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ヒーズル王国
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建物から外に出ると久しぶりに感じる日の光を眩しく感じる。一瞬目が眩み目を瞑ると、お父様に肩を抱かれた。そしてゆっくりと目を開ける。
「カレン様!」「スイレン様!」「大きくなられて……」
そんな声が聞こえ声の主を探そうと思うも、目の前に既に数百人の国民がいた。いたけれど、どの人も痩せこけボロをまとい、明らかに健康そうな人はいなかった。子供の数も極端に少ない。その国民の後ろにはバラックのような建物が点々とし、あまりの光景に私は涙を流してしまった。それを拭うことなく空を見上げれば雲一つない真っ青な空、そして周囲を見回せば日本ではほとんど見ることのない赤い土の大地には草木一本も生えずどこまでも広がっていた。
「……どうして……どうして私とスイレンはぬくぬくと何も困らずに生きて、どうしてみんなはこんなに痩せているの!?」
気付いてしまった。私とスイレンは痩せ型ではあるけど標準体型。よく見ればお父様もお母様もじいやもかなり痩せていた。私が声を荒らげると一人の老婆が一歩踏み出した。
「泣かないでくだされ。大きくなられましたなカレン様、スイレン様。お二人の未来を占いましたおババでございます」
占いおババさんは私たちに一礼をし話し始めた。
「どうか泣かずに怒らずに。私たちは今この時のためにお二人を大事に大事に守ってまいりました。これは私たち民の真意でございます」
「……食べ物も衣服も私たちにくれたのね……?あなたたちは食べ物はどうしているの……?動物は……?」
「……私とモクレン様とで狩り尽くしました。目に見える範囲に生えていた少しばかりの草は全て食べ尽くしました。エサがなければ動物も参りません。そもそもまだいるのかどうか……」
じいやの言葉にまた涙がこぼれた。どれだけひもじい思いをしてこの人たちは暮らしているんだろう。
「私は……ヒック……ただの小さな子供で……えぐっ……みんなを救う力はない……!……グスッ……けれどみんなにはない知恵がある……だからその知恵を……グスン……みんなの為に使う!今日明日に幸せになれる訳じゃない……一年先、二年先、そしてみんなの子孫のために……この国を発展させよう……だからみんな……力を貸して……」
泣きながらではあるけど、思ったことを口にした。貧乏ほど辛いものはないんだ。私とスイレンの為にこんな生活を強いられてきたみんなの為に、私は恩返しをしなければならない。
「……じいや、国民の数は?」
「はい。こちらに来た時は三百人はいたかと思いますが、今は二百人いるかどうか……」
あぁ……きっと病死だったり餓死したりしたんだろう……。前世の私と一緒だ。あんなに苦しい死に方はない……。もう餓死者は出したくない……。
「……今の食糧の調達方法は?」
「はい。見様見真似で畑を作ってみましたが……上手くいかず……」
元々森の恵みをいただいて生活していた森の民は一般的な暮らしが分からないらしく、ましてやこの何も生えていない土地に来て相当苦労したのだろう。畑を見せてもらうと、バラックの陰に小さな畑が数個あった。
「栄養があると言われるトウモロコーンという野菜でございます。ですが年々実を付けなくなってまいりました」
近付いてその野菜を確認すると、トウモロコーンは間違いなくトウモロコシだった。けれど背丈は大人の腰ほどの高さしかなく、土の表面は見るからに乾き、土自体にも栄養はなさそうで茎や葉はどう見ても乾燥している。
「……水は?みんな水はどうしているの?」
乾燥から連想した、生きる為に必要な水のことについて聞いた。
「ここから西へ数キロほど歩きますと川がございます。動ける者は毎日水を汲みに行っております」
「汲みに?川は洪水になったり氾濫しないの?雨は?」
「そのようなことはありませんでした。一定の水量を保ち雄大に流れております。雨は降らないこともないですが、森に比べると少ないですな」
やること、考えることが多すぎて頭が追い付かなくなってきた頃、ずっと静かだったスイレンが口を開いた。
「……僕……なんとなくだけどカレンの考えていることが分かる。あと……ここが緑でいっぱいになる未来が見えた……気がする……。カレン、僕も頑張るからみんなでここを変えよう」
国民たちは口々に「預言だ!」と騒ぐ。今は村人にしか見えないこの人たちを立派な王国民にする為に、私とスイレンは家に戻り作戦会議を開くことにした。
「みんな!もう少し我慢して!絶対に私たちが幸せにしてみせる!」
子供の戯れ言だと本気にしないだろうと思ったけど、国民たちは涙を流して喜んでくれた。今この時から、私とスイレンは救世主になろうと誓い合った。
「カレン様!」「スイレン様!」「大きくなられて……」
そんな声が聞こえ声の主を探そうと思うも、目の前に既に数百人の国民がいた。いたけれど、どの人も痩せこけボロをまとい、明らかに健康そうな人はいなかった。子供の数も極端に少ない。その国民の後ろにはバラックのような建物が点々とし、あまりの光景に私は涙を流してしまった。それを拭うことなく空を見上げれば雲一つない真っ青な空、そして周囲を見回せば日本ではほとんど見ることのない赤い土の大地には草木一本も生えずどこまでも広がっていた。
「……どうして……どうして私とスイレンはぬくぬくと何も困らずに生きて、どうしてみんなはこんなに痩せているの!?」
気付いてしまった。私とスイレンは痩せ型ではあるけど標準体型。よく見ればお父様もお母様もじいやもかなり痩せていた。私が声を荒らげると一人の老婆が一歩踏み出した。
「泣かないでくだされ。大きくなられましたなカレン様、スイレン様。お二人の未来を占いましたおババでございます」
占いおババさんは私たちに一礼をし話し始めた。
「どうか泣かずに怒らずに。私たちは今この時のためにお二人を大事に大事に守ってまいりました。これは私たち民の真意でございます」
「……食べ物も衣服も私たちにくれたのね……?あなたたちは食べ物はどうしているの……?動物は……?」
「……私とモクレン様とで狩り尽くしました。目に見える範囲に生えていた少しばかりの草は全て食べ尽くしました。エサがなければ動物も参りません。そもそもまだいるのかどうか……」
じいやの言葉にまた涙がこぼれた。どれだけひもじい思いをしてこの人たちは暮らしているんだろう。
「私は……ヒック……ただの小さな子供で……えぐっ……みんなを救う力はない……!……グスッ……けれどみんなにはない知恵がある……だからその知恵を……グスン……みんなの為に使う!今日明日に幸せになれる訳じゃない……一年先、二年先、そしてみんなの子孫のために……この国を発展させよう……だからみんな……力を貸して……」
泣きながらではあるけど、思ったことを口にした。貧乏ほど辛いものはないんだ。私とスイレンの為にこんな生活を強いられてきたみんなの為に、私は恩返しをしなければならない。
「……じいや、国民の数は?」
「はい。こちらに来た時は三百人はいたかと思いますが、今は二百人いるかどうか……」
あぁ……きっと病死だったり餓死したりしたんだろう……。前世の私と一緒だ。あんなに苦しい死に方はない……。もう餓死者は出したくない……。
「……今の食糧の調達方法は?」
「はい。見様見真似で畑を作ってみましたが……上手くいかず……」
元々森の恵みをいただいて生活していた森の民は一般的な暮らしが分からないらしく、ましてやこの何も生えていない土地に来て相当苦労したのだろう。畑を見せてもらうと、バラックの陰に小さな畑が数個あった。
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近付いてその野菜を確認すると、トウモロコーンは間違いなくトウモロコシだった。けれど背丈は大人の腰ほどの高さしかなく、土の表面は見るからに乾き、土自体にも栄養はなさそうで茎や葉はどう見ても乾燥している。
「……水は?みんな水はどうしているの?」
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「ここから西へ数キロほど歩きますと川がございます。動ける者は毎日水を汲みに行っております」
「汲みに?川は洪水になったり氾濫しないの?雨は?」
「そのようなことはありませんでした。一定の水量を保ち雄大に流れております。雨は降らないこともないですが、森に比べると少ないですな」
やること、考えることが多すぎて頭が追い付かなくなってきた頃、ずっと静かだったスイレンが口を開いた。
「……僕……なんとなくだけどカレンの考えていることが分かる。あと……ここが緑でいっぱいになる未来が見えた……気がする……。カレン、僕も頑張るからみんなでここを変えよう」
国民たちは口々に「預言だ!」と騒ぐ。今は村人にしか見えないこの人たちを立派な王国民にする為に、私とスイレンは家に戻り作戦会議を開くことにした。
「みんな!もう少し我慢して!絶対に私たちが幸せにしてみせる!」
子供の戯れ言だと本気にしないだろうと思ったけど、国民たちは涙を流して喜んでくれた。今この時から、私とスイレンは救世主になろうと誓い合った。
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