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七章
55話「女について」
しおりを挟む「…智明、ちょっと話せる?」
旅行以来、簡単な連絡以外一切話していなかった智明へ声をかけると、下唇をグッと噛んでから一度大きく頷いてくれた。
「…ここで話して良い話じゃないから…二人きりになれる場所に行きたいんだけど…大丈夫?」
と言うと、大きく目を見開いてから「分かった」と答える智明。
私たち二人が向かった場所は4月頃、6人で行ったカラオケボックスだった。
コーラを一口飲み、気まずそうに俯いている智明へ
「話っていうのは、私たち二人の関係について…なんだけど。」
と言うと、顔を上げ、私の瞳をじっと見つめた。
「…これからどうするか…決めるのか?今。」
不安そうにそう聞いてくる智明が…なんか、幼い子供に見えた。
長い睫毛が、切れ長の瞳が…骨格が昔から変わらずずっと綺麗で。
やはり好きだな、と…確信してしまった。
…手が震える。
拒絶されたらどうしよう、と不安に襲われて…胸が、グッと締め付けられる。
「…智明が」
「…うん。」
「……ちゃんと、自分の全部話してくれないと…付き合いたくない。」
「…俺の、全部?」
震える智明の声。
「智明にとっても、私と…私っていう存在と、付き合って?これから先、未来を考えるなら…考えてくれるなら…しっかりお互いを知っておきたいの。」
沈黙。
アーティストの楽曲紹介が虚しく響いた。
「…話したら、朱里は、お前と俺は…。」
「分かってる、多分晶はそれを分かってて…智明と私が付き合ったとしても、短い間になるかもしれないって…だから、私に普通に生きろって強いてたのか、って。」
「…晶がそんな事言ってたのか。」
「……私、智明の事好きなの、誰よりも好き、愛してるよ?智明以上に好きな人なんて現れるわけ無いって思ってるの…重いけど…学生風情が何言ってんだって思われるかもしれないけど…好きなの。」
頭の中の謎の声が「誰がそんな事思うんだ」と言ってくる。
ボロボロと流れる涙。
智明は私の頬を拭ってくれた。
「…話して、理解し合ってさ、その時にやっと付き合う…ってのは…少し軽すぎる気がする。」
智明の言葉が、理解出来なくて。
「…三年に上がったら…俺、お前に全部言うよ。」
「……なんで今じゃないの?」
「…今はまだ覚悟できてない、昔から俺の事を色々話してくれる…存在がいるんだけどさ、そいつに相談して…それから、俺の中で折り合いついてから…またこうやって二人で話し合おう、いい?」
智明の纏う雰囲気が変わった
まるで別人みたいで
龍馬君、みたいで
「…わかった」
「……でさ、破っても良いし、絶対に守らなきゃ、って…責任感じなくて良いから。」
「……?」
「卒業したら…一緒に、部屋探そう?」
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