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マッサージ指南
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畑の作業を終え少し休んでいると、水汲みに行ったじいやたちが戻って来た。
「おかえりなさい!みんな疲れたでしょう?少し休みましょう」
「私たちは大丈夫ですが、スイレン様が……」
「ぼっ!……僕も大丈夫だもん!」
私は動いたおかげでだいぶ筋肉痛が取れたけど、スイレンはまだ痛みが続いているようで荷車に座りながら涙目で強がっている。
「スイレン、ちょっとこっちに来て座って?」
笑いながらスイレンを呼ぶと「なんで?」と言いながらロボットのような歩き方でこちらに来る。そしてじいやとタデに休むように言い、スイレンを座らせ私はマッサージを開始した。
「カレン?何を……ギャー!」
どこを押しても触っても悲鳴を上げるスイレンを見てみんなが笑う。
「だから動かしたほうが早く痛みがなくなるって言ったでしょう?私はもう我慢できるほどよ?少し痛いかもしれないけど我慢して」
ギャーギャー騒ぐスイレンに笑いながら痛いであろう部分を重点的に揉みほぐしていく。
「あっー!!痛っ……気持ちいい?……痛気持ちいい……?」
段々と血行が良くなって来たのか、痛みの他にマッサージ特有の気持ち良さを感じ始めたらしい。スイレンは「あ~……」とか「う~……」とか一番風呂に浸かった老人のような声を出しているうちにウトウトとし始め眠ってしまった。
「あ、寝ちゃった」
「カレン?スイレンはどうしたの?」
ずっと見ていたお母様に声をかけられる。どうやらわざと痛い場所を押して遊んでいると思っていたようだ。するとすかさずじいやが近くに寄ってきた。
「姫様?リトールの町でもそのようなことをしておりましたよね?じいは気になって仕方がないのですが」
リトールの町では気付かないフリをして軽くスルーしたけれど、こうもグイグイと来られたら断れない。
「……これは指圧とかマッサージとかと呼ばれるもので……血の流れを良くして体をほぐしたり痛みを緩和したりするんだけど……」
「よく分かりませんので是非ともやってくだされ!」
とにかく気になるらしいじいやは背中を向けて迫ってくる。なので両肩にそっと手を置くと驚いた。
「じいや!何なのこの肩は!岩みたいじゃない!」
とても人の身体だと思えなくて、指圧でどうにかなるレベルじゃないので肩叩きをする。しばらく肩を叩いても何も変わらず、肘を使って肩甲骨の辺りのツボを押し始めるとようやく「……おぉ?」と声を漏らすじいや。
段々と悔しくなってきて、自分の筋肉痛も忘れあの手この手で凝りをほぐそうとし、じいやの腕に触って驚いた。普段腕を出すこともないし、細身の老人だと思っていたじいやはとんでもない筋肉の持ち主だった。
「じいや!痛かったら言ってね!」
私はムキになりじいやの背後から両手でじいやの手首を掴み、片膝で肩甲骨の辺りを支えにしながら持った手を背中側に引く。
「これはこれは……」
そうじいやが言葉を漏らすので交互に数回その動作をすると私の息が上がる。そこでようやく肩が少し柔らかくなったので、ひたすらツボを刺激する。
「……姫様……これは皆に広めねば……」
どうやらじいやにも効き始めたようだ。それを見ていたお母様が口を開く。
「カレン。モクレンにもしてあげたいので教えてもらってもいいかしら?」
正直、もう疲れていたけれどお母様の願いを無下に断ることも出来ず、じいやの身体を使ってお母様にレクチャーする。「ここのツボを」と言ってもいまいちピンと来ないようで、結局はお母様にまでマッサージをすることになってしまった。じいやの身体ほど力を必要とはしないけれど、私の親指は限界に近い……。
「カレン……これはすごいわ……ずっと押されていたい……」
そしていつの間にかお母様はウトウトとし始め、ついには眠ってしまった。
「これで……ゼーゼー……疲労回復に……ハーハー……なるはずよ……」
じいやはこれでもかってほど喜んでいたけれど、まだ子どもの身体の私にはなかなかの重労働で、スイレンもお母様も敷物の上で眠っていたけど、私は汚れるのも構わず地面に倒れ込み疲れて眠ってしまったのだった。
私たちが起こされたのはもう日が暮れそうな時間帯で、あまりにも気持ち良さそうに眠っているから起こせなかったとお父様に言われた。私はそれを聞いて、気持ち良さそうに眠っているのはスイレンとお母様だけよ、と疲労が回復していない身体で思ったのだった。
「おかえりなさい!みんな疲れたでしょう?少し休みましょう」
「私たちは大丈夫ですが、スイレン様が……」
「ぼっ!……僕も大丈夫だもん!」
私は動いたおかげでだいぶ筋肉痛が取れたけど、スイレンはまだ痛みが続いているようで荷車に座りながら涙目で強がっている。
「スイレン、ちょっとこっちに来て座って?」
笑いながらスイレンを呼ぶと「なんで?」と言いながらロボットのような歩き方でこちらに来る。そしてじいやとタデに休むように言い、スイレンを座らせ私はマッサージを開始した。
「カレン?何を……ギャー!」
どこを押しても触っても悲鳴を上げるスイレンを見てみんなが笑う。
「だから動かしたほうが早く痛みがなくなるって言ったでしょう?私はもう我慢できるほどよ?少し痛いかもしれないけど我慢して」
ギャーギャー騒ぐスイレンに笑いながら痛いであろう部分を重点的に揉みほぐしていく。
「あっー!!痛っ……気持ちいい?……痛気持ちいい……?」
段々と血行が良くなって来たのか、痛みの他にマッサージ特有の気持ち良さを感じ始めたらしい。スイレンは「あ~……」とか「う~……」とか一番風呂に浸かった老人のような声を出しているうちにウトウトとし始め眠ってしまった。
「あ、寝ちゃった」
「カレン?スイレンはどうしたの?」
ずっと見ていたお母様に声をかけられる。どうやらわざと痛い場所を押して遊んでいると思っていたようだ。するとすかさずじいやが近くに寄ってきた。
「姫様?リトールの町でもそのようなことをしておりましたよね?じいは気になって仕方がないのですが」
リトールの町では気付かないフリをして軽くスルーしたけれど、こうもグイグイと来られたら断れない。
「……これは指圧とかマッサージとかと呼ばれるもので……血の流れを良くして体をほぐしたり痛みを緩和したりするんだけど……」
「よく分かりませんので是非ともやってくだされ!」
とにかく気になるらしいじいやは背中を向けて迫ってくる。なので両肩にそっと手を置くと驚いた。
「じいや!何なのこの肩は!岩みたいじゃない!」
とても人の身体だと思えなくて、指圧でどうにかなるレベルじゃないので肩叩きをする。しばらく肩を叩いても何も変わらず、肘を使って肩甲骨の辺りのツボを押し始めるとようやく「……おぉ?」と声を漏らすじいや。
段々と悔しくなってきて、自分の筋肉痛も忘れあの手この手で凝りをほぐそうとし、じいやの腕に触って驚いた。普段腕を出すこともないし、細身の老人だと思っていたじいやはとんでもない筋肉の持ち主だった。
「じいや!痛かったら言ってね!」
私はムキになりじいやの背後から両手でじいやの手首を掴み、片膝で肩甲骨の辺りを支えにしながら持った手を背中側に引く。
「これはこれは……」
そうじいやが言葉を漏らすので交互に数回その動作をすると私の息が上がる。そこでようやく肩が少し柔らかくなったので、ひたすらツボを刺激する。
「……姫様……これは皆に広めねば……」
どうやらじいやにも効き始めたようだ。それを見ていたお母様が口を開く。
「カレン。モクレンにもしてあげたいので教えてもらってもいいかしら?」
正直、もう疲れていたけれどお母様の願いを無下に断ることも出来ず、じいやの身体を使ってお母様にレクチャーする。「ここのツボを」と言ってもいまいちピンと来ないようで、結局はお母様にまでマッサージをすることになってしまった。じいやの身体ほど力を必要とはしないけれど、私の親指は限界に近い……。
「カレン……これはすごいわ……ずっと押されていたい……」
そしていつの間にかお母様はウトウトとし始め、ついには眠ってしまった。
「これで……ゼーゼー……疲労回復に……ハーハー……なるはずよ……」
じいやはこれでもかってほど喜んでいたけれど、まだ子どもの身体の私にはなかなかの重労働で、スイレンもお母様も敷物の上で眠っていたけど、私は汚れるのも構わず地面に倒れ込み疲れて眠ってしまったのだった。
私たちが起こされたのはもう日が暮れそうな時間帯で、あまりにも気持ち良さそうに眠っているから起こせなかったとお父様に言われた。私はそれを聞いて、気持ち良さそうに眠っているのはスイレンとお母様だけよ、と疲労が回復していない身体で思ったのだった。
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