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二部
うんち
しおりを挟む なんだか悔しくて涙目になりながら食事を進める。
はぁ……なんでこんなことに……。
溜め息が出る。
「優希? どうしたんだ?」
手を止めて溜め息をつく俺に気がついたのか、藤條が心配そうな顔で覗き込んできた。
いや、原因はお前だから。
藤條を見て、再び溜め息が出る。
「?……さて、そろそろ行かないとな。ちょっと今日は遅くなった」
首を傾げる藤條だったが、急に立ち上がるとそう言って俺に手を差し出す。
遅くなったのもお前のせいだろがーっ!
頭にきて、俺は藤條を無視して席を立つ。
「あ……ごちそう様でした……」
席を立ってから思い出して、橘さんに声をかける。
あれ? そういえば、他にメイドとか――コイツの家族は?
ふと気になって周りを見たが、俺達3人しかいない。
なんだろう……この感じ。
「優希、ほら、用意しなきゃ」
ぼんやりしている俺に藤條が話し掛けてくる。
「あ……うん」
生返事をしながら俺は藤條の後に続いた。
☆☆☆
「どうぞ」
橘さんが車のドアを開け、にこやかに俺を見ている。
「…………」
なんだこれ。
いや、なんとなく想像はしたけど……これなんだっけ? ベンツ?
車で送り迎えかー!
この坊ちゃんがっ!
目の前の、シルバーの高級車に俺はなんだか腹が立っていた。
いや、車で送ってもらえるなんて体験したことないし、ちょっとした感動でもあるんだけどさ。
なんとなく、ムカつく。
「優希」
俺がむくれていると、藤條が俺の手を掴んで車に乗り込む。
俺は歩いてく……って言おうかとも思ったけど、コイツの家から学校までどれだけあるか分からない。
まぁ、今日は乗ってやろうじゃねぇか。
ゆっくりと車は進む。
ここどこなんだろう。
俺は車の窓からじっと外を眺めていた。
あまり見たことないような景色。
いや、知ってるかもしれない。
不思議な感覚だ。
車に乗って10分。
俺はずっと外を眺めていた。
藤條も特に話し掛けてもこなかった。
「優希」
しかし、ぼんやりと外を眺めていたら、急に声を掛けられて横を見る。
「んんっ!?」
ぬわーっ!
バカーっ!
横を見た瞬間にキスされた。
ちょっと待てーっ!
バシバシと藤條の胸を叩く。
「いたっ、痛いって、優希っ」
数秒間ほどくっついていた藤條の唇がやっと離れて、顔をしかめながら声を上げる。
「うるせぇっ! 何すんだっ! このっ、変態っ!」
俺は涙目になりながら思い切り睨み付けた。
「……変態って……」
藤條はがっくりとうな垂れていた。
当たり前だ。お前なんか変態以外の何者でもないわっ。
落ち込んでいる藤條を無視して再び窓の外を眺めた。
「あっ!」
気が付くと、もう学校の校門近くまで来ていた。
校門の100メートルくらい手前に車は止まる。
そして、橘さんは車から降りると後部座席のドアを開ける。
「どうぞ」
俺はすぐに車外へと降りる。
「橘さんっ、ありがとうっ」
橘さんにお礼を言うと、藤條が降りてくる前に俺は走り出した。
コイツと一緒に登校だなんてごめんだっ。
後ろから俺を呼ぶ声が聞こえたけど、無視だ無視。
あんな変態野郎。
必死に校門まで走り続ける。
「はぁ……はぁ……」
大した距離じゃなかったけど、妙に息切れした。
目の前の見慣れた学校。
ここは俺の知ってる学校なんだろうか……。
はぁ……なんでこんなことに……。
溜め息が出る。
「優希? どうしたんだ?」
手を止めて溜め息をつく俺に気がついたのか、藤條が心配そうな顔で覗き込んできた。
いや、原因はお前だから。
藤條を見て、再び溜め息が出る。
「?……さて、そろそろ行かないとな。ちょっと今日は遅くなった」
首を傾げる藤條だったが、急に立ち上がるとそう言って俺に手を差し出す。
遅くなったのもお前のせいだろがーっ!
頭にきて、俺は藤條を無視して席を立つ。
「あ……ごちそう様でした……」
席を立ってから思い出して、橘さんに声をかける。
あれ? そういえば、他にメイドとか――コイツの家族は?
ふと気になって周りを見たが、俺達3人しかいない。
なんだろう……この感じ。
「優希、ほら、用意しなきゃ」
ぼんやりしている俺に藤條が話し掛けてくる。
「あ……うん」
生返事をしながら俺は藤條の後に続いた。
☆☆☆
「どうぞ」
橘さんが車のドアを開け、にこやかに俺を見ている。
「…………」
なんだこれ。
いや、なんとなく想像はしたけど……これなんだっけ? ベンツ?
車で送り迎えかー!
この坊ちゃんがっ!
目の前の、シルバーの高級車に俺はなんだか腹が立っていた。
いや、車で送ってもらえるなんて体験したことないし、ちょっとした感動でもあるんだけどさ。
なんとなく、ムカつく。
「優希」
俺がむくれていると、藤條が俺の手を掴んで車に乗り込む。
俺は歩いてく……って言おうかとも思ったけど、コイツの家から学校までどれだけあるか分からない。
まぁ、今日は乗ってやろうじゃねぇか。
ゆっくりと車は進む。
ここどこなんだろう。
俺は車の窓からじっと外を眺めていた。
あまり見たことないような景色。
いや、知ってるかもしれない。
不思議な感覚だ。
車に乗って10分。
俺はずっと外を眺めていた。
藤條も特に話し掛けてもこなかった。
「優希」
しかし、ぼんやりと外を眺めていたら、急に声を掛けられて横を見る。
「んんっ!?」
ぬわーっ!
バカーっ!
横を見た瞬間にキスされた。
ちょっと待てーっ!
バシバシと藤條の胸を叩く。
「いたっ、痛いって、優希っ」
数秒間ほどくっついていた藤條の唇がやっと離れて、顔をしかめながら声を上げる。
「うるせぇっ! 何すんだっ! このっ、変態っ!」
俺は涙目になりながら思い切り睨み付けた。
「……変態って……」
藤條はがっくりとうな垂れていた。
当たり前だ。お前なんか変態以外の何者でもないわっ。
落ち込んでいる藤條を無視して再び窓の外を眺めた。
「あっ!」
気が付くと、もう学校の校門近くまで来ていた。
校門の100メートルくらい手前に車は止まる。
そして、橘さんは車から降りると後部座席のドアを開ける。
「どうぞ」
俺はすぐに車外へと降りる。
「橘さんっ、ありがとうっ」
橘さんにお礼を言うと、藤條が降りてくる前に俺は走り出した。
コイツと一緒に登校だなんてごめんだっ。
後ろから俺を呼ぶ声が聞こえたけど、無視だ無視。
あんな変態野郎。
必死に校門まで走り続ける。
「はぁ……はぁ……」
大した距離じゃなかったけど、妙に息切れした。
目の前の見慣れた学校。
ここは俺の知ってる学校なんだろうか……。
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