20 / 366
ブルーノさん宅
しおりを挟む
じいやといろんな話をしているうちに空は茜色に染まってきたので、暗くなる前にブルーノさんの家へと戻ることにした。
玄関からそ~っと中を覗くと勉強会は終わったようで、スイレンたちはブルーノさんとそのお弟子さんたちと談笑をしていた。
「ただいま戻りました。改めましてお邪魔いたします」
じいやがそう言いながら中に入って行くので私もその後を着いて行く。
「あ!カレン!じいや!僕ね今日頑張ったんだよ!」
たたたっとこちらに走って来るスイレン。勉強がとても楽しかったようで満面の笑みだ。
「私たちも道具を使ったのは久しぶりだからね。感覚がようやく戻ってきたよ」
ヒイラギとタデも建築技術の感覚が戻ってきたようで、ヒーズル王国を出てから一番の笑顔を見せた。
ブルーノさんは暗くなる前に食事にしようと私たちをテーブル席へと案内する。お弟子さんたちはそれぞれ自宅に戻って行った。簡単な物しかないが、と前置きしたけど、出てきた物はブイヨンスープに固めのパン、そして生野菜や果物が出てきた。
「男の料理ですまないなぁ。昔製図や設計に没頭してた時があってね、妻に捨てられてしまったんだよ。もう五十年も前の話だ」
そうブルーノさんは笑うけど、私たちは笑っていいものか悩み無理やり話題を変えた。
「そういえば、どうしてこの町の人たちはこんなに私たちを歓迎してくれるの?」
なんとなく振った話題だったけど、ブルーノさんは笑顔から真剣な顔つきに変わった。
「よく聞いてくれたね。この町の人たちはシャイアーク国王に良い感情を持っていないんだ。君たちが先祖代々大切にしてきた森を奪い、草木も生えていないという土地に無理やり君たちを追いやっただろう?そしてここ数年は元コウセーン国の人たちに酷いことをしていると耳にしてね。人としてどうかと思っているんだ」
国境警備の人たちと同じことを言っている。元コウセーン国にもう一つの城を建てようとしているらしく、森の民が住んでいた森はどんどんと切り拓かれているとさらにブルーノさんは言った。
「だからこそ、森の民であるあなたたちが生きていて私たちは嬉しかったんだ」
森が無くなってしまったことか、それともブルーノさんの言葉に感動しているのか大人たちは涙ぐんでいる。
「みんな、私がその森に負けない森を作るから元気出して?ねぇブルーノさん?私いくらか木の苗が欲しいの」
「苗かい?だったら明日その辺の森や林からいくらでも持って行くといい。誰の物でもないからね」
どうやら土地の所有権という物がないらしく、自然の物は好きに使って良いらしい。私が目を輝かせるとじいやは明日行ってみましょうか、と提案してくれた。
たくさん話をしているうちに外は暗くなってきて、ブルーノさんは松明に火を着けると壁のトーチホルダーに挿す。温かい光が室内を照らし、私はその松明に釘付けになる。ヒーズル王国には燃やす物がないので暗くなると必然的に寝るしかないからだ。
「あれはマッツという植物の樹脂を使っているのですよ」
私があんまり見つめているからかじいやが説明をしてくれた。マッツって松かな?
「じゃあそのマッツの苗も探しましょう」
じいやの方を向いてそう言うと、眠気に負けてウトウトとしているスイレンの姿が目に入った。
「おやおや眠いのかな?では体を清めてから寝るといい」
ブルーノさんはそうスイレンに声をかけ浴室へと案内してくれる。スイレンはかなり眠そうなので私が付き添い浴室へと行った。ちなみにこの世界ではお湯に浸かる文化はないらしく、水を絞ったタオルなどで体を拭いて終わりだ。……いつかお風呂も作ってやる!そしてお風呂の素晴らしさを広めてやるわ!
「ねぇブルーノさん。この町はどうやって水の調達をしているの?」
「この近くには沼や湿原が多くてね。地面を掘れば水がすぐ湧き出すんだよ。町のあちこちに井戸があるよ。うちは裏庭にあるけどね」
水が豊富な土地なのねぇ……ん?湿原?
「……ブルーノさん、湿原の土や泥ももらってもいいのかしら?」
「何かに使えるのかい?気にせず持って行きなさい」
私とブルーノさんが話しているうちにいつの間にかスイレンは体を拭き終わり、そして立ったまま寝ている。私とブルーノさんはそれを見て笑い、寝床へと案内してもらう。
スイレンを寝かし、今日一番頑張ったのはスイレンだねと頭を撫でているうちに私も眠気に襲われそのままスイレンの隣で寝てしまった。慣れない旅に初めてに近い外の世界。私も疲れていたんだな。
玄関からそ~っと中を覗くと勉強会は終わったようで、スイレンたちはブルーノさんとそのお弟子さんたちと談笑をしていた。
「ただいま戻りました。改めましてお邪魔いたします」
じいやがそう言いながら中に入って行くので私もその後を着いて行く。
「あ!カレン!じいや!僕ね今日頑張ったんだよ!」
たたたっとこちらに走って来るスイレン。勉強がとても楽しかったようで満面の笑みだ。
「私たちも道具を使ったのは久しぶりだからね。感覚がようやく戻ってきたよ」
ヒイラギとタデも建築技術の感覚が戻ってきたようで、ヒーズル王国を出てから一番の笑顔を見せた。
ブルーノさんは暗くなる前に食事にしようと私たちをテーブル席へと案内する。お弟子さんたちはそれぞれ自宅に戻って行った。簡単な物しかないが、と前置きしたけど、出てきた物はブイヨンスープに固めのパン、そして生野菜や果物が出てきた。
「男の料理ですまないなぁ。昔製図や設計に没頭してた時があってね、妻に捨てられてしまったんだよ。もう五十年も前の話だ」
そうブルーノさんは笑うけど、私たちは笑っていいものか悩み無理やり話題を変えた。
「そういえば、どうしてこの町の人たちはこんなに私たちを歓迎してくれるの?」
なんとなく振った話題だったけど、ブルーノさんは笑顔から真剣な顔つきに変わった。
「よく聞いてくれたね。この町の人たちはシャイアーク国王に良い感情を持っていないんだ。君たちが先祖代々大切にしてきた森を奪い、草木も生えていないという土地に無理やり君たちを追いやっただろう?そしてここ数年は元コウセーン国の人たちに酷いことをしていると耳にしてね。人としてどうかと思っているんだ」
国境警備の人たちと同じことを言っている。元コウセーン国にもう一つの城を建てようとしているらしく、森の民が住んでいた森はどんどんと切り拓かれているとさらにブルーノさんは言った。
「だからこそ、森の民であるあなたたちが生きていて私たちは嬉しかったんだ」
森が無くなってしまったことか、それともブルーノさんの言葉に感動しているのか大人たちは涙ぐんでいる。
「みんな、私がその森に負けない森を作るから元気出して?ねぇブルーノさん?私いくらか木の苗が欲しいの」
「苗かい?だったら明日その辺の森や林からいくらでも持って行くといい。誰の物でもないからね」
どうやら土地の所有権という物がないらしく、自然の物は好きに使って良いらしい。私が目を輝かせるとじいやは明日行ってみましょうか、と提案してくれた。
たくさん話をしているうちに外は暗くなってきて、ブルーノさんは松明に火を着けると壁のトーチホルダーに挿す。温かい光が室内を照らし、私はその松明に釘付けになる。ヒーズル王国には燃やす物がないので暗くなると必然的に寝るしかないからだ。
「あれはマッツという植物の樹脂を使っているのですよ」
私があんまり見つめているからかじいやが説明をしてくれた。マッツって松かな?
「じゃあそのマッツの苗も探しましょう」
じいやの方を向いてそう言うと、眠気に負けてウトウトとしているスイレンの姿が目に入った。
「おやおや眠いのかな?では体を清めてから寝るといい」
ブルーノさんはそうスイレンに声をかけ浴室へと案内してくれる。スイレンはかなり眠そうなので私が付き添い浴室へと行った。ちなみにこの世界ではお湯に浸かる文化はないらしく、水を絞ったタオルなどで体を拭いて終わりだ。……いつかお風呂も作ってやる!そしてお風呂の素晴らしさを広めてやるわ!
「ねぇブルーノさん。この町はどうやって水の調達をしているの?」
「この近くには沼や湿原が多くてね。地面を掘れば水がすぐ湧き出すんだよ。町のあちこちに井戸があるよ。うちは裏庭にあるけどね」
水が豊富な土地なのねぇ……ん?湿原?
「……ブルーノさん、湿原の土や泥ももらってもいいのかしら?」
「何かに使えるのかい?気にせず持って行きなさい」
私とブルーノさんが話しているうちにいつの間にかスイレンは体を拭き終わり、そして立ったまま寝ている。私とブルーノさんはそれを見て笑い、寝床へと案内してもらう。
スイレンを寝かし、今日一番頑張ったのはスイレンだねと頭を撫でているうちに私も眠気に襲われそのままスイレンの隣で寝てしまった。慣れない旅に初めてに近い外の世界。私も疲れていたんだな。
65
お気に入りに追加
1,986
あなたにおすすめの小説
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる