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しばしの別れ
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ジョーイさんたちと雑談をしていると、イチビたちがリバーシを作り終えたようで小走りでこちらに向かって来た。
「姫様、こちらをどうぞ」
イチビはそう言い出来上がったばかりのリバーシを私に手渡し、シャガは私とじいやの頭に麦わら帽子をかぶせる。
「日差しが強くなってきました」
私を心配してかぶせてくれた麦わら帽子だが、クジャがそれを気にし始める。
「その帽子……良いのう。見せてくれぬか?」
シャガがかぶっていた帽子を渡すと、クジャもかぶったりひっくり返して見たりとしている。
「まさかこれもカレンが作ったのか?」
「そうよ。なかなか作るのが大変なんだけどね」
そう言うとクジャも欲しいと騒ぐが、先に注文が入っているのがジョーイさんの店で、しかも大量には作れないと言うと悔しそうにしている。
「仕方あるまい。我慢する」
シューンと項垂れるクジャに「これで元気を出して」とリバーシを手渡すと笑ってしまうくらいすぐに元気になり、「これを楽しむのじゃ」と子どものようにウキウキとしている。
「……さて、これを受け取ってしまったからには戻らなければならぬな。わらわたちは一週間後にこの町に来る。……カレンは来れそうか?」
さっきまで笑顔だったクジャは寂しそうに微笑みながら問いかける。
「うーん……約束は出来ないわね……。戻ってからの工事もどうなるか分からないし、テックノン王国との国境もいつ出来るのか分からないし……。……となると、国境も建設しないといけないわね」
そうだ。国境についても考えなければならない。本当にやることが山積みだ。するとまたクジャが声を上げる。
「国境とな!?ならばリーンウン国とも作ろうではないか!」
「待って、落ち着いてクジャ。私たちはそんなに人口も多くないから、そんなに一気に物事を進められないの。一つずつ解決してから、それからその話について話し合いましょう」
苦笑いで背中をポンポンと叩きなだめると、クジャはまたシューンと項垂れてしまう。
「カレンよ……。わらわは一週間に一度ここに来る。カレンももし来れそうなら……またこの町で一緒に語り合おうぞ」
「もちろんよ。クジャ、私と友人になってくれてありがとう」
身長差はあったが私たちは抱きしめ合い別れを惜しんだ。
────
最後は寂しいと涙するクジャを見送り、私たちは町の入り口に集まっていた。
「カレン嬢……本当にすみませんでした」
しんみりとした空気の中ニコライさんは私たちに頭を下げた。
「最初は許せないと思っていたけどいいわ。結果的にクジャと友人になれたし、みんなが有益な結果になったんだから」
少し呆れながらそう言えば「なんとお優しい」とまた抱き着いて来ようとして、イチビたち鉄壁の守備陣に阻まれている。
「お詫びとしてなんですが、ハーザルの街で仕入れた品々をお代は結構なのでお納め下さい」
そう言うとマークさんや御者たちに指示を飛ばしている。ニコライさんの馬車は『バ』自体が大きいのでキャビンも大きいのだが、その陰から私の心を鷲掴みにするものが現れた。
「え?え?何これ?」
御者が私の前に連れて来たのは、『バ』と比べるととても小さく見える動物たちだ。
「こちらは小さなバ、略して『チバ』と呼ばれるものと、荷物を運ぶバ、同じく略して『ニバ』と呼ばれるものです」
ピコピコと耳を動かし少しばかり警戒しているその動物を見て叫びながら走り寄る。
「ポニー!ロバ!」
叫んだことにより驚かせてしまったが、私が近寄ると興味を持ってくれたのか顔を近付けてくる。明るい茶色のポニーもこげ茶色のロバも、そっと手を伸ばせばおとなしく撫でられている。
「カレン嬢、もう名前をつけたのですか?」
ニコライさんはそう言いこちらに来た。そうか、ポニーもロバもこの世界での名称ではないのだものね。もう名前はこのままポニーとロバにしてしまうわ。
「他はもう売れてしまっていて、この二頭しか購入出来なかったのです。あとこちらはたくさん入手出来たのですが……」
そう言いながら一番遠くに止めていた馬車から降ろされたものは高さはないがワイドサイズの鳥かご二つだ。中にはヒヨコがひしめいている。
「こちらはコッコの雛です。三十羽ほど購入いたしました。オスとメスに分けてあります。こちらもどうぞ」
「え?えぇ!?」
じいやたちがこちらに来てヒヨコを受け取るが、私たちは混乱している。
「カレン嬢が牧畜をやりたいと言っていましたからね。モーとブーは今回手に入りませんでしたが、まずはコッコを育ててはいかがでしょう?チバもニバもこのバに比べると力は弱いですが、荷物を運んだりしてくれますし役立つと思いますよ」
さらにクジャから預かっていたセウユとミィソ、希少だという砂糖などもどっさりと受け取る。さらにさらにその砂糖の原料となる『テンサイン』という、おそらく日本で言う『てん菜』と思われる苗もいただき、ハーザルの街の近郊に生えていたと言う『タッケ』こと竹……というかたけのこを根付きで数種類も掘って持って来てくれたようだ。私たちはそれを抱え呆然としているとニコライさんが口を開く。
「周りから常にうっかりするなと言われているのに、いつも私はうっかりと発言してしまう。今回はカレン嬢とクジャク嬢が意気投合しましたので良かったですが、下手をしたら戦争にもなりかねないことでした。本当に申し訳ありません」
ニコライが深々と頭を下げると、マークさんや作業をしていた御者たちも同じように頭を下げた。
「私たちもこのまま帰ります。王都に着き次第山を爆破していきますので、ヒーズル王国側からも確認をお願いします。……一週間後にこの町に参りますが、カレン嬢も都合が良ければいらして下さいね」
そう言い残しニコライさんたちも帰国の途についた。私たちが両手で荷物を抱えまだ呆然としていると、最後尾にいたバが御者の指示を無視してポニーとロバに顔を寄せいなないた。そして私の頬にムチューとキスをすると隊列に戻り去っていった。
……全てが嵐のような一日だったわ……。
「姫様、こちらをどうぞ」
イチビはそう言い出来上がったばかりのリバーシを私に手渡し、シャガは私とじいやの頭に麦わら帽子をかぶせる。
「日差しが強くなってきました」
私を心配してかぶせてくれた麦わら帽子だが、クジャがそれを気にし始める。
「その帽子……良いのう。見せてくれぬか?」
シャガがかぶっていた帽子を渡すと、クジャもかぶったりひっくり返して見たりとしている。
「まさかこれもカレンが作ったのか?」
「そうよ。なかなか作るのが大変なんだけどね」
そう言うとクジャも欲しいと騒ぐが、先に注文が入っているのがジョーイさんの店で、しかも大量には作れないと言うと悔しそうにしている。
「仕方あるまい。我慢する」
シューンと項垂れるクジャに「これで元気を出して」とリバーシを手渡すと笑ってしまうくらいすぐに元気になり、「これを楽しむのじゃ」と子どものようにウキウキとしている。
「……さて、これを受け取ってしまったからには戻らなければならぬな。わらわたちは一週間後にこの町に来る。……カレンは来れそうか?」
さっきまで笑顔だったクジャは寂しそうに微笑みながら問いかける。
「うーん……約束は出来ないわね……。戻ってからの工事もどうなるか分からないし、テックノン王国との国境もいつ出来るのか分からないし……。……となると、国境も建設しないといけないわね」
そうだ。国境についても考えなければならない。本当にやることが山積みだ。するとまたクジャが声を上げる。
「国境とな!?ならばリーンウン国とも作ろうではないか!」
「待って、落ち着いてクジャ。私たちはそんなに人口も多くないから、そんなに一気に物事を進められないの。一つずつ解決してから、それからその話について話し合いましょう」
苦笑いで背中をポンポンと叩きなだめると、クジャはまたシューンと項垂れてしまう。
「カレンよ……。わらわは一週間に一度ここに来る。カレンももし来れそうなら……またこの町で一緒に語り合おうぞ」
「もちろんよ。クジャ、私と友人になってくれてありがとう」
身長差はあったが私たちは抱きしめ合い別れを惜しんだ。
────
最後は寂しいと涙するクジャを見送り、私たちは町の入り口に集まっていた。
「カレン嬢……本当にすみませんでした」
しんみりとした空気の中ニコライさんは私たちに頭を下げた。
「最初は許せないと思っていたけどいいわ。結果的にクジャと友人になれたし、みんなが有益な結果になったんだから」
少し呆れながらそう言えば「なんとお優しい」とまた抱き着いて来ようとして、イチビたち鉄壁の守備陣に阻まれている。
「お詫びとしてなんですが、ハーザルの街で仕入れた品々をお代は結構なのでお納め下さい」
そう言うとマークさんや御者たちに指示を飛ばしている。ニコライさんの馬車は『バ』自体が大きいのでキャビンも大きいのだが、その陰から私の心を鷲掴みにするものが現れた。
「え?え?何これ?」
御者が私の前に連れて来たのは、『バ』と比べるととても小さく見える動物たちだ。
「こちらは小さなバ、略して『チバ』と呼ばれるものと、荷物を運ぶバ、同じく略して『ニバ』と呼ばれるものです」
ピコピコと耳を動かし少しばかり警戒しているその動物を見て叫びながら走り寄る。
「ポニー!ロバ!」
叫んだことにより驚かせてしまったが、私が近寄ると興味を持ってくれたのか顔を近付けてくる。明るい茶色のポニーもこげ茶色のロバも、そっと手を伸ばせばおとなしく撫でられている。
「カレン嬢、もう名前をつけたのですか?」
ニコライさんはそう言いこちらに来た。そうか、ポニーもロバもこの世界での名称ではないのだものね。もう名前はこのままポニーとロバにしてしまうわ。
「他はもう売れてしまっていて、この二頭しか購入出来なかったのです。あとこちらはたくさん入手出来たのですが……」
そう言いながら一番遠くに止めていた馬車から降ろされたものは高さはないがワイドサイズの鳥かご二つだ。中にはヒヨコがひしめいている。
「こちらはコッコの雛です。三十羽ほど購入いたしました。オスとメスに分けてあります。こちらもどうぞ」
「え?えぇ!?」
じいやたちがこちらに来てヒヨコを受け取るが、私たちは混乱している。
「カレン嬢が牧畜をやりたいと言っていましたからね。モーとブーは今回手に入りませんでしたが、まずはコッコを育ててはいかがでしょう?チバもニバもこのバに比べると力は弱いですが、荷物を運んだりしてくれますし役立つと思いますよ」
さらにクジャから預かっていたセウユとミィソ、希少だという砂糖などもどっさりと受け取る。さらにさらにその砂糖の原料となる『テンサイン』という、おそらく日本で言う『てん菜』と思われる苗もいただき、ハーザルの街の近郊に生えていたと言う『タッケ』こと竹……というかたけのこを根付きで数種類も掘って持って来てくれたようだ。私たちはそれを抱え呆然としているとニコライさんが口を開く。
「周りから常にうっかりするなと言われているのに、いつも私はうっかりと発言してしまう。今回はカレン嬢とクジャク嬢が意気投合しましたので良かったですが、下手をしたら戦争にもなりかねないことでした。本当に申し訳ありません」
ニコライが深々と頭を下げると、マークさんや作業をしていた御者たちも同じように頭を下げた。
「私たちもこのまま帰ります。王都に着き次第山を爆破していきますので、ヒーズル王国側からも確認をお願いします。……一週間後にこの町に参りますが、カレン嬢も都合が良ければいらして下さいね」
そう言い残しニコライさんたちも帰国の途についた。私たちが両手で荷物を抱えまだ呆然としていると、最後尾にいたバが御者の指示を無視してポニーとロバに顔を寄せいなないた。そして私の頬にムチューとキスをすると隊列に戻り去っていった。
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