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六章
51話 ただ帰る家が変わっただけ」
しおりを挟む明日、学校が始まる。
その前にどうかうちの計画を進めようと彩ちゃんと明人の家へ遊びに行くことにした。
暖かく出迎えてくれる彩ちゃん。
リビングの机の上には懸命に課題をしていた痕跡が。
可愛い。
「彩ちゃん、課題進んだ?」
「進んだよ!ほら見て!あとここ書けば終わる!」
「…邪魔しちゃった?」
「いや?大丈夫…ほら!終わった!」
文字で埋め尽くされたノートを広げて微笑んでる彩ちゃん。
…エゴ。
旅行はただのエゴだった。
彩ちゃんと過ごしたい…うちのエゴ。
せめて高校を卒業するまでは私でいたいというただのエゴだった。
朱里はそんなうちを、私を笑った。
「協力するよ」と微笑んでくれた。
あの時…彩ちゃんに「君を好きになっていいか」と変な事を口走ったあの日から、ずっと悩んでる。
彩ちゃんはあの時「あはは!いいよー!」と軽く流してくれた。
その言葉すら素敵に思えて、大好きになってしまった。
私は意外とちょろい人間なんだな、なんて笑って…笑えてきて、嬉しかった。
彩ちゃんが注いでくれたジュース。
味のしないオレンジジュースを一口飲み、コーヒーにガムシロップを3つ、キャラメルソースをスプーン3杯入れている彩ちゃんをボーッと見つめる。
「……ドン引きでしょ。」
「ふふ…いや?うちもそれくらい入れて飲むよ。」
「ほんと?仲間だね、糖尿病予備軍の!」
「……それくらい入れへんかったら…味せえへんもんな…うちら能力者は。」
「……うん。」
甘過ぎるコーヒーを飲んでいる彩ちゃん。
オレンジジュースに入った氷がカラリと音を立てた。
静まり返る室内。
「…彩ちゃん、あのさ。」
ふと、顔を上げる。
思いを伝えようかと。
デートに誘おうか、と。
その時目に入った漫画本。
見覚えのある、肌色の、黒髪の青年が描かれた、漫画本。
「……彩ちゃん?」
「?」
「あの……」
漫画、何。と言いかけてやめた。
もし彩ちゃんが読んで…明人の事を思い出したらどうする。
それを明人が…知ったら。
「……あー、あの本?なんかポストに入ってたんだよね……嫌がらせかな?」
……ざわりと、鳥肌が立った。
そんなことをするのは…私の、人生を壊す存在は。
私に……家一筋で生きろと強いる存在は。
……あれしか。
私の家しか……あり得ない。
「……彩ちゃん、あの本うちが預かってもいい?」
「良いよ、心当たりあるの?」
「ある。」
「誰?」
「聞かないで。」
「でも……」
「いいから!!!!」
「その本のモデル明人でしょ?」
犯罪者という単語。
届かなかった連絡。
母性が湧いたのか、なんて単語が耳を突き刺して、僕の脳みそをかき混ぜてる。
智明の声。
強く抱き締められる。いい匂いだな、なんてバカなこと思った。
おじさん。僕に似すぎてるおじさん。
お父さんとお母さんが僕を一人暮らしさせてくれた理由。
智明が号泣してる。謝ってる。
なんで謝るのさ。なんでお前が。
知ってても言えるわけないよ。お前は優しすぎるから。
「いいんだよ智明。」
「ほんの少しの変化じゃないか。」
「ただ、ただ。」
「ただ………
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