本当の主人公 リメイク版

正君

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五章

43話「普通に」

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「りゅーーうーーまーーー!あーーそぼーー!!」 

コーヒーを飲んで、これからテスト勉強を頑張ろうかと決意した時、外からこんな声が聞こえてきた。 

晶さん…!?なんでこんな真っ昼間に!?
いや驚くとこそこじゃないな…普通晶さんくらいの年齢の子が遊びにくるとしたら昼間だもんね。
でも…いや、なんで僕の家の前に晶さんが…!? 

ベランダから身を乗り出し、何か色んな物が入ってるビニール袋を持った晶さんに
「晶さーーん!な、なんで僕の家にー…!?」
と、精一杯の大声で尋ねてみると、さっきよりも大きな声でこう答えてくれた。
「暇やったから!てか龍馬の家何階やったっけ!!場所はなんとなーく覚えてたんやけど号室を忘れちゃってさ!!ごめん!!」 

……元気な人だな。 

「じゃあメッセージでもいいじゃん!こんな大声で話さなくてもさ!!ていうかこの前僕メッセージで晶さんに住所送ったよね!!??」
「あー!住所今思い出した!急いで行くわ!!!!待っててや松田君!!!!!!」 

わ、適当にごまかした。汚い人。 

……でも、来てくれたの嬉しいな。
お休みの日ってなんか妙に寂しくなっちゃうんだよね…。
今日はみんなでお勉強する予定も無いし退屈で仕方なかったから晶さんが来てくれて嬉しいや。 

「龍馬くーーんあーそーぼー!」
……お、来た。
インターホンを連打する晶さんに「ちょっと待っててね!」と返事をしながら、さっきまで食べてたお菓子を片付ける。 

…よし、これで昼間からご飯も食べずにお菓子食べてる馬鹿だってバレない! 

「晶さん来てくれてありがとうね…おいで、何もないけど…。」
と言いながらチェーンを外し、鍵を開けると……
…そこには首から上は馬で、首から下は可愛いお洋服を着た謎のキメラが。


「ギャァァァァァアアァァア!!!」
「お、ええ反応するやん!流石~!」
「ほんと?これでよかった?」
「最高!次明人の家行く時にやろ!」
「動画撮るよ僕!さ!上がって!リアクション褒められたの嬉しいや!なんでもあげる!!」




___




「何持ってきたの?ご飯?」
「うん、うちの分と…勿論龍馬の分もあるよ!コンビニで買ったスパゲッティ二つ!電子レンジ借りるで!」
「お腹空いたから嬉しいな…ありがとう…!」 

と言いながら電子レンジにスパゲッティを入れている晶さんを見ていると、ボタンを見ながら小さな声で唸り始めた。
……分からないのか……じゃあ素直に言えばいいのに…。


「…ここ押すんだよ晶さん。」
うんうん唸ってる晶さんに操作方法を教えると、目を見開き、動き始めたレンジをまじまじと見つめながらこう言ってくれた。 

「わ、すげえ、コンビニのしか使ったことないから分からんかった!」
……コンビニの? 

「晶さん、レンジコンビニのしか使ったことないの?」
「うん、レンジも冷蔵庫も電気ケトルも無い、普通にコンビニで買ってそのまま食ってる。」 

そうなんだ…。
晶さんって何でも知ってそうな雰囲気あるけど…晶さんでも知らないことがあるんだ。 

「でも電子レンジあったら便利よな…買い溜めとか出来るかもやし…いや冷蔵庫無いと厳しいか…電気ケトルくらいは…。」
……ご飯を家で作るっていう発想はないんだ…。 

「便利で良いな…余裕あったら買おうかな……。」
「いいんじゃない?親御さんと相談してみたら?」
「せやな、うちのイケメンと相談するか。」
……うちのイケメン…。
明人君も晶さんもお父さんとの距離感おかしくない?いやそれが普通なのかな…。 

…でも、コンビニで直接買って…直接食べてるのか。 

「…晶さんって一人暮らしなの?」
どうしても気になってそう訪ねてみると、晶さんがこう答えてくれた。
「みたいなもんやな!お、出来た?」
みたいなもんなんだ!
…普通にはぐらかされた気がする。
「いや待って晶さん出来立てのやつ普通に持ったら火傷……」
「あ"っづ!!!!!!!!」 

……なんか、色々台無しだな。




スパゲッティを食べ終わり、火傷した指を冷やしている晶さんと能力について話していると、ふと晶さんが立ち上がり「前言ってた秘密基地を見に行きたい」と言ってくれた。 

ウキウキしている晶さんを秘密基地に連れていくと、キョロキョロと回りを見渡しながらこう言ってくれた。 

「良い場所やな…ここにちっちゃい椅子持ち込んで話し合ったりしたら良さそうじゃない?」
「あー!確かにいいかも…!」 

晶さんってほんと賢い人だな…かっこ良くて憧れちゃうよ…。 

なんて考えながら秘密基地の中をうろうろ歩いていると、晶さんが突然僕の名前を呼び
「なあ龍馬…一個だけさ、誰にも言えへん悩みごとがあるんやけど…聞いてくれる?」と言った。 

…悩み事? 

「僕で良いなら聞くよ。」と答えると、2、3回頷いてからゆっくりと悩み事を教えてくれた。 

「…うち、さ、昔は…今のうちの生き方に憧れてて…昔のうちが今のうちを見たら…憧れて、褒めてくれるやろうなって…思うんよ。」 

「うん。」 

「……でも今のうちは、今のうちの生き方を…良いとは思えへんくて。」 

「…どうして?」 

「……今のうちは、その…みんなみたいに…普通に…普通の…女の子として生きたいって…思ってるから。」 

「…………。」 

「…馬鹿らしい願いやけどな、一回欲しがったものを…今はいらんって…。」 

「おかしくないし馬鹿らしくもないよ、どう生きても晶さんは晶さんだもん。」 

「…優しいな、ありがとう…。」 

「…またおいでよ、僕の家の中だけでは…普通の、何も…背負ってない晶さんで居て良いから。」 

「……ありがとう…ほんまに……ありがとう…………。」

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