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森の民が生き残っていることを黙ってくれると言うニコライさんに感謝し、私はさっきまで考えていたことを話す。
「ねぇニコライさん?テックノン王国でセーメントは作ってる?」
「セーメント?あぁこの国ではそう呼んでおりましたね。私たちの国ではセメントと呼んでいますが、もちろんございますよ」
おぉ……セメントという言葉が通じるだけで感動するわ。
「私たちはひっそりと王国を建ち上げて、まだまだ発展途上国なの。正直言うと建物すらほとんどないわ。だけどこれから国を発展させようとするとたくさんのセメントが必ず必要になる。その時は売ってくれないかしら?そしてその頃には食料もそちらに売ることが出来るようになってるわ」
あの土地で畑を増やせば、いくらでも食料は手に入る。
「それはお互いにとって喜ばしいことだ!ですが一つ問題があります」
ニコライさんは神妙な顔つきになる。
「私たちが国境を越える際、どんな荷物をどれくらい運んだか申告しなければいけないのです。それは形式だけになっているとはいえ、もしシャイアーク国王に勘付かれたら……」
不正な密売防止策なのかしら?私たちはジェイソンさんのおかげで自由に通り抜け出来るけど、それは面倒ね……。
「……いっそのこと、私たちの国との間に国境を作れないかしら?」
「「「は?」」」
私の一言にニコライさん、マークさん、じいやが驚く。
「……いや、いやいや!突拍子もないと思いましたが名案ですよ!」
「ですがあなたたちの国とは山で隔てられていますが……」
興奮気味に話すニコライさんに対して、冷静なじいやの一言。
「山を掘れば良いのです!」
「そうね……爆薬で崩したら早いし……」
ニコライさんの言葉にうっかりと深く考えずに答えるとまた食いつかれる。
「爆薬!?詳しくお聞きしても良いですか!?」
「あー……でも危険だし……」
一応言葉は濁したけれど土下座をしそうな勢いで問い詰められ、死者が出るかもしれないことを前提に私は話す。
「ニトログリセリンって……知ってる?」
「あの非常~~~に扱いづらい心臓の薬ですか?」
「そうそう。それをね……」
素人のにわか知識だということも口酸っぱく言い、何か起こっても責任は取れないことを何回も何回も繰り返し言いダイナマイトの作り方を教えた。
「帰りましたら専門家に伝えます!」
「本当に危険だからね!?もし製作に成功したら掘り進めちゃっていいわ。私たちの方から見える山は柱状になっていて多分石灰岩よ。そちらの国で必要なら使って構わないわ」
「 鉱石などはいくらあっても困りません。むしろ助かります」
その言葉を聞き、なんとなく内緒で持ってきていた石を取り出す。人に見られないよう服の中に隠し持って来たものだ。
「これなんだけど……」
私はお父様が掘り出した灰色の石をまず見せる。
「これは……かなり良質な石灰岩ですね」
やはり思った通りの物だった。続いて残り二つの石も見せる。一つは石炭で間違いないはずだ。
「これもまた良質な石炭ですね……あとこれは……黒鉛ですね」
やっぱり私の思った通りだった。
「ニコライさん、この石炭をそちらの国にお渡し出来れば良いんだけど、民を危険な目に合わせたくないの」
以前スイレンに話した自然発火の危険性などを伝える。初めてそれを聞くじいやは私の隣で驚いている。
「確かに危ない物ではありますが、管理さえしっかりとすれば問題ないですよ?もしそれでも心配ならば、国境が出来た時にこちらに人を派遣していただけたら管理や採掘方法を詳しくお教えいたしますよ」
「本当!?」
管理の仕方を教えてもらえるのなら本当に助かる。石炭や石灰岩を輸出できればけっこう儲かるはずだ。心の中でほくそ笑んでいるとヒイラギが食堂に入って来た。
「あぁいたいた。解体は終わりましたがなめし作業があるので、お渡しは二十日後くらいになると思いますよ」
「そうですか!ありがとうございます!」
お礼とお近づきの印に、とニコライさんはカバンから砂時計数個とサイコロ型の万年カレンダーを出してプレゼントしてくれた。そのサイコロ状の物は金属で出来ており、手にした私は口を開く。
「これってもしかしてステンレス?」
「なぜ分かるのですか!?……いや、あなたには脱帽だ」
「あのね、二十日後にここに来るのよね?作ってもらいたい物があるの。もちろん代金は払うわ。……黒板とチョークンを借りてもいいかしら?」
マークさんが差し出してくれたそれを受け取り、私は設計図を描く。
美樹の近所のお年寄りは物持ちが良く、私は『コレ』の構造が不思議でならなかった。お手入れ作業の時は必ず近くで観察し、長さを測ったり幅を測ったりとしていたので全てのパーツの記憶がある。それを事細かに描いていく。
「歯車は分かる?」
「えぇ。関連会社が作っているので一応」
歯車を分かってくれるならこの図も理解してもらえるだろう。直径も歯数も指定し、ベアリングを取り付ける位置、クランクを取り付ける位置や角度も指定した。
「……素晴らしい設計図ですが、これは何なのですか?それにしてもベアリングまで理解しているとは……」
ニコライさんはもう苦笑いだ。
「分からないならまだ内緒!私たちも帰ったら木製で作ってもらうつもりなんだけど、木製だと摩擦熱や耐久性に自信がなくて」
「ではコレを作ったら、その時は何なのか教えてもらえるのですね!」
「うん!でもニコライさんは必要としないだろうけど、他の人にとっては画期的な物でしょうね」
そして食堂内の他の人たちが熱中しているリバーシの説明をし、それらも二十日後に納品する流れとなった。
ふふふ、金持ちに一歩近付いたわ!稼いで稼いで稼ぎまくってやるわ!
「ねぇニコライさん?テックノン王国でセーメントは作ってる?」
「セーメント?あぁこの国ではそう呼んでおりましたね。私たちの国ではセメントと呼んでいますが、もちろんございますよ」
おぉ……セメントという言葉が通じるだけで感動するわ。
「私たちはひっそりと王国を建ち上げて、まだまだ発展途上国なの。正直言うと建物すらほとんどないわ。だけどこれから国を発展させようとするとたくさんのセメントが必ず必要になる。その時は売ってくれないかしら?そしてその頃には食料もそちらに売ることが出来るようになってるわ」
あの土地で畑を増やせば、いくらでも食料は手に入る。
「それはお互いにとって喜ばしいことだ!ですが一つ問題があります」
ニコライさんは神妙な顔つきになる。
「私たちが国境を越える際、どんな荷物をどれくらい運んだか申告しなければいけないのです。それは形式だけになっているとはいえ、もしシャイアーク国王に勘付かれたら……」
不正な密売防止策なのかしら?私たちはジェイソンさんのおかげで自由に通り抜け出来るけど、それは面倒ね……。
「……いっそのこと、私たちの国との間に国境を作れないかしら?」
「「「は?」」」
私の一言にニコライさん、マークさん、じいやが驚く。
「……いや、いやいや!突拍子もないと思いましたが名案ですよ!」
「ですがあなたたちの国とは山で隔てられていますが……」
興奮気味に話すニコライさんに対して、冷静なじいやの一言。
「山を掘れば良いのです!」
「そうね……爆薬で崩したら早いし……」
ニコライさんの言葉にうっかりと深く考えずに答えるとまた食いつかれる。
「爆薬!?詳しくお聞きしても良いですか!?」
「あー……でも危険だし……」
一応言葉は濁したけれど土下座をしそうな勢いで問い詰められ、死者が出るかもしれないことを前提に私は話す。
「ニトログリセリンって……知ってる?」
「あの非常~~~に扱いづらい心臓の薬ですか?」
「そうそう。それをね……」
素人のにわか知識だということも口酸っぱく言い、何か起こっても責任は取れないことを何回も何回も繰り返し言いダイナマイトの作り方を教えた。
「帰りましたら専門家に伝えます!」
「本当に危険だからね!?もし製作に成功したら掘り進めちゃっていいわ。私たちの方から見える山は柱状になっていて多分石灰岩よ。そちらの国で必要なら使って構わないわ」
「 鉱石などはいくらあっても困りません。むしろ助かります」
その言葉を聞き、なんとなく内緒で持ってきていた石を取り出す。人に見られないよう服の中に隠し持って来たものだ。
「これなんだけど……」
私はお父様が掘り出した灰色の石をまず見せる。
「これは……かなり良質な石灰岩ですね」
やはり思った通りの物だった。続いて残り二つの石も見せる。一つは石炭で間違いないはずだ。
「これもまた良質な石炭ですね……あとこれは……黒鉛ですね」
やっぱり私の思った通りだった。
「ニコライさん、この石炭をそちらの国にお渡し出来れば良いんだけど、民を危険な目に合わせたくないの」
以前スイレンに話した自然発火の危険性などを伝える。初めてそれを聞くじいやは私の隣で驚いている。
「確かに危ない物ではありますが、管理さえしっかりとすれば問題ないですよ?もしそれでも心配ならば、国境が出来た時にこちらに人を派遣していただけたら管理や採掘方法を詳しくお教えいたしますよ」
「本当!?」
管理の仕方を教えてもらえるのなら本当に助かる。石炭や石灰岩を輸出できればけっこう儲かるはずだ。心の中でほくそ笑んでいるとヒイラギが食堂に入って来た。
「あぁいたいた。解体は終わりましたがなめし作業があるので、お渡しは二十日後くらいになると思いますよ」
「そうですか!ありがとうございます!」
お礼とお近づきの印に、とニコライさんはカバンから砂時計数個とサイコロ型の万年カレンダーを出してプレゼントしてくれた。そのサイコロ状の物は金属で出来ており、手にした私は口を開く。
「これってもしかしてステンレス?」
「なぜ分かるのですか!?……いや、あなたには脱帽だ」
「あのね、二十日後にここに来るのよね?作ってもらいたい物があるの。もちろん代金は払うわ。……黒板とチョークンを借りてもいいかしら?」
マークさんが差し出してくれたそれを受け取り、私は設計図を描く。
美樹の近所のお年寄りは物持ちが良く、私は『コレ』の構造が不思議でならなかった。お手入れ作業の時は必ず近くで観察し、長さを測ったり幅を測ったりとしていたので全てのパーツの記憶がある。それを事細かに描いていく。
「歯車は分かる?」
「えぇ。関連会社が作っているので一応」
歯車を分かってくれるならこの図も理解してもらえるだろう。直径も歯数も指定し、ベアリングを取り付ける位置、クランクを取り付ける位置や角度も指定した。
「……素晴らしい設計図ですが、これは何なのですか?それにしてもベアリングまで理解しているとは……」
ニコライさんはもう苦笑いだ。
「分からないならまだ内緒!私たちも帰ったら木製で作ってもらうつもりなんだけど、木製だと摩擦熱や耐久性に自信がなくて」
「ではコレを作ったら、その時は何なのか教えてもらえるのですね!」
「うん!でもニコライさんは必要としないだろうけど、他の人にとっては画期的な物でしょうね」
そして食堂内の他の人たちが熱中しているリバーシの説明をし、それらも二十日後に納品する流れとなった。
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