43 / 366
お値段以上
しおりを挟む
「こんにちは」
ブルーノさんの家に着き声をかけると、ブルーノさんは玄関まで出て来た。
「カレンちゃん!ベンジャミンさん!ヒイラギ君!町が騒がしいと思ったら君たちだったんだね!立ち話もなんだ。どうぞ中へ」
するとヒイラギが一歩前に出る。
「先日はありがとうございました。今回私たちはまた植物を集めに来ているので、私たちはこのまま採取に向かおうと思います。ですので姫様とベンジャミン様、お二人はお話を進めてください」
「そうかい?なら気を付けて行ってくるんだよ?ではカレンちゃん、ベンジャミンさん、どうぞ中へ」
家に入る前にヒイラギたちに金貨を何枚か渡し、荷車と樽や木箱を買ってそれに土や植物を入れるように伝えた。
「おじゃまします」
久しぶり……とは言っても数日ぶりのブルーノさんのお宅が懐かしく感じてしまう。
「先日はお世話になりました。スイレンにも技術を教えてくれてたくさんの道具までいただいて……」
「カレンちゃん、そんなにかしこまらないで。何も気にすることはないんだよ」
ブルーノさんは優しく微笑む。
「いやはや、ブルーノさんのおかげで我が国はとても助かっております。先程耳にしたのですが、あの跳び縄がたくさん売れたとか」
じいやも会話に入って来た。
「あぁ!真似させてもらって申し訳ない!儲けさせてもらった分から君たちにお渡ししようとお金を寄せておいたんだよ」
「いえいえいえいえ!それは受け取れませんよ!ブルーノさんが作って売った物でしょう?……今回ね、新しい娯楽の品を作って来たの」
さすがにブルーノさんたちが自分で作って売った物からお金はいただけない。
「でも先に作ったのは君だよ?本当に良いのかい?」
何度もブルーノさんに確認され、私とじいやはお金を貰うことを拒んだ。どうやらこの世界には特許というものは存在しないようなので、各々が売れる物を作って売ればいい。そして私たちはリバーシの説明を始めた。説明用に一つだけ売らずにおいたそれをテーブルの上に置く。
「これなんですけどね」
何度目か分からないルールの説明をブルーノさんにすると、ブルーノさんは歓声を上げる。
「素晴らしい!なんと楽しい物だ!」
「それでなんですけど……さっき売ったらあっという間に完売してしまって。まだ欲しい人が町にたくさんいるんです。これは差し上げますから、同じような物を作ってまた売ってください」
エヘヘと笑うと「何ということだ!」と頭を抱えてしまったブルーノさん。
「こんなに素晴らしい物をいただくことは出来ないよ!ちゃんと支払わせてもらう!大金貨何枚ほどだい?」
「いや、本当にお金はいいので……ちなみに金貨一枚で売ったんだけど私としてはそれでも高すぎると思ってるんだけど……」
またしても「何ということだ!」と頭を抱えるブルーノさんに無理やりリバーシを手渡しブルーノさんを宥め、私とじいやは採取組に合流しようとブルーノさんのお宅からお暇することにした。
町の入り口に向かうとペーターさんがいつものように座っているので、採取組の向かった方向を聞きその方角に歩き始めた。
「まさかたかがリバーシに本当に大金貨を払おうとするなんて……」
辺りに人がいないことを確認してからじいやにそう言うと苦笑いされる。
「ですから言ったでありましょう?姫様のいた世界ではそんなに安い物だったのですか?」
「うん。……でも考えてみれば世界中に普及しているものだから安いのよね……。もう少し高く売っても良かったのかしら」
「ははは!ですが姫様が決めたことですからな。次に何かを売るときは少し高めでも良いと思いますぞ」
そっか。この世界に無い物だから値段設定はある程度好きにしていいのか。私は次は何を作ろうかなと考えながらてくてくと歩いた。
数分歩くと森の近くに荷車が置いてある。この近くでみんなは採取しているんだろう。
「じゃあじいや。私たちも働きますか!」
「ですな」
私とじいやは森へと足を踏み入れた。前回は森でベーアに出会ったが、あんなことはそうそうない。はずだ。町の近くには出ないとみんな言っていたし。
ドキドキしながら森へ足を踏み入れると、たくさんの木々に日光を遮断され薄暗く、足元はふかふかの土に覆われている。植物や土の匂いを吸い込むと安心感を感じるのは、人としての本能なのか森の民として産まれた名残りなのか。そんなことを思いながら奥へと進んだ。
ブルーノさんの家に着き声をかけると、ブルーノさんは玄関まで出て来た。
「カレンちゃん!ベンジャミンさん!ヒイラギ君!町が騒がしいと思ったら君たちだったんだね!立ち話もなんだ。どうぞ中へ」
するとヒイラギが一歩前に出る。
「先日はありがとうございました。今回私たちはまた植物を集めに来ているので、私たちはこのまま採取に向かおうと思います。ですので姫様とベンジャミン様、お二人はお話を進めてください」
「そうかい?なら気を付けて行ってくるんだよ?ではカレンちゃん、ベンジャミンさん、どうぞ中へ」
家に入る前にヒイラギたちに金貨を何枚か渡し、荷車と樽や木箱を買ってそれに土や植物を入れるように伝えた。
「おじゃまします」
久しぶり……とは言っても数日ぶりのブルーノさんのお宅が懐かしく感じてしまう。
「先日はお世話になりました。スイレンにも技術を教えてくれてたくさんの道具までいただいて……」
「カレンちゃん、そんなにかしこまらないで。何も気にすることはないんだよ」
ブルーノさんは優しく微笑む。
「いやはや、ブルーノさんのおかげで我が国はとても助かっております。先程耳にしたのですが、あの跳び縄がたくさん売れたとか」
じいやも会話に入って来た。
「あぁ!真似させてもらって申し訳ない!儲けさせてもらった分から君たちにお渡ししようとお金を寄せておいたんだよ」
「いえいえいえいえ!それは受け取れませんよ!ブルーノさんが作って売った物でしょう?……今回ね、新しい娯楽の品を作って来たの」
さすがにブルーノさんたちが自分で作って売った物からお金はいただけない。
「でも先に作ったのは君だよ?本当に良いのかい?」
何度もブルーノさんに確認され、私とじいやはお金を貰うことを拒んだ。どうやらこの世界には特許というものは存在しないようなので、各々が売れる物を作って売ればいい。そして私たちはリバーシの説明を始めた。説明用に一つだけ売らずにおいたそれをテーブルの上に置く。
「これなんですけどね」
何度目か分からないルールの説明をブルーノさんにすると、ブルーノさんは歓声を上げる。
「素晴らしい!なんと楽しい物だ!」
「それでなんですけど……さっき売ったらあっという間に完売してしまって。まだ欲しい人が町にたくさんいるんです。これは差し上げますから、同じような物を作ってまた売ってください」
エヘヘと笑うと「何ということだ!」と頭を抱えてしまったブルーノさん。
「こんなに素晴らしい物をいただくことは出来ないよ!ちゃんと支払わせてもらう!大金貨何枚ほどだい?」
「いや、本当にお金はいいので……ちなみに金貨一枚で売ったんだけど私としてはそれでも高すぎると思ってるんだけど……」
またしても「何ということだ!」と頭を抱えるブルーノさんに無理やりリバーシを手渡しブルーノさんを宥め、私とじいやは採取組に合流しようとブルーノさんのお宅からお暇することにした。
町の入り口に向かうとペーターさんがいつものように座っているので、採取組の向かった方向を聞きその方角に歩き始めた。
「まさかたかがリバーシに本当に大金貨を払おうとするなんて……」
辺りに人がいないことを確認してからじいやにそう言うと苦笑いされる。
「ですから言ったでありましょう?姫様のいた世界ではそんなに安い物だったのですか?」
「うん。……でも考えてみれば世界中に普及しているものだから安いのよね……。もう少し高く売っても良かったのかしら」
「ははは!ですが姫様が決めたことですからな。次に何かを売るときは少し高めでも良いと思いますぞ」
そっか。この世界に無い物だから値段設定はある程度好きにしていいのか。私は次は何を作ろうかなと考えながらてくてくと歩いた。
数分歩くと森の近くに荷車が置いてある。この近くでみんなは採取しているんだろう。
「じゃあじいや。私たちも働きますか!」
「ですな」
私とじいやは森へと足を踏み入れた。前回は森でベーアに出会ったが、あんなことはそうそうない。はずだ。町の近くには出ないとみんな言っていたし。
ドキドキしながら森へ足を踏み入れると、たくさんの木々に日光を遮断され薄暗く、足元はふかふかの土に覆われている。植物や土の匂いを吸い込むと安心感を感じるのは、人としての本能なのか森の民として産まれた名残りなのか。そんなことを思いながら奥へと進んだ。
54
お気に入りに追加
1,993
あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~
りーさん
ファンタジー
ある日、異世界に転生したルイ。
前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。
そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。
「家族といたいからほっといてよ!」
※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる