上 下
116 / 366

みんなで夕食作り

しおりを挟む
 購入してきた品物を前にあれこれと話しているうちに夕方近くとなった。本格的に夕方になれば夕飯を作らねばならないので、その前にポニーとロバの放牧地を作ってしまおうとなった。全バラックは壁が付き床となる板なども敷かれてはいたが、いずれ家を建てたらこのバラック群は撤去する予定なのでバラックと森の間にその場所を作ることになった。
 力のある男たちが地面に杭を打ち、器用な者たちがその杭と杭の間に板を貼り付けて行く。勝手の分からない私は近くで見学をしていたけれど、こういう時の為にと購入していた蝶番なども使いポニーたちの出入り口も数ヶ所作っている。驚くべきことにこの出入り口は重りを使った原始的な自動ドアで二重にし、中からは動物には開けられず逃げられない構造になっている。何かに使うだろうと滑車も購入しておいて助かった。

 小さな牧場スペースが出来上がるとみんなでブチブチとクローバーを抜き、露出した地面に牧草の種を蒔く。クローバーを抜いたことにより驚いたが、あの砂地だった地面は薄くではあるが土になっている。植物たちも目に見えない場所でしっかりと仕事をしていたのだ。
 牧草が生えて来るまではポニーとロバは物置小屋に繋ぎ、いくらか乾燥させた牧草も購入してきたがニンジンことキャロッチやリンゴことアポーの実を与えることにした。ヒヨコたちも念の為ここの気候に慣れさせるよう物置小屋の側に簡易の鳥小屋を作って中に入れた。

「カレーン!夕飯を作りましょう!」

 お母様に呼ばれ、作業は他の民たちに任せウキウキと広場へと向かう。なぜなら念願の味噌汁が飲めるからだ。これは気合いを入れなければならない。

「さぁ作りましょうか!ミィソの汁物は具は何でも良いのよ」

 とは言っても味噌汁に合いそうな野菜はポゥティトゥ・キャロッチ・キャベッチ・オーニーオーンくらいだろうか。パンキプンの味噌汁は私は好きだが、かなり好みが分かれるだろう。なら美樹の家では普通に作られていたじゃがいもとニンジンの葉っぱを使った彩りある味噌汁にしよう。普通は食べないどころか見かけないであろうニンジンの葉っぱだが普通に食べることが出来る。美樹の家では近くの農家さんからいただいていたのだ。そうと決まれば細かく切ったポゥティトゥを水に入れ茹で始める。
 キャロッチ・キャベッチ・オーニーオーン・緑のペパーのピーマン型の方をみんなで大量に切っていく。手の空いている人に森へ『モリノイモ』を採取しに行ってもらい、オックラーを茹でる為に別の鍋で湯を沸かす。

 今更気付いたがハコベさんとナズナさんも料理に参加していたので、ハコベさんにはオックラーを茹でてもらい、ナズナさんには貴重だと言われ購入してきた油で切ったばかりのキャロッチ・キャベッチ・オーニーオーン・緑のペパーを油炒めにしてもらう。量が多いので木べらの大きいような物で混ぜてもらったが、まるで給食センターの職員のようだなとボンヤリと思ったのは内緒だ。

「カレン、こっちも良い感じになってきたわ」

 味噌汁用の鍋は沸々としてきておりミィソを投入することにする。こし器がないので深めのざるにミィソを入れ、ざるを湯に浸しながらミィソを溶かす。時折味見をしながらミィソを足し入れ、沸騰する前に火を消してもらった。味見の段階でかなり好みの味のミィソに感激した。クジャ、本当にありがとう。

「ミィソの汁物はね、沸騰させると味が落ちるの」

 そして火を消した味噌汁の鍋に食べやすく切ったキャロッチの葉を入れると色鮮やかな緑色に変わった。見るからに美味しそうである。
 ハコベさんを見ると茹で上がったオックラーを水に入れて冷ましている。ちょうどモリノイモが届いたので、これをさいの目切りにしていく。この作業を終えるとオックラーを小口切りにして二つを混ぜ合わせる。美樹の家ではお金に余裕がある時はこれに食用菊を入れて彩りを良くしていた。

「これは食べるときにセウユをかけましょう。ネバネバは体に良いのよ」

 本音を言えば白米にかけて食べたいが、無いものは仕方がない。そこは素直に諦めることにした。

「カレン、そろそろモクレンたちが戻ってくる時間よ。すぐに食べられるように盛り付けてしまいましょう」

 お父様たちは石切り場よりも広場側に近い場所で作業をしているらしく、間もなく作業を終えて帰って来るようだ。肉体労働をしている人たちは汗をかくので塩分は大事である。セウユもミィソもその塩分を補ってくれるので、早く食べてもらいたいわ。そして初めて食べる調味料にみんなはどんな反応を示すのか楽しみだわ。
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

役立たず王子のおいしい経営術~幸せレシピでもふもふ国家再建します!!~

延野 正行
ファンタジー
第七王子ルヴィンは王族で唯一7つのギフトを授かりながら、謙虚に過ごしていた。 ある時、国王の代わりに受けた呪いによって【料理】のギフトしか使えなくなる。 人心は離れ、国王からも見限られたルヴィンの前に現れたのは、獣人国の女王だった。 「君は今日から女王陛下《ボク》の料理番だ」 温かく迎えられるルヴィンだったが、獣人国は軍事力こそ最強でも、周辺国からは馬鹿にされるほど未開の国だった。 しかし【料理】のギフトを極めたルヴィンは、能力を使い『農業のレシピ』『牧畜のレシピ』『おもてなしのレシピ』を生み出し、獣人国を一流の国へと導いていく。 「僕には見えます。この国が大陸一の国になっていくレシピが!」 これは獣人国のちいさな料理番が、地元食材を使った料理をふるい、もふもふ女王を支え、大国へと成長させていく物語である。 旧タイトル 「役立たずと言われた王子、最強のもふもふ国家を再建する~ハズレスキル【料理】のレシピは実は万能でした~」

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

処理中です...