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六章
47話 虫の知らせ
しおりを挟む「朱里~!会いたかった~!!!」
「私も会いたかったよ晶~!!!」
「私も混ぜて!私もハグしたい!!」
……仲良いな。
何て思いながら三人をボーッと見ていると、髪の長い雅とばっちり目が合い、ふと準備していたアレの事を思い出した。
「なぁ雅、アレもう出していい?」
きゃいきゃいと騒いでいる雅にそう言うと、思い出したのか「あ!」と声をあげ、鞄から準備していたアレを取り出した。
「?なにそれ?」
「旅のしおり!予定は私も知ってるし、明人君がお絵描きできるって聞いたから作ってみようかな~と思って!」
「旅のしおり?普通合流したときに出さへん?出すん遅ない?」
「晶が勝手にチーム分けして晶が自分のペースで話進めたせいで2グループに分かれたんだから仕方ないじゃん。」
「ごめん。」
「交通費の無駄だし。」
「ごめんなさい。」
「時間の無駄でもあるよな雅。」
「そうだよ、反省して。」
「申し訳ありません。」
…責められてる晶って新鮮で面白いな。
『次はなんて言ってやろう』と考えていると、姉さんが僕の肩を軽く叩いてからこう言った。
「まぁまぁ…こっちはそれなりに楽しかったしいいよ?ね、智明君!」
「おう!写真も500枚くらい撮ったしな!」
…いいな、楽しそう。
でもこっちも龍馬さんのおかげで楽しかったからいいけど…。
「私達だってめっちゃ映える写真撮れたよ?見て?ケーキを食べたいけど我慢しちゃうかわいい明人君!」
「いつ撮ったんだ消せ馬鹿女。」
「僕のも見て?かわいいチワワの置物の写真を撮ろうか迷うかわいい明人君!」
「…それ後で送ってください。」
それからしばらくお互いに撮った写真を見せ合ったり送り合ったりしてから、すっかり忘れていたしおりの話題になり、しおりを読みながら、これからの予定を話し合うことにした。
…自分で言うのもなんだけど…結構綺麗に作れたんじゃないか?
なんて思いながら読んでいると、龍馬さんが表紙や目次を読みながら沢山褒めてくれた。
「わ…地図も貼ってある!おすすめのお土産とかも書いてある…綺麗だな…すごいね二人とも!!」
…マジでかわいいな…龍馬さん…。
「あ…ありがとうございます…。」
頭を下げお礼を言うと、智明が割り込みこんな事を言い出した。
「なぁ、誰かこの禁止事項に書いてある龍が巻き付いた妙なキーホルダーお揃いで買おうぜ!」
「変なお土産を買ったら朱里ちゃんポイント100貯まるよ、500ポイントでスタンプ一つ!スタンプ2つでプレゼントあげる!」
「へー、プレゼントって何くれんの?」
「僕が長所であろうが個性が0であろうが粗を探して罵るサービス。」
「…ちょっと貯めたいかも。」
「お兄ちゃん久しぶりーーーー!!!!」
「晶ちゃん久しぶり!すっごいお母さんに似てきたね…今何歳だっけ?」
「16!」
「そっか…おっきくなったね…。」
…なんか、晶が年上の誰かに甘えてる姿見るの新鮮だな。
大はしゃぎでお兄さんと話している晶のうしろ姿を見ていると、ふとお兄さんがずっとこっちを見ていることに気が付いた。
「?どうされました?」
と声をかけてみると、お兄さんが俺の髪を撫でながらこんな事を呟いた。
「……さとしくん…。」
…誰だ、さとしって。
「…どうしました?」
「…。」
「あ、いや…この子が昔の知り合いの子供に似てて…。」
「あー、成る程!この子は『智明』って名前なので別人ですね。」
「そ…っか…別人…なんだ。」
「そうですよ?多分人違いだと思います。」
…龍馬……。
「なんでそんな悲しそうな顔するんです?」
「…さとしくん…十年位前に事故で亡くなって、さ。」
「…あぁ…。」
「…さとしくんは生きてるって…信じたくて。」
「お風呂場見に行こ!」
「ここ景色めっちゃ綺麗なんよな…!」
大はしゃぎの朱里と晶の背を見ながら、あのお兄さんの事を考える。
夜になってもあのお兄さんの言葉が頭にこべりついて剥がれない。
さとしが…死んだって…。
…ふと、晶に手渡されたあの拳銃の事を思い出した。
…楽に、死ねたのかな。
せめて、苦しまずに死ねていたらいいな…なんて。
…澁澤の親父さんが聞いていたらどう思うんだろう。
死んだと決まったわけでもないのに。
…さとし…。
……俺だって会いたいよ。
会いたいに気まってる。
だって…俺の、恩人だから。
俺の、人格を作ってくれた。
幼い頃ずっと側にいてくれた。
…俺の…代わりになってくれた。
さとし。
さとし。
さとし。
電話が鳴った。
あの女からの着信だ。
あいつらは今風呂の場所とか景色が綺麗な場所を案内してもらってる。
…今しかない。
今しか、こいつと話せない。
「…もしもし。」
『久しぶり、色々大変みたいだね。』
相変わらず掴みどころのない声色で、何かを確認したいのか、それとも…何か言わせたい単語があるのか…分からないけど。
…俺の思ってる事全部が、正解のような、そんな事さえ思ってしまう声。
でも、いつもより声がはっきり聞こえるような…気がする。
「…お前が何を知ってる。」
『全部知ってるよ、君の過去も龍馬君の事も』
「…明人の、事も?」
『うん、ぜーんぶ。』
「…だから、あの時…。」
『?』
「…晶が、彩ちゃんと一緒に不良に絡まれたとき…龍が助けに入るって…予言したのは…。」
『予言じゃないよ、晶ちゃんは巻き込まれ体質だからそれくらい分かる。』
…。
「…お前が、巻き込まれるように…仕組んだのか?」
『そうかもしれないね?』
…あの場にいたのは…彩ちゃんと、晶と…明人と、俺と…龍。
まさか、いや、最初っから分かってた筈だ。
言わないようにしてただけ。
…この女が誰なのかを確認しなきゃ。
じゃなきゃ、俺は…。
「…お前の、名前は?いつもみたいに「分からない」とか「どうだろうね」で誤魔化さずに答えてくれ。」
と言うと、しばらく黙り込んでからこう答えた。
『…智明君はもう分かってるんでしょ、言う必要ある?』
「確認したいだけだ。」
『そっか、言ってみて?』
よし、言おう。
間違ってたとしてと、この女なら…全部許してくれる。
……待て。
ダメだ、言っちゃいけない。
言ったら…もう…もう…全部終わってしまうかもしれない。
何故か、そんなことを思った。
ダメだ、と…本能のような、虫の知らせのような…。
気付いたら、大声でこんな事を言っていた。
「ち、直接言う!お前かなって奴に直接!だからまだ切らないでくれ!合言葉的なの考えて言うから!切らないでくれ!頼む!」
『…え?』
俺の頼みに驚いたのか、焦った声を出す女。
…初めてだ、こいつが焦るの。
「まだ話したい事があるんだ。」
そう言うと、女は少し黙ってから了承してくれた。
…俺が、一番知りたい事を…聞こう。
「…さとし。」
『うん?』
「…さとしは、生きてるのか?」
『それは…君が一番知ってるんじゃない?』
「……。」
『…さとし君は、智明君の一番の友達なんでしょ?』
「……うん。」
『…さとしくんは、生きてる?』
「…いや、殺した。」
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