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カレン、禁断の遊びを教えてしまう
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ブルーノさんたちは作業が残っているだろうに、楽しそうだからという理由で私たちに着いて来た。広場に到着するとブルーノさんとお弟子さんたちが町を歩く人を呼び止める。
「また遊ぶ道具を作りましたよー!いかがですかー?」
大きな声で繰り返していると、以前ドングーリコマを作ってあげた子どもたちが集まってきた。今日は親御さんも一緒のようだ。
「おねーたん、ドングーリのやつ、面白かったの!」
「本当?良かったわ。これも同じように遊ぶのよ」
そう言い、子ども受けしそうなカラフルなひねり独楽を一つ手に取る。キラキラと目を輝かせる子どもたちの前で独楽を回すと「キレイ!」と子どもたちははしゃいでいる。そして親御さんに「これが欲しい」とか「買ってくれなきゃ帰らない」などとわがままを言い始める。
「おいくらなのかしら?」
「はい、白銅貨の丸が一つです!」
一人の親御さんに聞かれ、事前にブルーノさんの工房で決めた値段を伝える。丸い白銅貨は私の中では五百円という感覚なので、小さなこのひねり独楽の値段としては妥当だろう。親御さんは少し悩んだ後に「一つだけよ」と子どもに選ばせる。一人が買えば他の人もつられて買ってくれるので、心の中でニヤリと笑う。案の定親の承諾を得た子どもたちが我先にと群がり、お気に入りの一つを選んで購入してくれた。
「こっちは何なんですか?」
一人の男性に話しかけられ振り向くと、投げ独楽を指さしている。よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに私はアピールを始める。
「これはねもっと大きな子ども、もちろん大人も楽しめるものなのよ」
そう説明しながらタコ糸ではなく細めの縄を独楽の胴に巻いていく。そして少し場所を空けてほしいと言い地面へと独楽を投げた。ひねり独楽よりも早く力強く回る投げ独楽に町の人は歓声を上げてくれる。
「実際にやってみると難しいのよ。ね?」
ブルーノさんに同意を求めると「難しいからこそ面白い」と言ってくれた。それでも思い悩んでいる町の人にやらせてみると、やはりお弟子さんたちのように回すことが出来なかったり、回ってもすぐに倒れてしまう。大人の男性ほどムキになり、買って練習するからと飛ぶように売れてしまった。ちなみに投げ独楽は大きさもあって銅貨二枚、二千円くらいに値段設定をして売ったのだった。
────
ブルーノさんのお宅に泊めていただき、一夜明けた朝。特にすることのなかった私たちは町をぶらぶらしようと散歩に出ることにした。するとどうだろう。まだ朝だというのに町のあちらこちらで独楽を回している人たちがいる。その中で私たちに気付いた人が声を上げた。
「森の民の方たち!見てください!」
その人の独楽を見れば、投げ独楽らしく力強く回っている。もしかしたらシャガよりも上手いかもしれないと思ったところ「……負けない」とボソリとシャガが呟いた。そこで閃いてしまったのだ。
「ねぇじいや。この世界では博打や賭博ってどういうのがあるの?」
町の人に聞こえない声でじいやに問いかけると、じいやは小首を傾げる。
「バクチ……トバク……とはなんですか?」
「え!?賭け事ってないの!?」
賭け事と聞いてもじいやは分からない様子だった。私はイチビに頼みペーターさんを呼んで来てもらった。広場に着いたペーターさんにも賭け事について聞くと「それは食べ物か?」なんて言う。
少し悩んだが賭け事について説明をした。それこそ大博打だ。
「これは大人だけに許された『遊び』よ。賭け事とはね、何がとか誰が一番になるか予想をしてお金を賭けるの。当たった人には外れた人の賭けたお金が入るのよ」
ペーターさんはそれを聞いて驚くが、じいやたちがそれを知らないと色々と面倒なことになるので察してポーカーフェイスに徹してくれた。日々刺激を求めているペーターさんは乗り気である。
細かなルールを決めないと全財産を失ってしまったり、下手をすると死人も出ることになると伝える。なので一度に賭けられる金額は白銅貨の三角が一枚、百円までと決める。最低額は白銅貨の四角、十円からと決めた。そしてペーターさんの目の届く範囲でしか賭け事はやらず、違反した者は厳しい罰則を与える為にその内容を考えておいて欲しいと伝える。
この話を聞いた目の前の成人男性たちは「まずはやってみましょう!」とやる気に満ちてしまった。
「独楽をやっている者たちよ、集まってくれ」
普段は町の入り口に座っているペーターさんが珍しく号令をかけたので、なんだどうしたと人が集まってくる。幸いにも近くで投げ独楽をしていた人は皆大人で、大半が男性だったので説明はスムーズに終わる。ただほとんどが理解できていなかったので実際にやってみることにする。
「投げ独楽はね、普通に回しても楽しいのだけれど、独楽同士をぶつける遊び方もあるの。ぶつかっても最後まで回っていた人が勝ちよ。やってみたい人はいる?」
ご当地ルールはあるだろうが、私の知っているルールを話す。すると私に話しかけてきた町の人が一番に名乗りをあげる。それに対抗するようにシャガも参加の意思を告げると、ちらほらと腕に自信のある者が手を上げて参加すると言う。
「初めてだから私も参加するわ。まずは参加者は一人ずつ独楽を回して見せましょう?賭けたいと思う人をそれで判断してちょうだい」
そう言うと名乗りをあげた順に一人ずつ独楽を回して披露する。私とシャガは独楽を持ってきていなかったので参加しない人から借りる。ただ、私は少々卑怯な手を使った。私が得意とする大きさの独楽を持っている人に近付き、借りた時に「重い」等とあえてアピールをし、独楽を回す時もわざと失敗する。ほとんどが最初に名乗りをあげた人かシャガに賭けたが、私はじいやたちに小声で呟く。
「全員私に賭けて」
心配そうなじいやたちに「任せなさい」と言うとじいやたちは私に賭け、そして初の賭博が始まった。
「全員同時に投げて、最後まで回っていた人が勝ちよ」
賭け事をしたことのない者たちは盛り上がり、そしてせーの!で独楽を投げる。私はみんなに教えやすいようにただ投げるやり方だけを教えていた。コツを掴むまでは少し難しいが、縄が離れる寸前に縄を引き戻すとより強い回転が加わることを教えていない。
勝ったわ。そう確信して独楽を投げた。甲高い衝突音を響かせ私の独楽は全員の独楽を弾き飛ばした。それでも回っている独楽を手のひらに乗せ可愛らしく「勝っちゃった」と言うと、とてつもなく盛り上がったのだった。
小銭ゲットだわ!
「また遊ぶ道具を作りましたよー!いかがですかー?」
大きな声で繰り返していると、以前ドングーリコマを作ってあげた子どもたちが集まってきた。今日は親御さんも一緒のようだ。
「おねーたん、ドングーリのやつ、面白かったの!」
「本当?良かったわ。これも同じように遊ぶのよ」
そう言い、子ども受けしそうなカラフルなひねり独楽を一つ手に取る。キラキラと目を輝かせる子どもたちの前で独楽を回すと「キレイ!」と子どもたちははしゃいでいる。そして親御さんに「これが欲しい」とか「買ってくれなきゃ帰らない」などとわがままを言い始める。
「おいくらなのかしら?」
「はい、白銅貨の丸が一つです!」
一人の親御さんに聞かれ、事前にブルーノさんの工房で決めた値段を伝える。丸い白銅貨は私の中では五百円という感覚なので、小さなこのひねり独楽の値段としては妥当だろう。親御さんは少し悩んだ後に「一つだけよ」と子どもに選ばせる。一人が買えば他の人もつられて買ってくれるので、心の中でニヤリと笑う。案の定親の承諾を得た子どもたちが我先にと群がり、お気に入りの一つを選んで購入してくれた。
「こっちは何なんですか?」
一人の男性に話しかけられ振り向くと、投げ独楽を指さしている。よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに私はアピールを始める。
「これはねもっと大きな子ども、もちろん大人も楽しめるものなのよ」
そう説明しながらタコ糸ではなく細めの縄を独楽の胴に巻いていく。そして少し場所を空けてほしいと言い地面へと独楽を投げた。ひねり独楽よりも早く力強く回る投げ独楽に町の人は歓声を上げてくれる。
「実際にやってみると難しいのよ。ね?」
ブルーノさんに同意を求めると「難しいからこそ面白い」と言ってくれた。それでも思い悩んでいる町の人にやらせてみると、やはりお弟子さんたちのように回すことが出来なかったり、回ってもすぐに倒れてしまう。大人の男性ほどムキになり、買って練習するからと飛ぶように売れてしまった。ちなみに投げ独楽は大きさもあって銅貨二枚、二千円くらいに値段設定をして売ったのだった。
────
ブルーノさんのお宅に泊めていただき、一夜明けた朝。特にすることのなかった私たちは町をぶらぶらしようと散歩に出ることにした。するとどうだろう。まだ朝だというのに町のあちらこちらで独楽を回している人たちがいる。その中で私たちに気付いた人が声を上げた。
「森の民の方たち!見てください!」
その人の独楽を見れば、投げ独楽らしく力強く回っている。もしかしたらシャガよりも上手いかもしれないと思ったところ「……負けない」とボソリとシャガが呟いた。そこで閃いてしまったのだ。
「ねぇじいや。この世界では博打や賭博ってどういうのがあるの?」
町の人に聞こえない声でじいやに問いかけると、じいやは小首を傾げる。
「バクチ……トバク……とはなんですか?」
「え!?賭け事ってないの!?」
賭け事と聞いてもじいやは分からない様子だった。私はイチビに頼みペーターさんを呼んで来てもらった。広場に着いたペーターさんにも賭け事について聞くと「それは食べ物か?」なんて言う。
少し悩んだが賭け事について説明をした。それこそ大博打だ。
「これは大人だけに許された『遊び』よ。賭け事とはね、何がとか誰が一番になるか予想をしてお金を賭けるの。当たった人には外れた人の賭けたお金が入るのよ」
ペーターさんはそれを聞いて驚くが、じいやたちがそれを知らないと色々と面倒なことになるので察してポーカーフェイスに徹してくれた。日々刺激を求めているペーターさんは乗り気である。
細かなルールを決めないと全財産を失ってしまったり、下手をすると死人も出ることになると伝える。なので一度に賭けられる金額は白銅貨の三角が一枚、百円までと決める。最低額は白銅貨の四角、十円からと決めた。そしてペーターさんの目の届く範囲でしか賭け事はやらず、違反した者は厳しい罰則を与える為にその内容を考えておいて欲しいと伝える。
この話を聞いた目の前の成人男性たちは「まずはやってみましょう!」とやる気に満ちてしまった。
「独楽をやっている者たちよ、集まってくれ」
普段は町の入り口に座っているペーターさんが珍しく号令をかけたので、なんだどうしたと人が集まってくる。幸いにも近くで投げ独楽をしていた人は皆大人で、大半が男性だったので説明はスムーズに終わる。ただほとんどが理解できていなかったので実際にやってみることにする。
「投げ独楽はね、普通に回しても楽しいのだけれど、独楽同士をぶつける遊び方もあるの。ぶつかっても最後まで回っていた人が勝ちよ。やってみたい人はいる?」
ご当地ルールはあるだろうが、私の知っているルールを話す。すると私に話しかけてきた町の人が一番に名乗りをあげる。それに対抗するようにシャガも参加の意思を告げると、ちらほらと腕に自信のある者が手を上げて参加すると言う。
「初めてだから私も参加するわ。まずは参加者は一人ずつ独楽を回して見せましょう?賭けたいと思う人をそれで判断してちょうだい」
そう言うと名乗りをあげた順に一人ずつ独楽を回して披露する。私とシャガは独楽を持ってきていなかったので参加しない人から借りる。ただ、私は少々卑怯な手を使った。私が得意とする大きさの独楽を持っている人に近付き、借りた時に「重い」等とあえてアピールをし、独楽を回す時もわざと失敗する。ほとんどが最初に名乗りをあげた人かシャガに賭けたが、私はじいやたちに小声で呟く。
「全員私に賭けて」
心配そうなじいやたちに「任せなさい」と言うとじいやたちは私に賭け、そして初の賭博が始まった。
「全員同時に投げて、最後まで回っていた人が勝ちよ」
賭け事をしたことのない者たちは盛り上がり、そしてせーの!で独楽を投げる。私はみんなに教えやすいようにただ投げるやり方だけを教えていた。コツを掴むまでは少し難しいが、縄が離れる寸前に縄を引き戻すとより強い回転が加わることを教えていない。
勝ったわ。そう確信して独楽を投げた。甲高い衝突音を響かせ私の独楽は全員の独楽を弾き飛ばした。それでも回っている独楽を手のひらに乗せ可愛らしく「勝っちゃった」と言うと、とてつもなく盛り上がったのだった。
小銭ゲットだわ!
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