50 / 87
六章
50話「50話」
しおりを挟む「旅行楽しかったな~!」
一週間の旅行ももう終わり。
いやー、濃い一週間だった!
3日目の夕方にあった明人君大暴れ事件や4日目早朝の朱里さん大覚醒も最高だったな…。
「なあ晶、5日目のあれ覚えてる?龍馬さんが大活躍したやつ。」
「あー、スパイのやつ?あの龍馬の推理めっちゃ面白かったよな…。」
「『犯人は猫なんだよ!!』か!いやー、あれが間違いじゃなかったのは凄かった!」
「家に着いたら動画送るねー!」
「おう!彩ちゃんありがと!」
…みんな楽しんでたな~…僕まで幸せな気持ちになっちゃうよ…。
思い出話に花を咲かせ、楽しそうに笑っているみんなを見ながら僕も想い出に浸っていると、突然朱里さんが何かを思い付き、僕達5人にこう尋ねた。
「6日目の夜の肝試しあったよね、あの時くらいしか自由行動出来てないじゃん?だからこれから帰るまで時間あるし…これからしおり通り自由行動にする?」
あー、確かに、それもいいかも。
帰るまでまだまだ時間あるしね。
朱里さんの言葉に同意してから「僕は何処に行こうか」と悩んでいると、智明が何処か遠くを指差しながらこう言った。
「そうするか…俺あそこにあるCD屋行きたくてさ…。」
「帰ってからでも行けるじゃん…。」
「あそこにしか売ってないもんがあるかもしれないだろ?」
「無かったらどうすんの?」
「そん時はそん時だ!」
……あれ?わ、朱里さんと智明自然と二人行動してる。凄い。めちゃくちゃ自然。陽キャ怖い。
…僕は、どうしようか。
彩さんを誘おうか、明人君を誘おうか、晶さんを誘おうか、それとも一人で行こうか。
一人で行ったら空気読めないとか思われちゃうかな。
でも……どうしようか…。
なんて一人で唸っていると、晶さんが僕達3人に向かってこう言ってから僕達に背を向けた。
「…うち一人で回るわ、三人で行っといで。」
あ、晶さん…!かっこいい…!背中がおっきく見える…!
晶さんの言葉に感動し、僕もいつかはこんな感じで言えたらいいなーなんてふんわり思っていると、明人君が晶さんの肩を掴み、引き留めた。
「晶一人で大丈夫か?迷わないか?結構広いし…キャッチに捕まったら…。」
「大丈夫やって!この辺は前も来たことあるし!じゃあな!」
…かっこいいな、晶さん。
心配してる明人君優しい…。
「…じゃあ、三人で…回ろっか。」
「そうだね!二人はどこ行きたい?」
「どこでもいい…二人に任せる。」
「僕も…二人に合わせるよ。」
「……そっか…。」
「「「……」」」
……進まないな、僕達三人だと。
僕がどこに行きたいか言わなきゃな、なんて悩みながらも言えなくて悶々としていると、彩さんが突然大声を出した。
「あ!!!」
「うっわビックリした…何?」
「あそこのお土産屋さん来た時から目付けてたんだ!行こ行こ!」
「分かった、行こっか…明人君。」
「……はい…。」
「じゃあ私先行ってるから二人も追い付いてきてね!」
彩さんはそう言い残し、僕達二人を置いて走り去ってしまった。。
…6人で出掛けた時にも思ったけど…彩さんって意外と強引なところあるよね。
「…彩さんって意外と強引だよね。」
呆れながらお土産屋に向かう明人君へそう言ってみると、少しだけ微笑んでからこう答えてくれた。
「確かに…まぁ、でも…ああなるのは姉さんがテンション上がった時だけなので…。」
…なるほど、それ以外の時は強引じゃないんだ…。
それに強引なのは強引だけど、誰か一人を置いていくわけじゃないから…不思議と嫌な気分にはならないんだよな。
…確かに、彩さんはちょっと智明に似てるかも。
お土産屋さんでストラップやお菓子を買ってから、これからどこに行こうかと話し合っていると、明人君が僕と彩さんの肩を軽く叩いてから、どこかを指差しこう言った。
「喉渇いたのであそこで何か買いたいんですけど…龍馬さん何が良いですか?」
「え?あそこって……。」
明人君が指差した場所は女の子達が好んで行くようなコーヒーショップだった。
わー、明人君おしゃれ…。
「なら中入って一緒に選ぼうよ、中涼しいし…。」
確かに彩さんの言うとおりかもな、なんて思いながら明人君の方を見てみると首を横に振り、
「景色が綺麗だから外で飲みたい…。」
と言った。
……それもわかる…僕意思めっちゃ揺れるな…。
「あー、確かにそれはそうかもね…なら僕も一緒に行くよ、コーヒー三つも持たせられない。」
コーヒーショップをじっと見つめている明人君にさう言ってみると、少しだけ眉を下げ、首を横に振った。
「…二人で、過ごしてください。」
「……」
「……」
……静か、だな。
仕方ないか…お互い無口だもんね…。
でもこのままだとつまらない男だと思われる…どうしよう…。
そうだ、僕と彩さんの共通の話題と言えば一片の報いだ!よし!
ベンチで座りながら明人君がいる方向をじっと見つめている彩さんへ
「この風景、アニメオリジナルのシーンで…ラフと雪がアリスを探しに二人で抜け出したときに見た景色と似てない?」
と言ってみると目を見開き、何度も頷いてくれた。
「それ!私も思った!あのシーン良いよね~!私雪推しで龍馬君はラフ推しだからちょうど良いよね!」
彩さんが楽しそうだ…嬉しいな。
……よし、勇気出せ松田龍馬。
「あの…嫌だったら良いんだけど…二人で写真撮らない?」
と言いながらスマホを取り出すと、彩さんが少しだけ悩んでから了承してくれた。
「あの、すみません…写真お願いできますか…?」
通行人のお兄さんにそう頼んでみると、「いいですよ!」と笑顔で答えてくれた。
わ、この人めちゃくちゃイケメンだな…。
彩さんに出来る限り近付き、僕なりの自然な笑顔を作ると、お兄さんがにっこりと微笑んでから「撮れました」と携帯を返してくれた。
「ありがとうございます…!」
「いえ…観光ですか?楽しんでくださいね!」
「はい!ありがとうございます!」
「成る程…カップルで旅行か…。」
「違います!」
「じゃあ…夫婦?」
「違う!違う違う違います!」
「……。」
「何考えてんの。」
「…晶、僕もう無理だ、出来ない…龍馬さんと姉さんが…。」
「お前だけの為じゃないねん…龍馬の為でもあるし…彩ちゃんの為にもなる、結果的にお前にも良い事が起こるんやから。」
「でも無理だ、今考えればお互いのために龍馬を襲えっていう指示すら意味不明だった…なのに…もうお前の事を信頼できない。」
「…龍馬の事、知ってるか?」
「…トイレから聞こえた、龍馬さんの秘密をあんな場所で朱里に言うなんて狂ってるとしか思えない。」
「……あのな明人、うちがお前にさせた行動全部に意味がある、一つでも崩れたら龍馬の精神は崩壊してしまうんや、いいな。」
「……次は何すんの、夜這いでもしろって?」
「…大好きな龍馬と彩が待ってる、行け。」
「…………クソ晶」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
亡くなった王太子妃
沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。
侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。
王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。
なぜなら彼女は死んでしまったのだから。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる