貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

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休日

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 日頃の疲れが溜まっているのか、目が覚めてもスッキリとしないまま広場へと向かう。自分では普通にしているつもりだが周りの者たち、特にスイレンに「元気がない」と言われおとなしく座っているように言われてしまった。
 スイレンの厳しい監視の元に動けずにいるうちに朝食が作られ、それを食べているうちにいつもの元気が出てきた。

 食事を終えると民たちは働こうと動き出すが、たまたま私の近くを通りがかった子どもたちの会話が聞こえてきた。

「今日もたくさん糸を作れるといいな」

「僕たちは新しい畑を耕すみたいだよ」

 なんとなく耳に入った会話ではあるが、私はハッとしてしまう。リトールの町では子どもたちは元気に遊んでいるのに、ヒーズル王国の子どもたちはいつも当たり前に働いているのである。そして日々自分が好きで動いているので気付いていなかったが、この国には休日というものがないのである。ブラック企業も真っ青なことに今さら気付きショックを受けた。

「みんな注目!」

 今までで一番大きな声を腹から出すと、さすがにみんなも驚きから手を止め私に注目した。

「今日は一日休日としましょう!」

 そう声を上げるも「休日?」と首を傾げられてしまう。そうだった。そもそも森の民は狩猟や森の恵みを採取して生活をしていた人たちなので『休日』という概念がなかったのだ。生きる為に日々動き働いてきた人たちに「休日」というものを説明してもなかなか理解してもらえず、とにかくのんびりし子どもたちは遊ぶことと無理やり納得させる。

「じいや!イチビ!シャガ!リトールの町で作った遊び道具を作るわよ!」

 そう言ってじいやたちを呼び寄せたが、私たちの飲み水や畑の水やりはやはり必要で、どうしても水を汲みに行かなければならないとじいやに言われる。そこで手を上げたのがお父様だ。

「カレンはどうしても民たちを休ませたいのだな?確かにこの国の民たちは日々頑張ってくれている。水ならば私が汲みに行く。全員のんびりすることだ」

 普段王様らしくないお父様が権力を使って民たちを休ませることになったが、毎日働いていた民たちは逆に申し訳なさそうにしている。
 お父様はそんな民たちに「休め」と言い、ポニーとロバに一緒に行くかと聞いている。意外にも二頭は一緒に行きたそうな動きをし、お父様は二頭に荷車を装着し自分も荷車を引いて川へと向かった。

 じいやたちと共に跳び縄や独楽、竹ではない竹馬を作り始めると、民たちは集まって来て手伝おうとする。リバーシを作り始める者もいて、動いていないと気が済まないその国民性に苦笑してしまう。結局その手伝いのおかげですぐに作り終えることが出来たのだが。

「さぁ好きな物で遊びましょう!」

 一通り遊び方を説明すると各々が興味のある物を手にして遊び始める。やはりと言うか何と言うかスイレンは真っ先にリバーシを手にし「誰か一緒にやろう」と声をかけている。
 それとは逆にお母様を始めとする大人の女性陣はのんびりゆっくりとかぎ針を使った編み物を楽しんでいる。それはもう仕事ではないかと言おうとしたが、とても楽しそうに談笑しながら編んでいる姿を見ると何も言えなくなってしまった。

 そんな私も私で縄跳びの技を披露したり、得意の独楽を回したり、竹馬で走り回るのに夢中になっているうちにいつの間にかお父様が戻って来ていたようで、一人で畑の水撒きまで終わらせてしまっていたようだ。なにげにお父様こそ一番動いていないと気が済まない人だと思ってしまう。そして一通りやることが終わったお父様はこちらに向かって来た。

「これはどうやって使うのだ?」

 と跳び縄を持ってきたので説明する。何回か跳ぶと「面白い!」と言っているが、二重飛びを数回も跳ぶと私でも出来ない三重跳びを簡単にやってのける。さらに実際には見たことのなかった四重跳びまでやってしまったのだ。まさに体力お化けである。子どもたちどころか民たちはヒーロー扱いでお父様を称える。

 次にお父様が興味を示したのは独楽だ。これだったら負けないと対抗心を燃やしていたが、お父様のことを舐めていたと反省してしまう。最初のうちはいい勝負だった。私の縄を引き戻してより回転をかける独楽と、お父様の普通に投げる独楽は半々の確率で私が勝っていたのだが、お父様は段々と私の手元に注目しニヤリと笑うと技を盗まれてしまったのだ。元々尋常じゃなく回転していたお父様の独楽はもう負けなしとなってしまった。

 そしてお父様は竹馬が気になり始めたようだ。予想はしていたが一回で乗りこなし、上手く乗れない子どもたちの手助けをしつつ自分も楽しんでいる。その間に竹馬の作り方を目で見て覚えたようで、自分用の竹馬を作り始めた。じいやたちが作ったのは足を乗せる部分が一般的な高さの竹馬だったが、お父様はその部分をすごく高く作っている。

「出来た!」

 まるで少年のような笑顔で竹馬を引きずって家に立てかけると、いとも軽々と家の屋根に登り作った竹馬に乗った。

「絶景だぞ!」

 そう叫んでお父様がとてつもない竹馬で遊んでいると昼食の時間となった。そして私は気付いてしまった。竹馬のあたりからお父様の動向ばかりに注目し、全く遊んでいなかったことに……。ショックで実際に頭を抱えてしまったことは言うまでもない。
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