貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

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しょんぼりじいや

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 リトールの町へ帰ろうとみんなで街道を歩いているが、じいやが心配で荷台を見ると青ざめた顔をしてまだ目を覚まさないじいやと、その隣にまだウネウネと動くスネックの束が目に入る。かなり生命力のある生き物らしい。

「森の民にも苦手なものがあるんだな……」

 どこか遠い目をして話すペーターさんに、イチビたちは「当然ありますよ」などと話している。ペーターさんに慣れてきたのか四人は普通に話しているが、いつになったら私とも普通に話してくれるのだろうか。そんなことを思っていた時だった。

「う……うーん……」

 じいやの意識が戻りかけている兆候がみられた。全員がじいやに注目するが、それとともに横に置いてあるスネックに気付きハマスゲは着ていた服を慌てて脱ぎスネックの上にかぶせて隠す。

「じいや、大丈夫?」

「うーん……私は一体……」

 荷車を停め、じいやに話しかけると薄っすらと目を開けそしてゆっくりと起き上がった。

「……私としたことが……ご迷惑をおかけしましたな……」

 じいやはまだボーッとした様子ではあったが、私たちが止めるのも聞かずに荷車から降りる。ただボーッとしているおかげで横に置いてあったスネックには全く気付いていないようだった。その代わりに別のことに気付き口を開く。

「ハマスゲよ……なぜ裸なのだ?」

 スネックを隠す為に服を脱いだのでハマスゲは上半身裸である。いつも私の前ではモジモジとしているハマスゲは力強く言い切った。

「暑かったからです」

「……そうか……」

 何やら解せない様子のじいやではあるが、私はそれどころではない。改めてハマスゲの身体を見てみれば、鍛え抜かれた戦士のような身体をしている。

「ハマスゲ……ちょっとだけ触らせて……」

 実に変態のようだということは分かってはいるが、女子というものは割れた腹筋に弱いのである。ハマスゲが戸惑って返答もまだなのに勝手にお腹を撫で回し、私が満足するとハマスゲはイチビ、シャガ、オヒシバに背中を思いっきり平手打ちされていた。何かの儀式や励ましだろうか?

────

 リトールの町へと到着すると、ペーターさんはスネックの皮を剥ぐと言う。この町、というかこの国ではズボンがずり落ちないようにベルトのように腰紐としてスネックの革を使うことがあるらしい。皮を剥いだあとになめし、肉は余すことなく食べるとのことだった。

 ペーターさんたちはじいやに気を使い、ブルーノさんの家に戻るように言われ私とじいやが戻って来たのである。イチビたちはペーターさんを手伝うとのことだった。

「はぁ……何が『稀代の森の民』なものか……」

 じいやはブルーノさん宅にある工房の隅で膝を抱えて座り込んでいる。

「誰にだって苦手なものはあるさ」

「そうよ、元気を出して」

 ブルーノさんにはじいや自ら事情を話し、そして言葉にしたことによって自己嫌悪に陥っているようなのだ。ブルーノさんと一緒に慰めるが、じいやのトラウマは相当なもののようだ。私は話題を変えようと話を振る。

「ねぇじいや、お父様の苦手なものって何?」

 今まで見てきて苦手そうなものはなかったように感じたがあえて聞いてみる。

「……レンゲ様ですな」

 苦手と言うのとは違うかもしれないという前置きがあったが、お母様が泣いたり怒ったりすると途端にしどろもどろになってしまうらしい。お母様ったら本当に愛されているのね。それを聞いて笑ってしまった私はじいやに声をかける。

「じいや、気分転換に何か作って遊びましょう?」

 そう言うとブルーノさんも好きなだけ廃材を使って良いと言ってくれる。じいやもほんの少しやる気になったのかハイハイをして工房の隅から出てきた。とはいえこんな状態のじいやに細かな作業をさせて怪我などさせたくない。
 ブルーノさんにじいやを任せ廃材置き場へと走り、細くて硬さのある角材と切れっ端を持てるだけ持って工房へ戻り縄も分けてもらった。

「ブルーノさん、このくらいの長さに切ってもらってもいい?」

 まだ気落ちしているじいやに刃物を持たせるのは危険と判断し、ブルーノさんに適当な長さに角材を切ってもらう。

「じいやも一緒に作業しましょう」

 じいやの近くに行き、長い角材の端のほうに板を二枚使い挟む形にして縄で縛る。縛った所を支点として、長い角材に対して九十度までいかない角度まで板を動かし支点とした部分をさらにガッチリと縄で縛る。板の方も縄でぐるぐる巻にしてガッチリと固定する。そして同じ物をもう一つ作ってもらう。

「姫様、これは何ですか?」

「こうやって遊ぶのよ」

 細い角材を縦にし、ぐるぐる巻の板の上に乗る。そう、これは竹馬だ。

「本当は竹で作るんだけどね。せめて持ち手が丸かったら良かったんだけれど」

 ひょいひょいと工房内を器用に歩けばブルーノさんとじいやは驚きの声を上げる。

「姫様!じいにも貸してくだされ!」

「タケとはタッケのことかな?ハーザルの街の方になら生えているが……どれ、手元を削ってあげよう」

 そう言ってブルーノさんはカンナのようなもので持ち手の部分を丸く削ってくれ持ちやすくなり、その竹馬を見たじいやはやりたいとそれを受け取る。

「えぇとね、少し爪先立ちをしてほんの少し前に傾けて、手と足を同時に動かして……って説明すると難しいわね……」

 理屈ではなく感覚で乗っていたので説明に困ってしまう。じいやは見様見真似で竹馬に乗るが、さすがは森の民。一発で乗れてしまったのだ。

「ほっ!」

 最初の数歩は辿々しかったが、すぐに慣れて普通に歩けるようになった。

「すごいわじいや!普通なら一回で乗れないわよ!」

 私は手を叩いてそう言うとじいやは元気が戻って来たようだ。それを見ていたブルーノさんが声をかけて来た。

「カレンちゃん……これも売れると思うぞ?」

 その言葉に私たちは必死に竹馬製作に取り掛かったのだった。
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