14 / 366
久しぶりのシャイアーク国
しおりを挟む
国境へと到着したのですんなり入れるかと思いきや。頑丈な石造りの外壁に門……というか扉は固く閉ざされている。こちら側からは開けられないように作られているようだ。
「……どうやって入るのコレ?」
ずーっと無言が続いていたので、誰に話しかける訳でもなく独りごちた。スイレンは疲れて寝ているし、タデは相変わらずだし、ヒイラギもタデに気を使っているのか無言で通している。そんな中じいやが動いた。
「おーい!誰かおらぬのか!」
門は木で出来ていたのでじいやは叫びながら門を叩いている。挙げ句の果てに門の扉と扉の隙間にまで顔を近付け「誰かー!」と叫んでいる。
するとガチャン!っと鍵が開くような音がして門は少しずつ開き始めた。扉が全部開くと、そこには鎧を着た屈強そうなおじさんが立っていた。その後ろには同じく鎧を着た警備隊風の男性が数人立っている。筋骨隆々な大男であるそのおじさんは腕組みをしたまま仁王立ちし、こちらをギロリと睨みつける。私とタデとヒイラギが身構えると……その人はポロポロと涙をこぼし始め私たちは困惑した。
「先生~!」
「誰かと思ったらジェイソンではないか!?さらに大きくなりおって!」
呆気に取られた私たちはポカーンと見ていたけど、どうやら昔じいやが弓や槍の使い方を教えた生徒だったそうで。
「うぅ……占いで『恩人に会える』と出ていたが、まさか先生とは……私はもう亡くなっているとばかり……シャイアーク国王もそう思っておりました……」
おいおいと泣く大男ことジェイソンさん。どうやらこの世界では占いは一般的なよう……って日本人も朝のニュース番組で占いを見たりするか。でもそれ以上に占いに頼っている印象だ。
「分かった分かった。私はこの通り元気だ。して、お主ほどの男がなぜ国境警備などしておる?」
どうやらジェイソンさんは将軍にまで登りつめたほどの技量を持っているらしい。そしてシャイアーク国の王と共に元コウセーン国へと行ったけど、元コウセーン国民にあまりにも酷い仕打ちをするのを見ていられず口を出してしまったのだとか。それに怒ったシャイアーク国王は将軍職を解き、この誰も来ないであろう国境警備隊として任命したらしい。
「元コウセーン国王も、反発する民もみんな牢獄へと入れ、動ける者は奴隷のように扱っているのです……」
「なんと……」
「逆にここへ任命されて良かった。また先生に会えたのだから。私の他にもここや他の国境警備にあたっている者は皆、シャイアーク国王への不信感でいっぱいです。ですので……先生たちのことは報告しません!自由にお通りください!」
「え!?ホントにいいの!?」
ラッキーだけど本当に大丈夫なのかと心配になり声をかけた。
「君は?まぁいい。残酷なことに国王は先生たちがそちらの土地で生きていけないと分かっていて追いやったのだ。そしてもう全員死亡していると思っている。まさか生き抜いていたとはさすが先生だ!私は王よりも先生のことを信頼している。部下たちもだ。安心したまえ!」
握りこぶしを自分の胸に打ち付けジェイソンさんはそう言った。その後ろに控えていた部下の人たちも同じように握りこぶしを胸に「新しい風が吹くと占いで出た」とか「人に親切にするようにと占われた」と口々に言っている。
「ジェイソンよ、助かる。では通らせてもらって良いかな?」
「「「「はい!」」」」
ジェイソンさんたちは左右に別れ、敬礼をしながら私たちを見送ってくれた。私たちはお礼を言いながら国境を越え、シャイアーク国へと足を踏み入れた。
私にとっては初めて見るシャイアーク国。どうやら砂漠からの砂が飛んで来るようで、サラサラのベージュの砂が薄く大地を覆っている。ヒーズル王国とはまた違う色の大地にはまばらに草木が生えている。街道を進む程に草木は増え、土の色も黒っぽくなってきた。そして空気はヒーズル王国よりも湿気を含み日本の空気を思い出させる。
「じいや、あとどれくらいかかりそう?」
「もうすぐでございますよ」
「分かったわ。ところで……前に来た時は国境にどうやって入ったの?」
「……賄賂ですな」
タデたちに聞こえないように小声でじいやは言った。驚いてじいやの顔を見ると「しぃー」と秘密にするように合図された。じいやの老後の資金が……!もう何も言えなくなってしまった私はおとなしく景色を見ているとスイレンが目覚めた。もうシャイアーク国だと言うとヒーズル王国とは違う景色を見て興奮はしているけど、タデが怖くて私に対して指をさしたりジェスチャーで興奮を表していた。
ゴトゴトと荷車に乗り小さな坂を登ると森と畑がたくさん見えてきた。そしてその中に小さな町が見えた。
「見えましたぞ。あれがリトールの町でございます」
村よりは少しばかり大きな印象を持ったリトールの町に私たちはようやく到着した。
「……どうやって入るのコレ?」
ずーっと無言が続いていたので、誰に話しかける訳でもなく独りごちた。スイレンは疲れて寝ているし、タデは相変わらずだし、ヒイラギもタデに気を使っているのか無言で通している。そんな中じいやが動いた。
「おーい!誰かおらぬのか!」
門は木で出来ていたのでじいやは叫びながら門を叩いている。挙げ句の果てに門の扉と扉の隙間にまで顔を近付け「誰かー!」と叫んでいる。
するとガチャン!っと鍵が開くような音がして門は少しずつ開き始めた。扉が全部開くと、そこには鎧を着た屈強そうなおじさんが立っていた。その後ろには同じく鎧を着た警備隊風の男性が数人立っている。筋骨隆々な大男であるそのおじさんは腕組みをしたまま仁王立ちし、こちらをギロリと睨みつける。私とタデとヒイラギが身構えると……その人はポロポロと涙をこぼし始め私たちは困惑した。
「先生~!」
「誰かと思ったらジェイソンではないか!?さらに大きくなりおって!」
呆気に取られた私たちはポカーンと見ていたけど、どうやら昔じいやが弓や槍の使い方を教えた生徒だったそうで。
「うぅ……占いで『恩人に会える』と出ていたが、まさか先生とは……私はもう亡くなっているとばかり……シャイアーク国王もそう思っておりました……」
おいおいと泣く大男ことジェイソンさん。どうやらこの世界では占いは一般的なよう……って日本人も朝のニュース番組で占いを見たりするか。でもそれ以上に占いに頼っている印象だ。
「分かった分かった。私はこの通り元気だ。して、お主ほどの男がなぜ国境警備などしておる?」
どうやらジェイソンさんは将軍にまで登りつめたほどの技量を持っているらしい。そしてシャイアーク国の王と共に元コウセーン国へと行ったけど、元コウセーン国民にあまりにも酷い仕打ちをするのを見ていられず口を出してしまったのだとか。それに怒ったシャイアーク国王は将軍職を解き、この誰も来ないであろう国境警備隊として任命したらしい。
「元コウセーン国王も、反発する民もみんな牢獄へと入れ、動ける者は奴隷のように扱っているのです……」
「なんと……」
「逆にここへ任命されて良かった。また先生に会えたのだから。私の他にもここや他の国境警備にあたっている者は皆、シャイアーク国王への不信感でいっぱいです。ですので……先生たちのことは報告しません!自由にお通りください!」
「え!?ホントにいいの!?」
ラッキーだけど本当に大丈夫なのかと心配になり声をかけた。
「君は?まぁいい。残酷なことに国王は先生たちがそちらの土地で生きていけないと分かっていて追いやったのだ。そしてもう全員死亡していると思っている。まさか生き抜いていたとはさすが先生だ!私は王よりも先生のことを信頼している。部下たちもだ。安心したまえ!」
握りこぶしを自分の胸に打ち付けジェイソンさんはそう言った。その後ろに控えていた部下の人たちも同じように握りこぶしを胸に「新しい風が吹くと占いで出た」とか「人に親切にするようにと占われた」と口々に言っている。
「ジェイソンよ、助かる。では通らせてもらって良いかな?」
「「「「はい!」」」」
ジェイソンさんたちは左右に別れ、敬礼をしながら私たちを見送ってくれた。私たちはお礼を言いながら国境を越え、シャイアーク国へと足を踏み入れた。
私にとっては初めて見るシャイアーク国。どうやら砂漠からの砂が飛んで来るようで、サラサラのベージュの砂が薄く大地を覆っている。ヒーズル王国とはまた違う色の大地にはまばらに草木が生えている。街道を進む程に草木は増え、土の色も黒っぽくなってきた。そして空気はヒーズル王国よりも湿気を含み日本の空気を思い出させる。
「じいや、あとどれくらいかかりそう?」
「もうすぐでございますよ」
「分かったわ。ところで……前に来た時は国境にどうやって入ったの?」
「……賄賂ですな」
タデたちに聞こえないように小声でじいやは言った。驚いてじいやの顔を見ると「しぃー」と秘密にするように合図された。じいやの老後の資金が……!もう何も言えなくなってしまった私はおとなしく景色を見ているとスイレンが目覚めた。もうシャイアーク国だと言うとヒーズル王国とは違う景色を見て興奮はしているけど、タデが怖くて私に対して指をさしたりジェスチャーで興奮を表していた。
ゴトゴトと荷車に乗り小さな坂を登ると森と畑がたくさん見えてきた。そしてその中に小さな町が見えた。
「見えましたぞ。あれがリトールの町でございます」
村よりは少しばかり大きな印象を持ったリトールの町に私たちはようやく到着した。
32
お気に入りに追加
1,957
あなたにおすすめの小説
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
異世界で家族と新たな生活?!〜ドラゴンの無敵執事も加わり、ニューライフを楽しみます〜
藤*鳳
ファンタジー
楽しく親子4人で生活していたある日、交通事故にあい命を落とした...はずなんだけど...??
神様の御好意により新たな世界で新たな人生を歩むことに!!!
冒険あり、魔法あり、魔物や獣人、エルフ、ドワーフなどの多種多様な人達がいる世界で親子4人とその親子を護り生活する世界最強のドラゴン達とのお話です。
異世界道中ゆめうつつ! 転生したら虚弱令嬢でした。チート能力なしでたのしい健康スローライフ!
マーニー
ファンタジー
※ほのぼの日常系です
病弱で閉鎖的な生活を送る、伯爵令嬢の美少女ニコル(10歳)。対して、亡くなった両親が残した借金地獄から抜け出すため、忙殺状態の限界社会人サラ(22歳)。
ある日、同日同時刻に、体力の限界で息を引き取った2人だったが、なんとサラはニコルの体に転生していたのだった。
「こういうときって、神様のチート能力とかあるんじゃないのぉ?涙」
異世界転生お約束の神様登場も特別スキルもなく、ただただ、不健康でひ弱な美少女に転生してしまったサラ。
「せっかく忙殺の日々から解放されたんだから…楽しむしかない。ぜっっったいにスローライフを満喫する!」
―――異世界と健康への不安が募りつつ
憧れのスローライフ実現のためまずは健康体になることを決意したが、果たしてどうなるのか?
魔法に魔物、お貴族様。
夢と現実の狭間のような日々の中で、
転生者サラが自身の夢を叶えるために
新ニコルとして我が道をつきすすむ!
『目指せ健康体!美味しいご飯と楽しい仲間たちと夢のスローライフを叶えていくお話』
※はじめは健康生活。そのうちお料理したり、旅に出たりもします。日常ほのぼの系です。
※非現実色強めな内容です。
※溺愛親バカと、あたおか要素があるのでご注意です。
今のは勇者スキルではない、村人スキルだ ~複合スキルが最強すぎるが、真の勇者スキルはもっと強いに違いない(思いこみ)~
ねぎさんしょ
ファンタジー
【完結保証】15万字足らず、約60話にて第一部完結します!
勇者の血筋に生まれながらにしてジョブ適性が『村人』であるレジードは、生家を追い出されたのち、自力で勇者になるべく修行を重ねた。努力が実らないまま生涯の幕を閉じるも、転生により『勇者』の適性を得る。
しかしレジードの勇者適性は、自分のステータス画面にそう表示されているだけ。
他者から確認すると相変わらず村人であり、所持しているはずの勇者スキルすら発動しないことがわかる。
自分は勇者なのか、そうでないのか。
ふしぎに思うレジードだったが、そもそも彼は転生前から汎用アビリティ『複合技能』の極致にまで熟達しており、あらゆるジョブのスキルを村人スキルで再現することができた。
圧倒的な火力、隙のない肉体強化、便利な生活サポート等々。
「勇者こそ至高、勇者スキルこそ最強。俺はまだまだ、生家<イルケシス>に及ばない」
そう思いこんでいるのはレジード当人のみ。
転生後に出会った騎士の少女。
転生後に再会したエルフの弟子。
楽しい仲間に囲まれて、レジードは自分自身の『勇者』を追い求めてゆく。
勇者スキルを使うための村人スキルで、最強を証明しながら……
※カクヨム様、小説家になろう様でも連載予定です。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!
コスモクイーンハート
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生の合田結菜はある高難度ダンジョンで一人放置されていた。そんな結菜を冒険者育成クラン《炎樹の森》の冒険者達が保護してくれる。ダンジョンの大きな狼さんをもふもふしたり、テイムしちゃったり……。
何気にチートな結菜だが、本人は普通の生活がしたかった。
本人の望み通りしばらくは普通の生活をすることができたが……。勇者に担がれて早朝に誘拐された日を境にそんな生活も終わりを告げる。
何で⁉私を誘拐してもいいことないよ⁉
何だかんだ、半分無意識にチートっぷりを炸裂しながらも己の普通の生活の(自分が自由に行動できるようにする)ために今日も元気に異世界を爆走します‼
※現代の知識活かしちゃいます‼料理と物作りで改革します‼←地球と比べてむっちゃ不便だから。
#更新は不定期になりそう
#一話だいたい2000字をめどにして書いています(長くも短くもなるかも……)
#感想お待ちしてます‼どしどしカモン‼(誹謗中傷はNGだよ?)
#頑張るので、暖かく見守ってください笑
#誤字脱字があれば指摘お願いします!
#いいなと思ったらお気に入り登録してくれると幸いです(〃∇〃)
#チートがずっとあるわけではないです。(何気なく時たまありますが……。)普通にファンタジーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる