15 / 366
リトールの町
しおりを挟む
リトールの町は木の柵でぐるりと囲まれていて、入り口と思われる場所には柵はなく、代わりに見張りっぽいお爺さんが椅子に腰掛けていた。その人は私たちに気付くと立ち上がりこちらを警戒しているようだった。それも当然だ。こちらはボロのような服を着ているし、そもそも服のデザインが違いすぎる。お爺さんの後ろを歩く町の人も皆こざっぱりした格好で、例えるなら男性はみんなアルプスの少女ハ○ジの登場人物「お○じ」のようなシンプルな服にズボン、女性は「ハ○ジ」のようなワンピースを着ている。
見張りのお爺さんはしばらくこちらを睨んでいたけど、私たちがある程度まで近付くと突然叫んだ。
「あんたら!森の民か!?」
酷く驚いたような叫び声にこちらは驚き歩みを止め、その叫び声に反応した町人が集まって来る。私たちヒーズル王国の人間は黒髪で純日本人風、対してリトールの町の人間は髪も目も黒かこげ茶で日本人と西洋人のハーフ……でもどちらかと言うと日本人に近い顔立ちをしている。
「あんた!生きてたのか!?早く中に入りたまえ!」
追い返されるかと思っているとまさかのウェルカムムードに驚いた。じいや以外は戸惑いながらもリトールの町へと入った。
「あぁ!占いで珍しい人が来ると出ていたんだ!前に来たのは五年も前か!生きていて良かった!」
「覚えておいででしたか」
「あんたら森の民を忘れる訳がないだろう!」
お爺さんは豪快に笑う。そして集まった町人も「生きていたんだねぇ!」とか「私のことは覚えているかい?」とか、まるで芸能人が現れたかのように騒いでいる。そしてそのままレストランのような場所に私たちは無理やり連れて行かれ、コレを食べろ、コレを飲めと熱烈歓迎されてしまった。見た目と香りからして肉を焼いた物や果実を絞ったジュースだと思ったけど、他のヒーズル国の民が空腹に苦しんでいるので私たちは手をつけることがなかなか出来ずにいた。
「どうした?食べないのか?」
周りの人たちに心配され、私が代表して答えた。
「歓迎ありがとうございます。お気使いいただき感謝します。ですが私たちの国民は皆空腹に喘いでいるんです。それを知ってるから、私たちだけ食べるのは心苦しいというか……」
「国を建ち上げたのか?そうか!じゃあ今日は食糧の調達に来たんだな?ならたくさん持って行くといい。その為には体力を付けないとな!だから食べな!」
こちらが嫌な思いをしないように、そしてとてもフランクに言うものだから断ることが出来なくなってしまった。
「……ではお言葉に甘えていただきます。みんなも頂戴しましょう」
私とスイレンが料理に手を付けると、じいやたちも渋々といった感じで料理を食べ始める。……ヤバッ!何コレめっちゃ旨っ!体は正直で、久しぶりのちゃんとした食事に食欲も手も止まらなくなる。チラリと他の人を見ると、やっぱりみんながっついて食べている。そうだよね、お腹空いてたよね。町人の人たちは優しい微笑みでこちらを見ている。
「たくさん食べてくれて嬉しいぞ。そちらの人以外はこの町は初めてだろう?案内するよ」
私たちが食べ終わると最初に出会ったお爺さんは上手く私たちを誘導する。私がお金を払うと言いかけると、お店の主人であろう人が「今日出会う旅人からお金を受け取ってはいけないと占いで言われた」と言い、頑なにお金を受け取ってはくれなかった。
レストランを出ると興味津々といった感じの子どもたちに手を振られる。ヒーズル王国にはほとんど子どももいないし、元気に動き回れる子もいないので微笑ましくてこちらも手を振り返すと「きゃー!」と照れて逃げてしまう。カワイイなぁ。
「で、どこから見たいんだ?」
お爺さんもにこやかに子どもたちを目で追っていたけど、ふと我に返ったようにこちらに振り向いた。そして私が口を開くよりも先にスイレンが口を開いた。
「あの!ごちそうさまでした!僕、ソクリョウっていうのを知りたい!」
「気にせんでいい。測量か……ふ~む……では大工の所へ向かおうか」
はい!と元気よく右手を上げ、まるで選手宣誓のようなポーズのスイレンの頭をくしゃりと撫でるとお爺さんは歩き出した。私たちも自然とその後を追う。歩きながら町中をキョロキョロと見回すと、建物はレンガで作られていたり木で作られていたり材質に統一性はないけれど、絵本に出てきそうな造りの建物ばかりで見ていてとても楽しめた。
数十メートル歩くと大工の家に着いたようで、ちょっと待っててくれとお爺さんは中へと入って行った。大工の家はレンガ造りで、私は近付いてレンガ造りの壁に見入っているとすぐにお爺さんと大工が出てきた。
「おぉ!今日は小さな天才が現れると占いに出ていたが、お嬢ちゃんのことかな?」
お爺さんと似たような年齢のお爺さん……大工さんが私たちを見て、そして私に話しかけた。
「残念だけど私ではないわ。でもちょっと聞いてもいい?このレンガの目地はどうしているの?」
「おや?その歳で目地のことを聞くなんて君もなかなか賢いと思うがね!これはモールタールという物だよ」
モールタール……モルタルのことかな?
「じゃあ原料は……セメント?」
「セメント……?あぁセーメントのことかな?そうだよ、セーメントに混ぜ物をしているんだ」
おぉ!モルタルがあればいろんなことに使えるわ!私が一人で喜びを噛みしめていると、スイレンがまた選手宣誓のようなポーズをとっている。
「僕にソクリョウを教えてください!」
「おやおや。では君が小さな天才なのかな?教えることは可能だけど、すぐに理解出来るものではないし難しいよ?」
「僕、やるって決めた!頑張ります!」
大工さんは冗談だと思っているようで笑っている。けれどとても良い人で「では中で勉強しよう」とスイレンに声をかけた。すると今まで静かだったヒイラギが口を開いた。
「失礼、大工というのは建物の建築技術を持っている人のことでしょうか?だとしたら私も私の知らない技術を学びたい」
それを聞いた大工さんは笑顔でどうぞ、とヒイラギも家に招き入れた。ここで私、じいや、タデとスイレン、ヒイラギの二手に分かれることにして、私たちは買い物に行くことにした。
見張りのお爺さんはしばらくこちらを睨んでいたけど、私たちがある程度まで近付くと突然叫んだ。
「あんたら!森の民か!?」
酷く驚いたような叫び声にこちらは驚き歩みを止め、その叫び声に反応した町人が集まって来る。私たちヒーズル王国の人間は黒髪で純日本人風、対してリトールの町の人間は髪も目も黒かこげ茶で日本人と西洋人のハーフ……でもどちらかと言うと日本人に近い顔立ちをしている。
「あんた!生きてたのか!?早く中に入りたまえ!」
追い返されるかと思っているとまさかのウェルカムムードに驚いた。じいや以外は戸惑いながらもリトールの町へと入った。
「あぁ!占いで珍しい人が来ると出ていたんだ!前に来たのは五年も前か!生きていて良かった!」
「覚えておいででしたか」
「あんたら森の民を忘れる訳がないだろう!」
お爺さんは豪快に笑う。そして集まった町人も「生きていたんだねぇ!」とか「私のことは覚えているかい?」とか、まるで芸能人が現れたかのように騒いでいる。そしてそのままレストランのような場所に私たちは無理やり連れて行かれ、コレを食べろ、コレを飲めと熱烈歓迎されてしまった。見た目と香りからして肉を焼いた物や果実を絞ったジュースだと思ったけど、他のヒーズル国の民が空腹に苦しんでいるので私たちは手をつけることがなかなか出来ずにいた。
「どうした?食べないのか?」
周りの人たちに心配され、私が代表して答えた。
「歓迎ありがとうございます。お気使いいただき感謝します。ですが私たちの国民は皆空腹に喘いでいるんです。それを知ってるから、私たちだけ食べるのは心苦しいというか……」
「国を建ち上げたのか?そうか!じゃあ今日は食糧の調達に来たんだな?ならたくさん持って行くといい。その為には体力を付けないとな!だから食べな!」
こちらが嫌な思いをしないように、そしてとてもフランクに言うものだから断ることが出来なくなってしまった。
「……ではお言葉に甘えていただきます。みんなも頂戴しましょう」
私とスイレンが料理に手を付けると、じいやたちも渋々といった感じで料理を食べ始める。……ヤバッ!何コレめっちゃ旨っ!体は正直で、久しぶりのちゃんとした食事に食欲も手も止まらなくなる。チラリと他の人を見ると、やっぱりみんながっついて食べている。そうだよね、お腹空いてたよね。町人の人たちは優しい微笑みでこちらを見ている。
「たくさん食べてくれて嬉しいぞ。そちらの人以外はこの町は初めてだろう?案内するよ」
私たちが食べ終わると最初に出会ったお爺さんは上手く私たちを誘導する。私がお金を払うと言いかけると、お店の主人であろう人が「今日出会う旅人からお金を受け取ってはいけないと占いで言われた」と言い、頑なにお金を受け取ってはくれなかった。
レストランを出ると興味津々といった感じの子どもたちに手を振られる。ヒーズル王国にはほとんど子どももいないし、元気に動き回れる子もいないので微笑ましくてこちらも手を振り返すと「きゃー!」と照れて逃げてしまう。カワイイなぁ。
「で、どこから見たいんだ?」
お爺さんもにこやかに子どもたちを目で追っていたけど、ふと我に返ったようにこちらに振り向いた。そして私が口を開くよりも先にスイレンが口を開いた。
「あの!ごちそうさまでした!僕、ソクリョウっていうのを知りたい!」
「気にせんでいい。測量か……ふ~む……では大工の所へ向かおうか」
はい!と元気よく右手を上げ、まるで選手宣誓のようなポーズのスイレンの頭をくしゃりと撫でるとお爺さんは歩き出した。私たちも自然とその後を追う。歩きながら町中をキョロキョロと見回すと、建物はレンガで作られていたり木で作られていたり材質に統一性はないけれど、絵本に出てきそうな造りの建物ばかりで見ていてとても楽しめた。
数十メートル歩くと大工の家に着いたようで、ちょっと待っててくれとお爺さんは中へと入って行った。大工の家はレンガ造りで、私は近付いてレンガ造りの壁に見入っているとすぐにお爺さんと大工が出てきた。
「おぉ!今日は小さな天才が現れると占いに出ていたが、お嬢ちゃんのことかな?」
お爺さんと似たような年齢のお爺さん……大工さんが私たちを見て、そして私に話しかけた。
「残念だけど私ではないわ。でもちょっと聞いてもいい?このレンガの目地はどうしているの?」
「おや?その歳で目地のことを聞くなんて君もなかなか賢いと思うがね!これはモールタールという物だよ」
モールタール……モルタルのことかな?
「じゃあ原料は……セメント?」
「セメント……?あぁセーメントのことかな?そうだよ、セーメントに混ぜ物をしているんだ」
おぉ!モルタルがあればいろんなことに使えるわ!私が一人で喜びを噛みしめていると、スイレンがまた選手宣誓のようなポーズをとっている。
「僕にソクリョウを教えてください!」
「おやおや。では君が小さな天才なのかな?教えることは可能だけど、すぐに理解出来るものではないし難しいよ?」
「僕、やるって決めた!頑張ります!」
大工さんは冗談だと思っているようで笑っている。けれどとても良い人で「では中で勉強しよう」とスイレンに声をかけた。すると今まで静かだったヒイラギが口を開いた。
「失礼、大工というのは建物の建築技術を持っている人のことでしょうか?だとしたら私も私の知らない技術を学びたい」
それを聞いた大工さんは笑顔でどうぞ、とヒイラギも家に招き入れた。ここで私、じいや、タデとスイレン、ヒイラギの二手に分かれることにして、私たちは買い物に行くことにした。
32
お気に入りに追加
1,950
あなたにおすすめの小説
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
料理がしたいので、騎士団の任命を受けます!
ハルノ
ファンタジー
過労死した主人公が、異世界に飛ばされてしまいました
。ここは天国か、地獄か。メイド長・ジェミニが丁寧にもてなしてくれたけれども、どうも味覚に違いがあるようです。異世界に飛ばされたとわかり、屋敷の主、領主の元でこの世界のマナーを学びます。
令嬢はお菓子作りを趣味とすると知り、キッチンを借りた女性。元々好きだった料理のスキルを活用して、ジェミニも領主も、料理のおいしさに目覚めました。
そのスキルを生かしたいと、いろいろなことがあってから騎士団の料理係に就職。
ひとり暮らしではなかなか作ることのなかった料理も、大人数の料理を作ることと、満足そうに食べる青年たちの姿に生きがいを感じる日々を送る話。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」を使用しています。
転生王女は現代知識で無双する
紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。
突然異世界に転生してしまった。
定番になった異世界転生のお話。
仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。
見た目は子供、頭脳は大人。
現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。
魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。
伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。
読んでくれる皆さまに心から感謝です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる