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告白

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  私は他の人よりも人相を見ることが出来ると思う。原因は美樹だった頃、お人好しの父に連帯保証人になってもらったりお金を騙し取ろうとする人が跡を絶たなかったからだ。そんな人たちは口では困っていると言い表情も作るが、目だけは誤魔化せない。目は口ほどに物を言うとは本当だと思ったものだ。
  そんな大人たちをたくさん見ているうちに変な部分で目が肥え、不利益をもたらそうと企んでいる人を見抜く技が磨かれたんだ。

「……ガラス製品や金属製品も扱っているの?薬品は?」

「もちろん!既製品だけではなく、ご要望に合わせて作ることも可能です!薬品については劇薬などは安全の面からしてお渡し出来ない物もありますが」

  胸を張り自社製品を語るニコライさんを見る限り、ただ純粋にお互いの為に商売をしたいと思っているように見える。……悪い人ではない。悪い人ではないけれど、どうしようかとまた無言で考え事をしているとクイクイと服の裾を引っ張られた。
  考え事をしていて驚いた私はハッとしてそちらを向くと、小さな子どもたちが数人私を見上げている。

「おねーたん。あたちたち、おなわでピョンピョンできないの。さっきのうりものも、むずかしいの。もりのたみは、ほかにどんなことをしゅるの?」

  あ!っと思うも時すでに遅しだ。

「森の民!?今、森の民と言いましたか!?」

  またしてもテーブルをバーンと叩くニコライさんに怯え、子どもたちは萎縮し泣きそうになっている。

「ニコライさん、子どもたちが怯えているわ。……その話は後で」

  私は足元に置いていた袋からさっき採取したどんぐりを取り出す。子どもたちは「ドングーリだ!」とそれを見て言うので、この世界ではドングーリという名前なのだろう。
  この世界にも爪楊枝はあるようで、食堂であるここのテーブルにも爪楊枝の束が置かれていた。何本か爪楊枝を手に取り、細長いドングーリのてっぺんに爪楊枝を突き刺していく。子どもたちはワクワクとした表情で私の作業を見ている。
  人数分同じ物を作り子どもたちを連れて空いているテーブルに移動し、親指と人差し指で突き刺さった爪楊枝をつまんで勢いよく回す。

「コマと呼ばれるものよ。誰が一番長く回ってられるかな?」

「うわぁ!」

「くるくる!」

  子どもたちは早速興味を示してくれ、ドングーリコマに夢中になってくれた。簡単に作れるこれは子どもたちに作る楽しさも知って欲しくて、私は数個のドングーリをプレゼントした。

「おねーたん、ありがとう」

「ありがとう!」

  子どもたちは私にちゃんとお礼を言いつつも遊びを続けているので私は元の席に戻った。

「あれは……何を?」

  ニコライさんは子どもたちの様子を見ながら口を開く。

「……極端に娯楽がないからみんなに遊ぶ楽しさを教えたの。あの子たちはそれが出来なくて、自分も出来る遊びを聞いて来たのよ」

「娯楽!?娯楽というのは語り合いのんびりとした時間を過ごすことではないのですか?あぁ……私もあなたと二人きりで語り合いたい!」

  右手をビシィ!と差し出されたが、安定の「イヤ」で秒殺するとまた騒ぎ出す。

「あぁ!本当に雷のような罪な方だ!私の心はあなたという雷に撃ち抜かれた!」

  胸を押さえ大げさに騒ぐこのロリコンさん……失礼、ニコライさんにじいやも我慢の限界だったのか口を開いた。

「さ、そろそろ行きましょうかの」

「そうね」

  私たちが席を立とうとするとニコライさんは我に返ってしまった。

「待ってください!森の民とはどういうことですか?」

  あちゃ~と思っていると、タイミング悪く数人の人がリバーシを持って店内に入って来た。解体ショーはあらかた終わったらしい。そして各々テーブルに座り、早速対戦しているようだ。その姿もニコライさんは凝視している。
  私はじいやと顔を見合わせ一つため息を吐き、ニコライさんの仕事の顔を信頼して話すことにした。

「……私たちは滅亡したはずの森の民です」

  席に座りそう告げ、これまでの経緯を話した。

「なんと……!なんということだ……!」

  経緯を聞いたニコライさんと、それまで沈黙を守っていた執事のマークさんわんわんと泣き始めた。

「……私たちは中立国に育ちましたし、私の両親は特に人を悪く言ったりする人ではありませんでした。ですがそんな父が『シャイアーク国王には気を付けろ』と言っていた意味が分かりました……」

  ハンカチで涙を拭ったニコライさんは真剣な眼差しで口を開いた。

「あなたたちのことは絶対に口外しません。私とマークだけの秘密です」

  その顔を見て、私は本心で言っていると確信した。
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