本当の主人公 リメイク版

正君

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六章

50話「50話」

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「旅行楽しかったな~!」
一週間の旅行ももう終わり。
いやー、濃い一週間だった!
3日目の夕方にあった明人君大暴れ事件や4日目早朝の朱里さん大覚醒も最高だったな…。

「なあ晶、5日目のあれ覚えてる?龍馬さんが大活躍したやつ。」
「あー、スパイのやつ?あの龍馬の推理めっちゃ面白かったよな…。」
「『犯人は猫なんだよ!!』か!いやー、あれが間違いじゃなかったのは凄かった!」
「家に着いたら動画送るねー!」
「おう!彩ちゃんありがと!」

…みんな楽しんでたな~…僕まで幸せな気持ちになっちゃうよ…。
思い出話に花を咲かせ、楽しそうに笑っているみんなを見ながら僕も想い出に浸っていると、突然朱里さんが何かを思い付き、僕達5人にこう尋ねた。

「6日目の夜の肝試しあったよね、あの時くらいしか自由行動出来てないじゃん?だからこれから帰るまで時間あるし…これからしおり通り自由行動にする?」

あー、確かに、それもいいかも。
帰るまでまだまだ時間あるしね。

朱里さんの言葉に同意してから「僕は何処に行こうか」と悩んでいると、智明が何処か遠くを指差しながらこう言った。

「そうするか…俺あそこにあるCD屋行きたくてさ…。」
「帰ってからでも行けるじゃん…。」
「あそこにしか売ってないもんがあるかもしれないだろ?」
「無かったらどうすんの?」
「そん時はそん時だ!」

……あれ?わ、朱里さんと智明自然と二人行動してる。凄い。めちゃくちゃ自然。陽キャ怖い。
…僕は、どうしようか。

彩さんを誘おうか、明人君を誘おうか、晶さんを誘おうか、それとも一人で行こうか。
一人で行ったら空気読めないとか思われちゃうかな。
でも……どうしようか…。

なんて一人で唸っていると、晶さんが僕達3人に向かってこう言ってから僕達に背を向けた。
「…うち一人で回るわ、三人で行っといで。」

あ、晶さん…!かっこいい…!背中がおっきく見える…!
晶さんの言葉に感動し、僕もいつかはこんな感じで言えたらいいなーなんてふんわり思っていると、明人君が晶さんの肩を掴み、引き留めた。

「晶一人で大丈夫か?迷わないか?結構広いし…キャッチに捕まったら…。」
「大丈夫やって!この辺は前も来たことあるし!じゃあな!」

…かっこいいな、晶さん。
心配してる明人君優しい…。

「…じゃあ、三人で…回ろっか。」
「そうだね!二人はどこ行きたい?」
「どこでもいい…二人に任せる。」
「僕も…二人に合わせるよ。」
「……そっか…。」

「「「……」」」

……進まないな、僕達三人だと。

僕がどこに行きたいか言わなきゃな、なんて悩みながらも言えなくて悶々としていると、彩さんが突然大声を出した。

「あ!!!」
「うっわビックリした…何?」
「あそこのお土産屋さん来た時から目付けてたんだ!行こ行こ!」
「分かった、行こっか…明人君。」
「……はい…。」
「じゃあ私先行ってるから二人も追い付いてきてね!」
彩さんはそう言い残し、僕達二人を置いて走り去ってしまった。。

…6人で出掛けた時にも思ったけど…彩さんって意外と強引なところあるよね。

「…彩さんって意外と強引だよね。」
呆れながらお土産屋に向かう明人君へそう言ってみると、少しだけ微笑んでからこう答えてくれた。
「確かに…まぁ、でも…ああなるのは姉さんがテンション上がった時だけなので…。」

…なるほど、それ以外の時は強引じゃないんだ…。
それに強引なのは強引だけど、誰か一人を置いていくわけじゃないから…不思議と嫌な気分にはならないんだよな。

…確かに、彩さんはちょっと智明に似てるかも。



お土産屋さんでストラップやお菓子を買ってから、これからどこに行こうかと話し合っていると、明人君が僕と彩さんの肩を軽く叩いてから、どこかを指差しこう言った。

「喉渇いたのであそこで何か買いたいんですけど…龍馬さん何が良いですか?」
「え?あそこって……。」
明人君が指差した場所は女の子達が好んで行くようなコーヒーショップだった。

わー、明人君おしゃれ…。
「なら中入って一緒に選ぼうよ、中涼しいし…。」
確かに彩さんの言うとおりかもな、なんて思いながら明人君の方を見てみると首を横に振り、
「景色が綺麗だから外で飲みたい…。」
と言った。
……それもわかる…僕意思めっちゃ揺れるな…。

「あー、確かにそれはそうかもね…なら僕も一緒に行くよ、コーヒー三つも持たせられない。」
コーヒーショップをじっと見つめている明人君にさう言ってみると、少しだけ眉を下げ、首を横に振った。

「…二人で、過ごしてください。」








「……」
「……」

……静か、だな。
仕方ないか…お互い無口だもんね…。

でもこのままだとつまらない男だと思われる…どうしよう…。
そうだ、僕と彩さんの共通の話題と言えば一片の報いだ!よし!

ベンチで座りながら明人君がいる方向をじっと見つめている彩さんへ
「この風景、アニメオリジナルのシーンで…ラフと雪がアリスを探しに二人で抜け出したときに見た景色と似てない?」
と言ってみると目を見開き、何度も頷いてくれた。

「それ!私も思った!あのシーン良いよね~!私雪推しで龍馬君はラフ推しだからちょうど良いよね!」
彩さんが楽しそうだ…嬉しいな。

……よし、勇気出せ松田龍馬。

「あの…嫌だったら良いんだけど…二人で写真撮らない?」
と言いながらスマホを取り出すと、彩さんが少しだけ悩んでから了承してくれた。

「あの、すみません…写真お願いできますか…?」
通行人のお兄さんにそう頼んでみると、「いいですよ!」と笑顔で答えてくれた。
わ、この人めちゃくちゃイケメンだな…。

彩さんに出来る限り近付き、僕なりの自然な笑顔を作ると、お兄さんがにっこりと微笑んでから「撮れました」と携帯を返してくれた。

「ありがとうございます…!」
「いえ…観光ですか?楽しんでくださいね!」
「はい!ありがとうございます!」
「成る程…カップルで旅行か…。」
「違います!」
「じゃあ…夫婦?」
「違う!違う違う違います!」





「……。」
「何考えてんの。」
「…晶、僕もう無理だ、出来ない…龍馬さんと姉さんが…。」
「お前だけの為じゃないねん…龍馬の為でもあるし…彩ちゃんの為にもなる、結果的にお前にも良い事が起こるんやから。」
「でも無理だ、今考えればお互いのために龍馬を襲えっていう指示すら意味不明だった…なのに…もうお前の事を信頼できない。」
「…龍馬の事、知ってるか?」
「…トイレから聞こえた、龍馬さんの秘密をあんな場所で朱里に言うなんて狂ってるとしか思えない。」
「……あのな明人、うちがお前にさせた行動全部に意味がある、一つでも崩れたら龍馬の精神は崩壊してしまうんや、いいな。」
「……次は何すんの、夜這いでもしろって?」
「…大好きな龍馬と彩が待ってる、行け。」
「…………クソ晶」


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