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お母様が作る伝統工芸品
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翌日、目が覚め外に出るといつものように広場に人が集まっている。だけど何人かが揃って森の方に向かうので、なんとなくそれを目で追うと手前の森の近くにお母様が座っているのが見えた。お母様だけじゃなくヒイラギ夫婦も近くにおり、何か作業をしているようで気になった私はスイレンと共に行ってみることにした。
「おはようお母様。何をしているの?」
「あらおはよう、カレン、スイレン。これはね頭に被る物を作っているの。帽子の代わりね」
お母様は笑顔で話を続ける。
「今日は雲も無く暑そうでしょう?……いつも基本的に暑いけれど。作業をする民たちが少しでも楽に作業出来るように、日差しを遮れればと思ってね」
お母様は私たちを見て話しているのに、慣れた作業なのか手先は動いている。
「本当は違う植物を使ってもっと頭の形に合わせるのだけれど、私が簡単にすぐに作れるのがツルを使ったこのカゴなの。ひっくり返して被れば……ほら、帽子の代わりになるでしょう?」
カゴを被ったお母様は無邪気な笑顔で笑う。森の景色は当たり前すぎて細かいところまで見ていなかったけれど、よくよく見ればあちらこちらに植物のツルが伸びている。そのツルを使ったようだ。私とスイレンがすごいと褒めているとナズナさんが口を開く。
「簡単に、なんて言っているけど、簡単に作れるのはレンゲだけよ。ほら、私の作ったのを見て」
ナズナさんに手渡されたカゴは、お母様が作った物と違い隙間がたくさん開いている。とは言ってもそれはごく自然で売り物だとしても問題はなく、お母様の作品が素晴らしすぎるだけなのだが。
「ナズナさんもすごいわ。ちゃんと日差しを遮れるわよ?」
「本来は日差しを遮る物じゃないんだけどね」
ナズナさんの言葉にみんなが笑い出す。
「本当はもう少し乾燥させてから作りたかったけど、そうも言ってられないでしょう?」
そんな風に談笑している間にもお母様はどんどんとカゴを作り上げる。
「ナズナ、私の分のツルは無くなったわ。樹皮の様子を見て来るわね」
そう言って立ち上がるお母様にスイレンが質問をする。
「ジュヒ?お母様、ジュヒって何?」
「そうね、カレンもスイレンも見たことがないものね。こっちよ」
お母様は私たちを手招きし、小さな森の外れに私たちを案内する。するとそこには昨日はなかった簡易の物干し竿のような物が設置されていて、そこには何かをたくさんぶら下げて干しているようだった。
「これはねオッヒョイという木の皮よ。木の皮を樹皮と言うの。これを処理して糸にして、それを織ることで布になるのよ。その布は私たちが着ているこの服よ」
「「え!?」」
私とスイレンは全力で驚いた。
「昨日一本だけ切り倒してもらったの。まだ細い木だったからあんまり樹皮は取れなかったのだけれど。でも少しずつ布を作ってそろそろみんなに服を作らないとね」
確かに私たち親子は薄汚れてはいるけど、他の民のように擦り切れて穴が開いたりはしていない。衣食住の衣をどうしようかと思っていたけど、それはお母様が解決の糸口を見つけてくれた。でもお母様に頼るだけじゃなく私も出来ることをしないと。
「ねえお母様?木の皮ってそんなに簡単に剥がれるの?」
私が考え事をしていると、スイレンはお母様に質問をする。
「うーん……このオッヒョイとニィレという木は別格ね。簡単に剥がれて丈夫な糸になるし……」
そう呟きながらお母様は森へと入る。何本かの細い木を物色し「まだ小さくて勿体無いけれど」と言いながら一本の木を見定め、先程カゴを作る時に使っていた小刀で細い幹を傷付け、その傷を付けた皮を引っ張ると面白いくらいペローンと皮が一直線に剥がれた。
「「それをどうするの?」」
私たちは同じ質問を同時にし思わず笑ってしまう。
「この一番外側の樹皮は使わないの。この内側の樹皮も同じように剥がれるのよ。ああやって干しておけばいつでも使えるし、使う時に茹でて洗ってを繰り返して糸にしていくの。ただいつでもこんなに綺麗に剥がれる訳ではないから、経験で剥がれやすい成長具合の木を見極めるのよ」
「「へー!」」
以前お母様は手先の器用さは誰にも負けないって言っていたけど、本当にその通りだと思った。この世界での布の織り方を早く知りたいわ。
「お母様、布や糸がもっと普及したら一緒に手芸をしましょ!」
「それは楽しみだわ」
お母様の笑顔は今までで一番輝いて見えた。そして私もまたこの世界での楽しみが出来てワクワクするわ!
「おはようお母様。何をしているの?」
「あらおはよう、カレン、スイレン。これはね頭に被る物を作っているの。帽子の代わりね」
お母様は笑顔で話を続ける。
「今日は雲も無く暑そうでしょう?……いつも基本的に暑いけれど。作業をする民たちが少しでも楽に作業出来るように、日差しを遮れればと思ってね」
お母様は私たちを見て話しているのに、慣れた作業なのか手先は動いている。
「本当は違う植物を使ってもっと頭の形に合わせるのだけれど、私が簡単にすぐに作れるのがツルを使ったこのカゴなの。ひっくり返して被れば……ほら、帽子の代わりになるでしょう?」
カゴを被ったお母様は無邪気な笑顔で笑う。森の景色は当たり前すぎて細かいところまで見ていなかったけれど、よくよく見ればあちらこちらに植物のツルが伸びている。そのツルを使ったようだ。私とスイレンがすごいと褒めているとナズナさんが口を開く。
「簡単に、なんて言っているけど、簡単に作れるのはレンゲだけよ。ほら、私の作ったのを見て」
ナズナさんに手渡されたカゴは、お母様が作った物と違い隙間がたくさん開いている。とは言ってもそれはごく自然で売り物だとしても問題はなく、お母様の作品が素晴らしすぎるだけなのだが。
「ナズナさんもすごいわ。ちゃんと日差しを遮れるわよ?」
「本来は日差しを遮る物じゃないんだけどね」
ナズナさんの言葉にみんなが笑い出す。
「本当はもう少し乾燥させてから作りたかったけど、そうも言ってられないでしょう?」
そんな風に談笑している間にもお母様はどんどんとカゴを作り上げる。
「ナズナ、私の分のツルは無くなったわ。樹皮の様子を見て来るわね」
そう言って立ち上がるお母様にスイレンが質問をする。
「ジュヒ?お母様、ジュヒって何?」
「そうね、カレンもスイレンも見たことがないものね。こっちよ」
お母様は私たちを手招きし、小さな森の外れに私たちを案内する。するとそこには昨日はなかった簡易の物干し竿のような物が設置されていて、そこには何かをたくさんぶら下げて干しているようだった。
「これはねオッヒョイという木の皮よ。木の皮を樹皮と言うの。これを処理して糸にして、それを織ることで布になるのよ。その布は私たちが着ているこの服よ」
「「え!?」」
私とスイレンは全力で驚いた。
「昨日一本だけ切り倒してもらったの。まだ細い木だったからあんまり樹皮は取れなかったのだけれど。でも少しずつ布を作ってそろそろみんなに服を作らないとね」
確かに私たち親子は薄汚れてはいるけど、他の民のように擦り切れて穴が開いたりはしていない。衣食住の衣をどうしようかと思っていたけど、それはお母様が解決の糸口を見つけてくれた。でもお母様に頼るだけじゃなく私も出来ることをしないと。
「ねえお母様?木の皮ってそんなに簡単に剥がれるの?」
私が考え事をしていると、スイレンはお母様に質問をする。
「うーん……このオッヒョイとニィレという木は別格ね。簡単に剥がれて丈夫な糸になるし……」
そう呟きながらお母様は森へと入る。何本かの細い木を物色し「まだ小さくて勿体無いけれど」と言いながら一本の木を見定め、先程カゴを作る時に使っていた小刀で細い幹を傷付け、その傷を付けた皮を引っ張ると面白いくらいペローンと皮が一直線に剥がれた。
「「それをどうするの?」」
私たちは同じ質問を同時にし思わず笑ってしまう。
「この一番外側の樹皮は使わないの。この内側の樹皮も同じように剥がれるのよ。ああやって干しておけばいつでも使えるし、使う時に茹でて洗ってを繰り返して糸にしていくの。ただいつでもこんなに綺麗に剥がれる訳ではないから、経験で剥がれやすい成長具合の木を見極めるのよ」
「「へー!」」
以前お母様は手先の器用さは誰にも負けないって言っていたけど、本当にその通りだと思った。この世界での布の織り方を早く知りたいわ。
「お母様、布や糸がもっと普及したら一緒に手芸をしましょ!」
「それは楽しみだわ」
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