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手応えあり
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ジョーイさんのお店へと向かうが、着く前に店の前に人だかりが見え驚いて立ち止まってしまう。だけど履物に殺到しているとは限らない。
「姫様、ジョーイさんが昨日言っていた通りなのでは?」
「そうだといいんだけど……」
じいやに優しくそう言われたが、ドキドキと高鳴る胸を押さえながら一歩ずつジョーイさんのお店へと歩を進める。お店の前に着くと誰が何を言っているのか分からないほど騒がしく、私たちに気付いた町の人が一斉にこちらに向かって話しかけて来るので聞き取ることが出来ない。聖徳太子の耳が羨ましく思ってしまう。
「カレンちゃん!こっち!」
突如横から声をかけられると同時に手を引かれ、驚いて手の主を見るとジョーイさんだった。私たちはそのまま店の中へと入る。
「ジョーイさん……これは一体どういう状況なの?」
察してはいるが念の為に聞いてみた。路上ではまだお客さんたちがワーワーと騒いでいる。
「言っただろう今日は売れるって。昨日買った人……半分はカーラから話を聞いて来た人だよ」
ジョーイさんは「カーラはすごいだろう」と苦笑いだ。こちらも「本当に」としか返答出来ずに苦笑いを返す。
「はいはい!みんな!順番に並んでくれ!」
ジョーイさんがそう言うと渋々といった感じでみんなが並び買い物をしているが、店頭をよくよく見てみるとお店の売り物のこの町で履かれているサンダルのような物にルームシューズを履かせている。どうやらジョーイさんは夜のうちに大体のサイズごとに分け、ディスプレイ用としてサンダルにルームシューズを履かせていたようだ。
飛ぶように売れていくルームシューズやぞうりに、イチビたちもじいやも呆れと賞賛が混じった笑い声を漏らしている。
────
サンダルに履かせていた最後の一つが売れると、ジョーイさんは「ふぅ」と大きな溜め息を吐く。
「ほら、思った通り全部売れたよ!今回もたくさん儲けたなぁ」
心の中の声をハッキリと口に出すジョーイさんに笑ってしまう。
「本当に全部売れて私たちも嬉しいわ」
じいやたちも頷いたり、そうだと肯定してくれる。
「ねぇカレンちゃん?これはそんなに作るのが難しいのかい?」
「難しいというよりも時間がかかるのよ。民の全員で作る訳にもいかないし、一足に二時間ほどかかるから一日に作れる数に限りがあるのよ」
そう告げると少し悩む素振りを見せたあとにジョーイさんは口を開いた。
「農作業をする人や男性にはこのゾウリ?が好まれる傾向があったし、女性はこっちの履物が好まれたんだよね。……森の民はテックノン王国と取引するんだろう?この町にも定期的に物を売ってくれないかな?」
その申し出に驚き固まっているとジョーイさんはさらに続ける。
「この町の履物をあげるからさ、それを見本にいろんな大きさの履物を作ってほしいんだ。これは売れ続けるはずだよ。大量に作れないなら尚更さ」
そう笑うジョーイさんの顔は私がお金のことを考えている時とそんなに変わらない。もちろんこちらもお金は欲しいし、何よりも私はこの町の人たちが大好きでよく会いたくなる。定期的にこの町に物を売りに来ることになれば、毎回私が行き来するとは限らないだろうけど町の人に会えるということだ。
「ねぇじいや、私この町とも取引したい」
「姫様が決めたことに我々は従いますぞ」
じいやは「ほっほっほっ」と笑い、その後ろではイチビたちが高速で首を縦に振っている。
「みんなの負担も増えちゃうかもしれないけれど、みんな一緒に頑張りましょう」
そう言いながらじいやたちの手を握る。すっかり忘れていたが、イチビたちはまた「うひゃあ!」と声を上げ笑ってしまった。
「ジョーイさん、私たち一丸となって頑張るわ。頻繁には来れないかもしれないけれど、それでも良いかしら?」
「あぁもちろんだ!売り物がある程度溜まったらで構わないよ。……けどひと月に一回はみんなに会いたいな」
握手を交したジョーイさんは反対の手で頭をガシガシと掻きむしりながら照れ隠しをする。『私』ではなく『みんな』と言ってくれたことが嬉しくなり、握った手をブンブンと振ってしまう。
「そう言えば野菜も美味いってカーラが言っていたんだけど……その……トウモロコーンを生で食べるって本当かい?」
「うん!甘いから基本的に生で食べるわよ。それがどうかした?」
突如話題に出たトウモロコーンに驚き小首を傾げる。
「カーラだけ食べてずるいから、今度来る時に持って来てくれたら嬉しいな……」
握手を終えた手でポリポリと頬を掻くジョーイさんに笑ってしまう。
「分かったわ!野菜や果実も持って来るわね!」
そう言うと本当に楽しみだとジョーイさんは自然な笑顔で言った。
やることも作る物もたくさんだけど、それを楽しんで頑張るわ!
「姫様、ジョーイさんが昨日言っていた通りなのでは?」
「そうだといいんだけど……」
じいやに優しくそう言われたが、ドキドキと高鳴る胸を押さえながら一歩ずつジョーイさんのお店へと歩を進める。お店の前に着くと誰が何を言っているのか分からないほど騒がしく、私たちに気付いた町の人が一斉にこちらに向かって話しかけて来るので聞き取ることが出来ない。聖徳太子の耳が羨ましく思ってしまう。
「カレンちゃん!こっち!」
突如横から声をかけられると同時に手を引かれ、驚いて手の主を見るとジョーイさんだった。私たちはそのまま店の中へと入る。
「ジョーイさん……これは一体どういう状況なの?」
察してはいるが念の為に聞いてみた。路上ではまだお客さんたちがワーワーと騒いでいる。
「言っただろう今日は売れるって。昨日買った人……半分はカーラから話を聞いて来た人だよ」
ジョーイさんは「カーラはすごいだろう」と苦笑いだ。こちらも「本当に」としか返答出来ずに苦笑いを返す。
「はいはい!みんな!順番に並んでくれ!」
ジョーイさんがそう言うと渋々といった感じでみんなが並び買い物をしているが、店頭をよくよく見てみるとお店の売り物のこの町で履かれているサンダルのような物にルームシューズを履かせている。どうやらジョーイさんは夜のうちに大体のサイズごとに分け、ディスプレイ用としてサンダルにルームシューズを履かせていたようだ。
飛ぶように売れていくルームシューズやぞうりに、イチビたちもじいやも呆れと賞賛が混じった笑い声を漏らしている。
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サンダルに履かせていた最後の一つが売れると、ジョーイさんは「ふぅ」と大きな溜め息を吐く。
「ほら、思った通り全部売れたよ!今回もたくさん儲けたなぁ」
心の中の声をハッキリと口に出すジョーイさんに笑ってしまう。
「本当に全部売れて私たちも嬉しいわ」
じいやたちも頷いたり、そうだと肯定してくれる。
「ねぇカレンちゃん?これはそんなに作るのが難しいのかい?」
「難しいというよりも時間がかかるのよ。民の全員で作る訳にもいかないし、一足に二時間ほどかかるから一日に作れる数に限りがあるのよ」
そう告げると少し悩む素振りを見せたあとにジョーイさんは口を開いた。
「農作業をする人や男性にはこのゾウリ?が好まれる傾向があったし、女性はこっちの履物が好まれたんだよね。……森の民はテックノン王国と取引するんだろう?この町にも定期的に物を売ってくれないかな?」
その申し出に驚き固まっているとジョーイさんはさらに続ける。
「この町の履物をあげるからさ、それを見本にいろんな大きさの履物を作ってほしいんだ。これは売れ続けるはずだよ。大量に作れないなら尚更さ」
そう笑うジョーイさんの顔は私がお金のことを考えている時とそんなに変わらない。もちろんこちらもお金は欲しいし、何よりも私はこの町の人たちが大好きでよく会いたくなる。定期的にこの町に物を売りに来ることになれば、毎回私が行き来するとは限らないだろうけど町の人に会えるということだ。
「ねぇじいや、私この町とも取引したい」
「姫様が決めたことに我々は従いますぞ」
じいやは「ほっほっほっ」と笑い、その後ろではイチビたちが高速で首を縦に振っている。
「みんなの負担も増えちゃうかもしれないけれど、みんな一緒に頑張りましょう」
そう言いながらじいやたちの手を握る。すっかり忘れていたが、イチビたちはまた「うひゃあ!」と声を上げ笑ってしまった。
「ジョーイさん、私たち一丸となって頑張るわ。頻繁には来れないかもしれないけれど、それでも良いかしら?」
「あぁもちろんだ!売り物がある程度溜まったらで構わないよ。……けどひと月に一回はみんなに会いたいな」
握手を交したジョーイさんは反対の手で頭をガシガシと掻きむしりながら照れ隠しをする。『私』ではなく『みんな』と言ってくれたことが嬉しくなり、握った手をブンブンと振ってしまう。
「そう言えば野菜も美味いってカーラが言っていたんだけど……その……トウモロコーンを生で食べるって本当かい?」
「うん!甘いから基本的に生で食べるわよ。それがどうかした?」
突如話題に出たトウモロコーンに驚き小首を傾げる。
「カーラだけ食べてずるいから、今度来る時に持って来てくれたら嬉しいな……」
握手を終えた手でポリポリと頬を掻くジョーイさんに笑ってしまう。
「分かったわ!野菜や果実も持って来るわね!」
そう言うと本当に楽しみだとジョーイさんは自然な笑顔で言った。
やることも作る物もたくさんだけど、それを楽しんで頑張るわ!
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