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おもちゃ作り

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  ブルーノさん宅の裏庭に荷車を置かせてもらい、私とじいやは雑貨屋さんのジョーイさんを訪ねた。

「今日も買い物かい?」

「はい。縄が欲しいんですけど、長ーいのありますか?」

  ジョーイさんはちょっと待ってと言い、店の奥からぐるぐる巻きにされた縄を持ってきてくれた。

「これでいいかい?」

「うん!二つ買ったらおいくら?」

  ジョーイさんが提示する値段を聞いてじいやのお財布を確認する。残りの資金にほとんど影響がないほど安いようだ。なのでそれを買いブルーノさんの家へと戻った。スイレンの勉強の邪魔をしないように工房と道具をお借りする。
  工房ではタデとヒイラギが釘を使わずに木と木を固定するやり方を教えていた。チラリとそれを見るとまさに日本伝統の匠の技で、宮大工が神社を建てる時に使うあの技だった。
  一旦縄を置き、私は手の空いているお弟子さんたちに廃材をくださいと声をかける。好きなだけ持って行っていいと言われ、程よい太さの円形の棒を何本かいただいてじいやの元へと戻る。

「じいやも木の加工はできるのよね?」

「はい。どうすれば良いですかな?」

  いただいた棒を適当な長さで切り、その中心に縄が通るくらいの穴を開けてもらう。少しするとタデたちもこちらが気になるようで、お弟子さんたちもこちらに来て同じ作業をしてもらうとあっという間に完成した。私はというと縄を適当な長さで切っていたけど、それも大人たちの手を借りてすぐに終わらせる。そして棒の穴に縄を入れてコブ留めをする。そう作っているのは跳び縄だ。

「お嬢ちゃん、これは何なんだい?」

  じいやたちも聞きたかったであろうことをタイミングよくお弟子さんに聞かれ、子どもの遊び道具だと言ってもピンと来ないようだった。この世界では道具とは生活するのに必要な物で、それで遊ぶという概念がないようだったので一度みんなを連れて裏庭に出た。

「ただの縄ですが、こうやって遊びます。そしてこれを今から売ります!」

  そう言って普通に縄跳びをすると歓声が上がる。お弟子さんたちは「森の民はこういうことをするのか!」と感動していたけど、じいやたちは私が転生した人とは言えないので愛想笑いで誤魔化していた。私たちが騒いでいるので窓からスイレンが顔を出し目を輝かせていたけれど、後でね!と言い聞かせ勉強に戻らせた。
  作り方は至極簡単なので全員で作ると、あっという間に数十本の跳び縄が完成した。ちなみに町の人は買ってくれると思う?とお弟子さんに聞くと「間違いない!」と太鼓判を押されたので私たちは跳び縄を持って広場へと向かった。

「こんにちは~!お時間のある人は寄ってらっしゃい見てらっしゃい!」

  日本で馴染みのある呼び声を叫び人を集める。すぐに「なんだなんだ?」と人は集まり私たちを取り囲む。

「これは子どもが遊ぶための物です!お子さんたちにどうですか?」

  そう言って少し私から距離をとるように伝えると縄跳びをしても大丈夫な空間ができた。そこで普通に縄跳びをしただけで歓声が上がったけれど、跳びながら走ったりすると拍手までいただいた。調子に乗って交差跳びや二重跳びをすると見ていた子どもたちは「欲しい!」と口々に言い出した。相場が分からないので、着いて来ていたブルーノさんのお弟子さんに「いくらだったら売れますかね?」と小声で聞き、その人が言う値段を提示するとあっという間に完売してしまい子どもたちはすぐに広場で縄跳びで遊び始める。

「もう無いのか?」

「大人でも出来るのか?」

  と手応えは充分に感じられたので、制作はブルーノさんにと言うと予約まで入ってしまった。この世界は娯楽がなかったのは意外だったけど、これを逆手にとってお金が稼げると確信したわ!

「うちの商品がこんなことになるなんて思いもしなかったよ」

  そこに現れたのはジョーイさん。商売上手だなぁと褒められて(?)しまった。

「そうだ!ジョーイさん、また縄を買っていい?今すぐ」

  そう言うとジョーイさんは店に戻り、またぐるぐる巻きにされた縄を持ってきてくれた。

「この縄さえあればみんなで楽しめますよ!」

  体力に自信のあるじいやとタデに縄を渡し、少し張りながら同じ速度で縄を回すように伝えると私は縄の中心に立つ。大縄跳びだ。まずは一回やってみせる。じいやたちにせーの!と号令をかけると縄を回し始めたのでピョンピョンと跳ぶ。この要領でみんなで跳ぼうと声をかけると大人も子どもも集まり、みんなで縄跳び大会になってしまった。
  ちなみに慣れるとこんなことも出来ますよ、と八の字跳びを披露するとおひねりまでいただいてしまったのだった。
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