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王国の小さな発展
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翌朝、起きていつものように広場へ行くとタデとヒイラギが真面目な顔をして会話をしている。どうしたのかと思い近付くと、二人に良いところに来たと言われた。
「おはよう。どうしたの?何か問題があったの?」
いつもは大雑把で強がってはいるが、前世はハタチの私はまだまだ子どもで手探りの王国作りは実は不安でいっぱいなのだ。
「おはよう姫。あのね毎日森が成長していくおかげで、木材がだいぶ手に入ったんだよね」
「こちらの水路建設も順調に進んでいる」
喜ばしい話題だが、二人はまだ真面目な顔をしている。相槌を打ち話の続きを聞く。
「このまま水路をこの広場の方へ延長し、その近くに家を建てたらどうだろう?今ある家は仮の家としてまず壁を作り、それが完成次第、西側に町……というか住居の区画を作ってはどうだろう?」
「木材に困ることはもう無さそうなんだよね」
二人の意見を聞き私は満面の笑顔となる。
「それって城下町への一歩よね?」
そう問えば二人はようやく笑顔を見せ頷く。そしてタデが口を開く。
「ただし水路のほうがどうしても時間はかかる。なのでまだ少し先の話になるがな。……モクレンにはしっかりと理解出来るように私たちが懇切丁寧に説明をしておく」
私以上に大雑把なお父様を思い浮かべ、苦笑いで「お願いします」と二人に頼んだ。
朝食の前にレンガの窯の様子を見に行くと、イチビたちが窯の周りに集まっている。
「おはようみんな」
そう声をかけるとみんながそわそわとしている。不思議に思い聞いてみると、焼いたレンガは冷えたようでパッと見た感じだと割れている物は少ないと言う。ならば朝食後に確認しようということになった。
朝食後、お母様たちには昨日の続きを頼み、間伐チームの数人がバラックに板を貼り付け壁を作る作業を始める。そして私はイチビたちと窯の前にやって来た。他の者はレンガを捏ねて作っている中、私たちは窯の中を確認し焼成レンガを取り出す。
「すごいじゃない!ほとんど割れていないし、どれも立派なレンガよ!」
心からそう思い賞賛の言葉をかけるとイチビたちはまたモジモジとしている。
「……今日はこの後ろの窯を使って焼きます」
シャガが指差す後方を見れば、日干しレンガで作られた新しい窯がある。これからは窯の数も増やし、一日ごとにレンガを焼いていくつもりだとみんなは話す。
「レンガについてはみんなに任せるわ。あのね、このレンガを少し分けてもらってもいいかしら?」
「もちろんです」
イチビの了解を得て広場から一番近い畑にレンガを持って行く。家の近くに置いていた最初に作ったレンガも一緒に運ぶ。途中でオヒシバが手伝ってくれ、数十個のレンガを運びと終わると私はそれを積み立てていく。あえてモルタルで固定せずにバスタブ型のレンガの囲みを二つほど作った。
「これは何を作っているのでしょう?」
出来上がったものを見てオヒシバが不思議そうに問う。コンポストを作ったのだが説明に悩む。
「これはね、堆肥……畑の肥料を作るものなの。土に栄養があれば野菜はもっと丈夫で美味しいものが出来るわ。肥料にもいろいろあってね、前世で住んでいた国は昔は糞尿を使っていたの。でも臭いもすごいし、誰かが病気にかかっていたらその糞尿を使った食べ物も汚染されてしまう。だから安全な肥料を作りたかったのよ」
「そうなのですか!?」
いつの間にか後ろに立っていたエビネが驚きの声を上げる。その声に驚き私とオヒシバが振り向いた。
「で、肥料はどう作るのですか?」
すっかり農作業の専門になったエビネはワクワクと目を輝かせている。
「例えば収穫した野菜の食べない部分、そうね、皮やヘタなどよ。ただ細かく刻まないといけないけれど。あとは……今はないけれど、食べ残しなども入れたりするわ。逆に種は入れてしまうと発芽したりするから駄目よ。オーレンジンやリーモン、私たちは『柑橘系』と呼んでいたけれど、それらも入れては駄目ね。ただそれは薬剤が付着しているからで、この国で採れたものは大丈夫だと思うわ」
そう説明をするとエビネは「早く作りましょう!」とやる気スイッチが入ったようだ。なのでオヒシバとエビネの三人で森から土を運んでレンガのコンポストに土を入れる。
「あ!ミズズ!ミズズは逃してあげて。発酵が進むと土が熱を出すのよ」
家庭用の生ゴミ等を入れるとかなり温度が上がることがある。害虫はその温度で死滅してくれるが、土を作ってくれるミミズは大事にしたい。
「基本的に植物なら何を入れても良いけれど、早く土になるように入れる時は細かく砕いたり切ったりしてね」
そして注意事項としてあまりにも土が乾いていたら湿らせたり、一日に一回掻き混ぜることを伝える。オヒシバにはこのコンポスト用の蓋を作ってもらうように頼んだ。
さぁどんな土が出来るかしら?楽しみがまた増えたわ。
「おはよう。どうしたの?何か問題があったの?」
いつもは大雑把で強がってはいるが、前世はハタチの私はまだまだ子どもで手探りの王国作りは実は不安でいっぱいなのだ。
「おはよう姫。あのね毎日森が成長していくおかげで、木材がだいぶ手に入ったんだよね」
「こちらの水路建設も順調に進んでいる」
喜ばしい話題だが、二人はまだ真面目な顔をしている。相槌を打ち話の続きを聞く。
「このまま水路をこの広場の方へ延長し、その近くに家を建てたらどうだろう?今ある家は仮の家としてまず壁を作り、それが完成次第、西側に町……というか住居の区画を作ってはどうだろう?」
「木材に困ることはもう無さそうなんだよね」
二人の意見を聞き私は満面の笑顔となる。
「それって城下町への一歩よね?」
そう問えば二人はようやく笑顔を見せ頷く。そしてタデが口を開く。
「ただし水路のほうがどうしても時間はかかる。なのでまだ少し先の話になるがな。……モクレンにはしっかりと理解出来るように私たちが懇切丁寧に説明をしておく」
私以上に大雑把なお父様を思い浮かべ、苦笑いで「お願いします」と二人に頼んだ。
朝食の前にレンガの窯の様子を見に行くと、イチビたちが窯の周りに集まっている。
「おはようみんな」
そう声をかけるとみんながそわそわとしている。不思議に思い聞いてみると、焼いたレンガは冷えたようでパッと見た感じだと割れている物は少ないと言う。ならば朝食後に確認しようということになった。
朝食後、お母様たちには昨日の続きを頼み、間伐チームの数人がバラックに板を貼り付け壁を作る作業を始める。そして私はイチビたちと窯の前にやって来た。他の者はレンガを捏ねて作っている中、私たちは窯の中を確認し焼成レンガを取り出す。
「すごいじゃない!ほとんど割れていないし、どれも立派なレンガよ!」
心からそう思い賞賛の言葉をかけるとイチビたちはまたモジモジとしている。
「……今日はこの後ろの窯を使って焼きます」
シャガが指差す後方を見れば、日干しレンガで作られた新しい窯がある。これからは窯の数も増やし、一日ごとにレンガを焼いていくつもりだとみんなは話す。
「レンガについてはみんなに任せるわ。あのね、このレンガを少し分けてもらってもいいかしら?」
「もちろんです」
イチビの了解を得て広場から一番近い畑にレンガを持って行く。家の近くに置いていた最初に作ったレンガも一緒に運ぶ。途中でオヒシバが手伝ってくれ、数十個のレンガを運びと終わると私はそれを積み立てていく。あえてモルタルで固定せずにバスタブ型のレンガの囲みを二つほど作った。
「これは何を作っているのでしょう?」
出来上がったものを見てオヒシバが不思議そうに問う。コンポストを作ったのだが説明に悩む。
「これはね、堆肥……畑の肥料を作るものなの。土に栄養があれば野菜はもっと丈夫で美味しいものが出来るわ。肥料にもいろいろあってね、前世で住んでいた国は昔は糞尿を使っていたの。でも臭いもすごいし、誰かが病気にかかっていたらその糞尿を使った食べ物も汚染されてしまう。だから安全な肥料を作りたかったのよ」
「そうなのですか!?」
いつの間にか後ろに立っていたエビネが驚きの声を上げる。その声に驚き私とオヒシバが振り向いた。
「で、肥料はどう作るのですか?」
すっかり農作業の専門になったエビネはワクワクと目を輝かせている。
「例えば収穫した野菜の食べない部分、そうね、皮やヘタなどよ。ただ細かく刻まないといけないけれど。あとは……今はないけれど、食べ残しなども入れたりするわ。逆に種は入れてしまうと発芽したりするから駄目よ。オーレンジンやリーモン、私たちは『柑橘系』と呼んでいたけれど、それらも入れては駄目ね。ただそれは薬剤が付着しているからで、この国で採れたものは大丈夫だと思うわ」
そう説明をするとエビネは「早く作りましょう!」とやる気スイッチが入ったようだ。なのでオヒシバとエビネの三人で森から土を運んでレンガのコンポストに土を入れる。
「あ!ミズズ!ミズズは逃してあげて。発酵が進むと土が熱を出すのよ」
家庭用の生ゴミ等を入れるとかなり温度が上がることがある。害虫はその温度で死滅してくれるが、土を作ってくれるミミズは大事にしたい。
「基本的に植物なら何を入れても良いけれど、早く土になるように入れる時は細かく砕いたり切ったりしてね」
そして注意事項としてあまりにも土が乾いていたら湿らせたり、一日に一回掻き混ぜることを伝える。オヒシバにはこのコンポスト用の蓋を作ってもらうように頼んだ。
さぁどんな土が出来るかしら?楽しみがまた増えたわ。
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