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新たな農園の提案
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広場へと戻って来た私たちはホッとした途端急激に疲れを感じてしまい、なんとなくみんなで座り込んでしまった。お母様たちを始めとする他の者たちは私たちを労い、急いで食事の準備を進めてくれている。
そんなお母様たちに悪いなと思いつつ、疲れた体に甘いものを求めた結果デーツの存在を思い出した。最近は畑の収穫物が増えたので野菜ばかりを食べていて果実を食べる機会が極端に減っていた。むしろデーツの木はこの国のシンボルツリー的な存在となっていた。
一度あの甘さを思い出してしまえば我慢することが出来ず、私はデーツの木の側に歩み寄る。たわわに実っていた果実を見上げれば、しばらく収穫していなかった実はほんの少ししわしわとなってほぼ完熟していて天然のドライフルーツが出来上がっている。デーツのドライフルーツの甘さを知っている私は問答無用で木に登る。
「カレン!?」
「姫様!?」
私の奇行に気付いたお父様とじいやが慌てて走って来る。
「……デーツ……デーツが食べたい……」
元々木登りが得意だったことに加え、ヤシの木は幹がツルツルしていないので簡単に登ることが出来る。そして房を力技で切り離し「受け取って!」とお父様たちに放り投げ木を降りた。
「どうしたのだカレン?」
「食べてみて」
心配そうなお父様にドライデーツを勧めると、一粒を口に入れる。お父様は噛み締める程に目を見開き驚いている。
「甘い!この甘さは奇跡だ!」
その言葉を聞き私も一粒手に取り口に放り込む。ねっとりとした食感に極上の甘さが疲れた体を癒やしてくれる。お父様はこのドライデーツを民たちに振る舞おうとしたが、炎天下の下で肉体労働をした人が食べるべきだとお母様たちに説得され一緒に作業をした仲間たちとそれを味わった。
「カレンよ。この種を植えてみたら良いのではないか?」
お父様は口から出した種を手の平に乗せ私に問いかける。
「私も前の世界で同じことを思ったわ」
美樹の家にお裾分けをくれたおばちゃまのおかげでデーツの虜になった美樹は図書館へ行き、デーツことナツメヤシの栽培方法を調べた。
この木は雌雄異株なので、実を収穫するには雄と雌の木を植えなければならない。そして種からも育てることは出来るが、数年経たないと性別も分からない上に実が成っても品質がよろしくないらしいのだ。
さらに木ごとに特性が違うらしく、そして株分けした木は親の特性を受け継ぐので株分けでの繁殖が基本らしい。ちなみに種から育てて満足のいく品質の実が出来るのはほんの数%の確率なんだとか。それを知った美樹は潔く諦めたのだった。
「……という訳なのよ」
私はあくまでも前の世界の育て方としてその体験談を語った。
「ふむ……。だが私はこの木に愛着が湧いているのだ。この王国を代表する木として増やしたいのだが」
木に実っているデーツと手元のデーツに夢中になっていたせいで気付かなかったが、ふとデーツの木を見てみると根元には脇芽が出ていた。地球のものであれば年に3~4株しか出ない脇芽は、この世界だからかはたまたこの不思議な土地の力によるものなのか10株前後も出ている。
「じゃあお父様、この脇芽は畑で栽培して、種から育てたものは水路の脇に植えるのはどうかしら?食べる訳じゃないから品質に拘らなくてもいいし、水路の完成を祝って植えましょう」
「それは良いな!」
話を聞いていた民たちもお父様に賛同する。水路の横に生えるヤシの木を想像し、南国情緒漂うその光景を見たいと私も思った。
「そういえば今まで種はどうしていたの?」
種を集めようと思いお父様に聞くと衝撃の一言が返ってきた。
「割って中まで食っていたぞ。食う物がなかったからな」
……そうよね、貧困と空腹に喘いでいたのだから。私はお母様のところへ行きザルを借りてデーツを食べたみんなから種をもらう。ここは乾燥しているから大丈夫だとは思うが、洗って乾燥させないとカビが生えたりすることがあるからだ。
ザルの上で水をかけ、ぬめりというか種の周りの果肉を洗い落とす。最近は動ける者たちのおかげで常に水が蓄えられてはいるが、まだ川まで汲みに行っているので少し申し訳ない気持ちになってしまう。
今日もみんなで食事をとり、しばし談笑をした後それぞれの家へと戻る。私たち以外は未だにバラックのような家なのを申し訳なく思う。間伐材が増えて来ているので、最低限まずは壁を作るべきだと思っているとスイレンに声をかけられた。
「デーツの木も上手く育つといいね。またカレンのやることが増えちゃったけど、水路の建設が終わったらカレンはどうするつもり?」
「建設が終わるまで待つつもりはないわ。明日にはモールタールの使い方を誰かに覚えてもらって、私は違う作業に取り掛かろうと思うの」
その発言にスイレンは「え!」と驚く。
「やれることはどんどんとやらないと、みんなの生活は一向に良くならないからね。満足のいく暮らしにはまだまだ程遠いわ」
「……そうだよね。僕たちは家があるけどみんなには屋根しかないし……。僕にはどうしたら良いか分からないから、そういうのはカレンに任せる。僕は水路の建設を頑張るよ」
気弱に見えてしっかりとしているスイレンは決意を込めてそう言った。私も私自身はもちろん、王国も国民もお金持ちになってウハウハな生活を送れるように頑張ろうと、若干よこしまな気持ちを抱きつつもっと努力しようと力強く思ったのだった。
そんなお母様たちに悪いなと思いつつ、疲れた体に甘いものを求めた結果デーツの存在を思い出した。最近は畑の収穫物が増えたので野菜ばかりを食べていて果実を食べる機会が極端に減っていた。むしろデーツの木はこの国のシンボルツリー的な存在となっていた。
一度あの甘さを思い出してしまえば我慢することが出来ず、私はデーツの木の側に歩み寄る。たわわに実っていた果実を見上げれば、しばらく収穫していなかった実はほんの少ししわしわとなってほぼ完熟していて天然のドライフルーツが出来上がっている。デーツのドライフルーツの甘さを知っている私は問答無用で木に登る。
「カレン!?」
「姫様!?」
私の奇行に気付いたお父様とじいやが慌てて走って来る。
「……デーツ……デーツが食べたい……」
元々木登りが得意だったことに加え、ヤシの木は幹がツルツルしていないので簡単に登ることが出来る。そして房を力技で切り離し「受け取って!」とお父様たちに放り投げ木を降りた。
「どうしたのだカレン?」
「食べてみて」
心配そうなお父様にドライデーツを勧めると、一粒を口に入れる。お父様は噛み締める程に目を見開き驚いている。
「甘い!この甘さは奇跡だ!」
その言葉を聞き私も一粒手に取り口に放り込む。ねっとりとした食感に極上の甘さが疲れた体を癒やしてくれる。お父様はこのドライデーツを民たちに振る舞おうとしたが、炎天下の下で肉体労働をした人が食べるべきだとお母様たちに説得され一緒に作業をした仲間たちとそれを味わった。
「カレンよ。この種を植えてみたら良いのではないか?」
お父様は口から出した種を手の平に乗せ私に問いかける。
「私も前の世界で同じことを思ったわ」
美樹の家にお裾分けをくれたおばちゃまのおかげでデーツの虜になった美樹は図書館へ行き、デーツことナツメヤシの栽培方法を調べた。
この木は雌雄異株なので、実を収穫するには雄と雌の木を植えなければならない。そして種からも育てることは出来るが、数年経たないと性別も分からない上に実が成っても品質がよろしくないらしいのだ。
さらに木ごとに特性が違うらしく、そして株分けした木は親の特性を受け継ぐので株分けでの繁殖が基本らしい。ちなみに種から育てて満足のいく品質の実が出来るのはほんの数%の確率なんだとか。それを知った美樹は潔く諦めたのだった。
「……という訳なのよ」
私はあくまでも前の世界の育て方としてその体験談を語った。
「ふむ……。だが私はこの木に愛着が湧いているのだ。この王国を代表する木として増やしたいのだが」
木に実っているデーツと手元のデーツに夢中になっていたせいで気付かなかったが、ふとデーツの木を見てみると根元には脇芽が出ていた。地球のものであれば年に3~4株しか出ない脇芽は、この世界だからかはたまたこの不思議な土地の力によるものなのか10株前後も出ている。
「じゃあお父様、この脇芽は畑で栽培して、種から育てたものは水路の脇に植えるのはどうかしら?食べる訳じゃないから品質に拘らなくてもいいし、水路の完成を祝って植えましょう」
「それは良いな!」
話を聞いていた民たちもお父様に賛同する。水路の横に生えるヤシの木を想像し、南国情緒漂うその光景を見たいと私も思った。
「そういえば今まで種はどうしていたの?」
種を集めようと思いお父様に聞くと衝撃の一言が返ってきた。
「割って中まで食っていたぞ。食う物がなかったからな」
……そうよね、貧困と空腹に喘いでいたのだから。私はお母様のところへ行きザルを借りてデーツを食べたみんなから種をもらう。ここは乾燥しているから大丈夫だとは思うが、洗って乾燥させないとカビが生えたりすることがあるからだ。
ザルの上で水をかけ、ぬめりというか種の周りの果肉を洗い落とす。最近は動ける者たちのおかげで常に水が蓄えられてはいるが、まだ川まで汲みに行っているので少し申し訳ない気持ちになってしまう。
今日もみんなで食事をとり、しばし談笑をした後それぞれの家へと戻る。私たち以外は未だにバラックのような家なのを申し訳なく思う。間伐材が増えて来ているので、最低限まずは壁を作るべきだと思っているとスイレンに声をかけられた。
「デーツの木も上手く育つといいね。またカレンのやることが増えちゃったけど、水路の建設が終わったらカレンはどうするつもり?」
「建設が終わるまで待つつもりはないわ。明日にはモールタールの使い方を誰かに覚えてもらって、私は違う作業に取り掛かろうと思うの」
その発言にスイレンは「え!」と驚く。
「やれることはどんどんとやらないと、みんなの生活は一向に良くならないからね。満足のいく暮らしにはまだまだ程遠いわ」
「……そうだよね。僕たちは家があるけどみんなには屋根しかないし……。僕にはどうしたら良いか分からないから、そういうのはカレンに任せる。僕は水路の建設を頑張るよ」
気弱に見えてしっかりとしているスイレンは決意を込めてそう言った。私も私自身はもちろん、王国も国民もお金持ちになってウハウハな生活を送れるように頑張ろうと、若干よこしまな気持ちを抱きつつもっと努力しようと力強く思ったのだった。
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