129 / 366
回復
しおりを挟む
「治ったー!」
「本当に?」
翌朝目を覚ますと熱は下がり咳も止まっている。無駄に元気アピールをしたが逆にスイレンに心配されてしまい、お母様を呼びに部屋から出て行ってしまった。少しすると家族全員が部屋になだれ込んで来る。
「カレン治ったのか!?」
「無理はいけないわ」
お父様とお母様はペタペタと私のおでこや顔を触り熱の確認をしている。本当に熱が下がったのを確認した二人はホッとすると同時に病み上がりだからと動き回るのを禁止した。
朝食の準備も片付けも手伝わせてもらえず、今日は広場から出るのを禁止された為に手持ち無沙汰になってしまう。森へも畑にも水路建設の場にも足を踏み入れることを許されず少々不貞腐れてしまう。昨日一日休養をした他の子どもたちは元気に仕事をしているのだから。
脱穀を手伝おうとしても糸作りに加わろうとしても「休んでいてください」としか言われず、ポニーとロバのブラッシングを丁寧にやっても時間が余り過ぎてしまう。ポニーとロバとおやつの時間に果実を食べ、暇を持て余した私は家の東側にあるレンガ作りの場所へと向かう。レンガを焼く窯も増えた分、在庫もかなり増えている。シャガたちから作り方を教わった者たちは日々レンガを作り続けていてくれたようで、その作業をボーっと見学することにした。
以前私が教えたように焼いている途中で割れてしまったレンガは粉になるまで粉砕し、粘土と混ぜて新たなレンガにしている。そのおかげで耐久性が上がっているのか、完成したレンガ置き場でレンガを叩いてみると新しい物ほど甲高い音を響かせるのだ。……閃いてしまったと同時に悪知恵も働く。広場から出るのはダメで脱穀も糸作りもダメならここで作業をすれば良いのだ。幸いにもレンガ作りの者たちは作るのや火加減に必死で私をあまり気にしていない。
今は使われていない最初に私が作った窯の隣にしゃがみ、まずは草をむしって地面を露出させる。ある程度むしったところで手を止め、素知らぬ顔をして古いレンガを運び地面に並べていく。数段重ね高さを出したこの部分は土台となる。今からこれ以上やると昼食の時にお母様に見つかってしまいそうなので、近くにバケツを置いたり使いもしない道具を置いてあくまでも一人遊びをしているように見せかける。
そして昼食後に急ピッチで作業を進める。新しいレンガを取りに行く時も作業をしている者たちに「レンガを積んで遊んでいるの」と微笑めば、皆「そうですか」と笑ってくれる。何往復もしレンガを集めそれを外側だけ『コ』の字に積んでいく。四段ほど積んだところで内部に数ヶ所レンガを置き、初めて作った窯の蓋として使っていた物を持って来る。これは最初に瓦状に作ったが、水分が多かったせいか焼いているうちに板状に近い形状になってしまったのだがまさかこれがここで役立つとは思ってもいなかった。それを敷くように並べ奥は隙間を開ける。
そしてまた『コ』の字にレンガを積み上げ、板状の物で天板のように塞ぎ上にレンガを一段敷き詰めた。一度全体を確認し、『コ』の字の開いている部分を少し狭くしたくて粉砕する前の割れたレンガをもらってきてはめ込む。なかなか良い感じだ。
近くに置いてあったバケツを持ち「粘土遊びをするの」とレンガを捏ねている者のところへ行き、粘土と粉砕した粉状のレンガを貰い、遊んでいると見せかけてよく混ぜる。そして積み上げたレンガの場所に戻り、板状のレンガを挟んだ辺りに出来ている隙間をその粘土を重ね付けして塞ぐ。
完璧よ。完璧だわ。そう、出来たのはレンガ作りのオーブンだ。料理をするわけではないが、試し焼きと粘土の乾燥を兼ねて火をつけてみる。下の段で燃えた空気が奥に作った隙間を通って上の段を暖める。火をつけてみるとやはり何かを焼いてみたくなり、ふと振り返ると広場との境い目にある畑にはトウモロコーンが実っている。畑に入るわけではないからセーフだと自分に言い聞かせ、広場から手を伸ばして一本を収穫した。
レンガの焼き場から何食わぬ顔をして薪を持って来てどんどんと焚べていくと、オーブンの温度はどんどんと上がっていく。頃合いを見計らいトウモロコーンを入れるとジュッと焼ける音がしている。醤油をかけて食べたい衝動に駆られるが、これは試し焼きだと我慢する。木の棒でトウモロコーンを転がし、全体的に焼けたところでまだ使っていない薪を皿代わりにして取り出した。
「うまっ!」
うっかり生前の言葉が出てしまうほど、ただ焼いただけのトウモロコーンは美味しかった。中まで火も通り夢中で食べていると背後に気配を感じた。
「カレン! 何をしているの!」
恐る恐る振り向くと鬼の形相のお母様が立っていた。
「えぇと……料理をする窯を作っていて……食べる?」
天然のお母様はものすごく怒っているのに素直に焼きトウモロコーンを受け取って食べる。するとみるみる機嫌が直って褒められてしまった。いつの間にかもう夕方となっており、夕食にこの焼きトウモロコーンを出そうとお母様が言い出し急きょ大量のトウモロコーンを焼くことになってしまった。結果オーライである。
「本当に?」
翌朝目を覚ますと熱は下がり咳も止まっている。無駄に元気アピールをしたが逆にスイレンに心配されてしまい、お母様を呼びに部屋から出て行ってしまった。少しすると家族全員が部屋になだれ込んで来る。
「カレン治ったのか!?」
「無理はいけないわ」
お父様とお母様はペタペタと私のおでこや顔を触り熱の確認をしている。本当に熱が下がったのを確認した二人はホッとすると同時に病み上がりだからと動き回るのを禁止した。
朝食の準備も片付けも手伝わせてもらえず、今日は広場から出るのを禁止された為に手持ち無沙汰になってしまう。森へも畑にも水路建設の場にも足を踏み入れることを許されず少々不貞腐れてしまう。昨日一日休養をした他の子どもたちは元気に仕事をしているのだから。
脱穀を手伝おうとしても糸作りに加わろうとしても「休んでいてください」としか言われず、ポニーとロバのブラッシングを丁寧にやっても時間が余り過ぎてしまう。ポニーとロバとおやつの時間に果実を食べ、暇を持て余した私は家の東側にあるレンガ作りの場所へと向かう。レンガを焼く窯も増えた分、在庫もかなり増えている。シャガたちから作り方を教わった者たちは日々レンガを作り続けていてくれたようで、その作業をボーっと見学することにした。
以前私が教えたように焼いている途中で割れてしまったレンガは粉になるまで粉砕し、粘土と混ぜて新たなレンガにしている。そのおかげで耐久性が上がっているのか、完成したレンガ置き場でレンガを叩いてみると新しい物ほど甲高い音を響かせるのだ。……閃いてしまったと同時に悪知恵も働く。広場から出るのはダメで脱穀も糸作りもダメならここで作業をすれば良いのだ。幸いにもレンガ作りの者たちは作るのや火加減に必死で私をあまり気にしていない。
今は使われていない最初に私が作った窯の隣にしゃがみ、まずは草をむしって地面を露出させる。ある程度むしったところで手を止め、素知らぬ顔をして古いレンガを運び地面に並べていく。数段重ね高さを出したこの部分は土台となる。今からこれ以上やると昼食の時にお母様に見つかってしまいそうなので、近くにバケツを置いたり使いもしない道具を置いてあくまでも一人遊びをしているように見せかける。
そして昼食後に急ピッチで作業を進める。新しいレンガを取りに行く時も作業をしている者たちに「レンガを積んで遊んでいるの」と微笑めば、皆「そうですか」と笑ってくれる。何往復もしレンガを集めそれを外側だけ『コ』の字に積んでいく。四段ほど積んだところで内部に数ヶ所レンガを置き、初めて作った窯の蓋として使っていた物を持って来る。これは最初に瓦状に作ったが、水分が多かったせいか焼いているうちに板状に近い形状になってしまったのだがまさかこれがここで役立つとは思ってもいなかった。それを敷くように並べ奥は隙間を開ける。
そしてまた『コ』の字にレンガを積み上げ、板状の物で天板のように塞ぎ上にレンガを一段敷き詰めた。一度全体を確認し、『コ』の字の開いている部分を少し狭くしたくて粉砕する前の割れたレンガをもらってきてはめ込む。なかなか良い感じだ。
近くに置いてあったバケツを持ち「粘土遊びをするの」とレンガを捏ねている者のところへ行き、粘土と粉砕した粉状のレンガを貰い、遊んでいると見せかけてよく混ぜる。そして積み上げたレンガの場所に戻り、板状のレンガを挟んだ辺りに出来ている隙間をその粘土を重ね付けして塞ぐ。
完璧よ。完璧だわ。そう、出来たのはレンガ作りのオーブンだ。料理をするわけではないが、試し焼きと粘土の乾燥を兼ねて火をつけてみる。下の段で燃えた空気が奥に作った隙間を通って上の段を暖める。火をつけてみるとやはり何かを焼いてみたくなり、ふと振り返ると広場との境い目にある畑にはトウモロコーンが実っている。畑に入るわけではないからセーフだと自分に言い聞かせ、広場から手を伸ばして一本を収穫した。
レンガの焼き場から何食わぬ顔をして薪を持って来てどんどんと焚べていくと、オーブンの温度はどんどんと上がっていく。頃合いを見計らいトウモロコーンを入れるとジュッと焼ける音がしている。醤油をかけて食べたい衝動に駆られるが、これは試し焼きだと我慢する。木の棒でトウモロコーンを転がし、全体的に焼けたところでまだ使っていない薪を皿代わりにして取り出した。
「うまっ!」
うっかり生前の言葉が出てしまうほど、ただ焼いただけのトウモロコーンは美味しかった。中まで火も通り夢中で食べていると背後に気配を感じた。
「カレン! 何をしているの!」
恐る恐る振り向くと鬼の形相のお母様が立っていた。
「えぇと……料理をする窯を作っていて……食べる?」
天然のお母様はものすごく怒っているのに素直に焼きトウモロコーンを受け取って食べる。するとみるみる機嫌が直って褒められてしまった。いつの間にかもう夕方となっており、夕食にこの焼きトウモロコーンを出そうとお母様が言い出し急きょ大量のトウモロコーンを焼くことになってしまった。結果オーライである。
23
お気に入りに追加
1,989
あなたにおすすめの小説
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~
ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果
安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。
そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。
煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。
学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。
ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。
ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は……
基本的には、ほのぼのです。
設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる