貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

文字の大きさ
上 下
127 / 366

休日②

しおりを挟む
 昼食が終わると午後からはどうしようかという声が上がる。昼寝をしたらどうかと提案したが、大人たちは「働いてもないのに寝れない」などと言う。基本的に真面目な民族なのだと改めて認識する。
 ただ農作業チームは受粉や収穫をしないといけない物があると思い出したように言い始め、子どもやお年寄りたちは昼寝を、大人たちは総出で農作業の手伝いをすることになった。ただし休日なのといつもよりも人数がいるので働くのは一時間と決め、ニコライさんから貰った砂時計を準備し昼寝と農作業が始まった。

────

「みんな!時間よ!」

 私は大声で畑に向かって叫ぶ。子どもたちは昼寝とは言ったが、私とスイレンはこの一時間リバーシの勝負をしていた。やはりスイレンは頭が良いので、数手先まで考えてコマを置く。私はやり慣れている分対策をするが、それでもスイレンとの勝率は五十パーセントである。

 私とスイレンは有意義な時間を過ごし、大人たちは収穫の喜びを楽しみ、子どもたちは昼寝から起きてくる。その子どもたちにまだ遊べるほど元気があるかと聞くと全員が肯定してくれる。

「よし!鬼ごっこをしましょう!」

 子どもの遊びの定番である鬼ごっこを提案すると「オニゴッコ?」と全員が首を傾げる。種類もあればご当地ルールもあるのでどうしようかと思ったが、美樹が住んでいた地域でのオーソドックスな鬼ごっこの説明をする。まずは鬼の役割について説明し、次にルールを説明する。

「まずは鬼を一人決めて全員が逃げるの。鬼に触られた人は新たに鬼となってみんなを追いかける。最後まで鬼にならずにいた人が勝ちよ」

 逃げる範囲はこの広場だけと言い、私が鬼となって実際にやり始めた。秒でスイレンをタッチし鬼にし、子どもたちを追いかけ回す。キャー!ワー!と騒ぐ子どもたちは楽しそうだ。そして今度は逃げるほうをやったが「鬼の美樹に逃げの美樹」と呼ばれていた私は最後まで逃げ残る。

 次に提案したのは助け鬼だ。これもご当地ルールがあるだろうが、美樹の地域では鬼がタッチすると子はアジトに連行され、連行された子たちは手を繋いで助けを求める。アジトには見張りの鬼がいるが、その見張りの隙をついて逃げている子が捕まっている子をタッチすると、タッチされた子までが逃げられる。

「実際にやってみましょう」

 スイレンを見張り役にし、まずは一人捕まえる。アジトはデーツの木にした。

「誰か助けに来るまでこの木から手を離せないの。逃げている誰かがあなたに触ったら、あなたは逃げられるわ」

 そうして始まった助け鬼だったが、運動神経がよろしくないスイレンは助けを捕まえることが出来ずに子たちはみんな逃げるので大いに盛り上がる。
 しかしこれを見ていたお父様がウズウズとし始めたようだ。

「私もやるぞ!」

 と突如逃げる子として乱入してきた。私たちとしてはやることは変わらないので受け入れたが、お父様の身体能力が凄すぎてタッチが出来ないのだ。追い詰めたと思ってもバック転や側転で逃げ、驚異的なスピードで走り回り子たちを助ける。体力のないスイレンは肩で息をし疲れきっている。

「一度休憩しましょう!」

 果実を食べながら休憩をしていると、見ていた大人たちも混ざりたいと言う。なので範囲を広げ森と畑、民たちの家とナーの花畑までの広範囲を使ってやることにしたが、私はじいやに鬼になって欲しいと頼んだ。シャガは自分から鬼になりたいと志願してきた。イチビは子をやるようだ。
 そして始まった助け鬼だが、大人が入ったことにより本気度が増す。私とシャガが子たちを追い、疲れきったスイレンはただ見ている見張りになり、じいや一人で鉄壁の守りをしている。その守備はさすがである。

 休憩前から走っている私もついに体力が尽きてじいやと見張りを交代した。するとじいやはとてつもないスピードで走り出し、次から次へと子たちを捕まえる。捕まえながらも見張りの補助までし、ついに私とスイレンとシャガの三人で見張りをすることになった。捕らえられた子たちは長い列となっているが、現在残りの子はお父様だけとなりじいやと攻防を繰り広げている。
 二人は私たちを飛び越え、空中ですら一応鬼ごっこをしようとしている。じいやが手を伸ばせばお父様は空中であろうとも体をひねりそれを躱す。地上に降り立つと、もはや何の映画を見ているんだろうというくらいじいやは手と足を駆使しお父様に触れようとするがお父様は見事にそれを避ける。私たちはただただ呆然とそれを見ているだけだ。

「……何をしているんだ?」

「お!?タデ!鬼ご「隙あり!」」

 戻って来たタデの一言でこうして鬼ごっこは終わった。じいやは全国民から賞賛の嵐を受け、悔しがったお父様はタデに八つ当たりの攻撃をし始め、今度はお父様とタデの攻防戦が始まったのだった。
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。 子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。 マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。 その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。 当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。 そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。 マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。 焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。 やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。 HOTランキング1位になることができました! 皆さま、ありがとうございます。 他社の投稿サイトにも掲載しています。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

転生少女、運の良さだけで生き抜きます!

足助右禄
ファンタジー
【9月10日を持ちまして完結致しました。特別編執筆中です】 ある日、災害に巻き込まれて命を落とした少女ミナは異世界の女神に出会い、転生をさせてもらう事になった。 女神はミナの体を創造して問う。 「要望はありますか?」 ミナは「運だけ良くしてほしい」と望んだ。 迂闊で残念な少女ミナが剣と魔法のファンタジー世界で様々な人に出会い、成長していく物語。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

処理中です...