絶望的が入り混じった顔をしている。
「まだ作ってもらいたい道具もあるし、もっと種を集めてからそれをやるわ。そんなことよりもみんなの家について話したかったの」
そう言うとヒイラギは「家か……」と呟いた。
「あのね、元々森の民は木で作った家に住んでいたの。姫が住んでいるようなね。だけど前にナズナを連れてリトールの町へ行ったでしょ? ナズナがリトールの町のレンガ作りの家に憧れてしまってね……困ったことに糸を作る時にその話ばかりしていたようで、女性たちはレンガの家に住みたいようなんだよね」
苦笑いでヒイラギはそう言い、私は知らなかったと驚く。
「私たちは自然のものを使ったものを好むんだけど、レンガも元は土でしょう? みんな乗り気になっているんだよね……。でも一定数は木の家が良いと言う者もいて……」
レンガの家を作るのは良い。地震もほぼほぼ無いと聞いたから崩れる可能性は少ないだろう。でも、だとしたらセーメントもまた大量に購入しないといけない。
「……国境が出来てからセーメントを買って作ったほうが効率が良いわよね……あとは寒さから身を守るものよね……」
「それなんだよね……」
私たちが顔を見合わせ苦笑いをしていると近くの茂みがガサガサと音をたてる。
「話は聞かせてもらいました!」
私とヒイラギが驚いてそちらを見るとオヒシバが立ち上がり叫んでいる。後ろにはイチビたちがオヒシバを止めようと必死になりながらも私たちに謝っている。
「私たちはブルーノさんのお宅にお世話になっている時に、家の基礎というものを教えていただきました」
後ろでは「もう黙れ」とイチビたちがオヒシバを引っ張って行こうとしているが、私とヒイラギはそれを止め話を聞いてみた。
「私たちの知る地面に柱を直接打ち込む方法はあの町では使われておらず、家の下には石が敷き詰められているそうなのです」
確かに地面に直接柱を打ち込むと経年劣化で傷んだりするだろうし、水の豊富なあの町では腐ってしまうのだろう。
「きっとレンガと木を組み合わせるともっと素敵な家になると思うのです」
自信満々にそう言うオヒシバだが、チューダー様式という造りの家はまさにその通りの家なのを思い出す。少しその場で待っていてほしいと伝え、黒板とチョークンを手にして戻り、記憶の中のチューダー様式の家を描いていく。美樹が友人の家で建築系のゲームをやらせてもらった時に、自分の住んでいるボロボロの家ではなく憧れの家をゲーム内で建てようと調べたおかげである。
出来上がった絵はまさにその時に見た外国の家で、本当ならこの乾燥している土地では石だけで造られた家が良いのだろうが最近では森のおかげで幾分空気も湿り気を帯びてきている。きっとレンガと木で作られるこの家でも問題はないだろう。
「私の記憶だとこういう家があったわ」
みんなにその絵を見せると目を輝かせて騒いでいる。もちろん私もその家に住みたい。そして和洋折衷を取り入れ玄関では是非とも靴を脱ぐ文化にしたい。
「あとはね、どうしても譲れない部分があるの」
みんなはそれを聞き、私に詳しく聞きたいと言うので家についてそのまま話し合うことになった。
「どうしたの姫? 泣いているの?」
「だって……私には何の力もなくて……」
移動しているうちに涙がこぼれてしまい、つい愚痴を言ってしまうとヒイラギは優しく微笑んで涙を拭ってくれた。
「何を言っているの? 姫のおかげで森も出来たし、畑から食べ物も収穫出来ているんだよ? 姫がいなかったら私たちは生きていけないところだったんだよ」
その言葉にナズナさんに申し訳ないと思いながらもヒイラギにしがみついて泣いてしまった。ヒイラギは嫌がるわけでもなく「姫は頑張っているよ」と頭を撫でてくれるので余計涙が出てしまった。
散々泣いて涙が出なくなるとヒイラギは「泣きやんだ」と言って笑っている。そして私の手を引き違う場所へと連れて行かれた。
「これも作って欲しいと言っていたでしょ? タデと作ったんだけどこんな感じで大丈夫かな? 今度はこれで何を作るの?」
ニコニコと微笑むヒイラギの前には頼んでいたものが置かれていた。
「まだ少し道具が足りないのだけれど……油を作ろうと思っていて……」
「えぇ!? どうやって!?」
あまりにもヒイラギが驚くものだからこちらも驚いてしまう。確かに油を購入した時に貴重だとは言われたが、そんなにも珍しいものなのかと首を傾げてしまう。聞いてみると森の民たちは少量の油分が含まれる植物よりも、森で狩りをした時にだけ動物の脂を使っていたらしい。そのほうが調達が早かったようだ。
「ナーの種を油に出来るのよ」
「嘘……」
ナーの匂いが苦手なヒイラギは驚きと絶望的が入り混じった顔をしている。
「まだ作ってもらいたい道具もあるし、もっと種を集めてからそれをやるわ。そんなことよりもみんなの家について話したかったの」
そう言うとヒイラギは「家か……」と呟いた。
「あのね、元々森の民は木で作った家に住んでいたの。姫が住んでいるようなね。だけど前にナズナを連れてリトールの町へ行ったでしょ? ナズナがリトールの町のレンガ作りの家に憧れてしまってね……困ったことに糸を作る時にその話ばかりしていたようで、女性たちはレンガの家に住みたいようなんだよね」
苦笑いでヒイラギはそう言い、私は知らなかったと驚く。
「私たちは自然のものを使ったものを好むんだけど、レンガも元は土でしょう? みんな乗り気になっているんだよね……。でも一定数は木の家が良いと言う者もいて……」
レンガの家を作るのは良い。地震もほぼほぼ無いと聞いたから崩れる可能性は少ないだろう。でも、だとしたらセーメントもまた大量に購入しないといけない。
「……国境が出来てからセーメントを買って作ったほうが効率が良いわよね……あとは寒さから身を守るものよね……」
「それなんだよね……」
私たちが顔を見合わせ苦笑いをしていると近くの茂みがガサガサと音をたてる。
「話は聞かせてもらいました!」
私とヒイラギが驚いてそちらを見るとオヒシバが立ち上がり叫んでいる。後ろにはイチビたちがオヒシバを止めようと必死になりながらも私たちに謝っている。
「私たちはブルーノさんのお宅にお世話になっている時に、家の基礎というものを教えていただきました」
後ろでは「もう黙れ」とイチビたちがオヒシバを引っ張って行こうとしているが、私とヒイラギはそれを止め話を聞いてみた。
「私たちの知る地面に柱を直接打ち込む方法はあの町では使われておらず、家の下には石が敷き詰められているそうなのです」
確かに地面に直接柱を打ち込むと経年劣化で傷んだりするだろうし、水の豊富なあの町では腐ってしまうのだろう。
「きっとレンガと木を組み合わせるともっと素敵な家になると思うのです」
自信満々にそう言うオヒシバだが、チューダー様式という造りの家はまさにその通りの家なのを思い出す。少しその場で待っていてほしいと伝え、黒板とチョークンを手にして戻り、記憶の中のチューダー様式の家を描いていく。美樹が友人の家で建築系のゲームをやらせてもらった時に、自分の住んでいるボロボロの家ではなく憧れの家をゲーム内で建てようと調べたおかげである。
出来上がった絵はまさにその時に見た外国の家で、本当ならこの乾燥している土地では石だけで造られた家が良いのだろうが最近では森のおかげで幾分空気も湿り気を帯びてきている。きっとレンガと木で作られるこの家でも問題はないだろう。
「私の記憶だとこういう家があったわ」
みんなにその絵を見せると目を輝かせて騒いでいる。もちろん私もその家に住みたい。そして和洋折衷を取り入れ玄関では是非とも靴を脱ぐ文化にしたい。
「あとはね、どうしても譲れない部分があるの」
みんなはそれを聞き、私に詳しく聞きたいと言うので家についてそのまま話し合うことになった。
23
お気に入りに追加
1,995
あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。


【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる