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一部
花に成るにつれて(糸蘭)
しおりを挟む傷は、困惑していた。
向日葵という自らの恋人と、自らの知り合いである花屋が体を絡めている姿を見て。
上がる湿度に高くなる媚声。
傷は困惑すると同時に、激しく嫉妬していた。
向日葵は眠っていた。
傷は花屋の着ているタートルネックの襟部分を掴み、怒りに任せて責め立てた。
花屋は「向日葵はこういう子なんだ」と言ってから、黙り込んでしまった。
心を読める傷は、花屋が向日葵に対して抱いている感情を少し前から理解していた。
だが実行はしないと思っていた。信じきっていた。
なのに、裏切られた。
裏切られたのだ。
「何故僕の恋人に手を出した!!」
怒号を浴びせる傷へ、花屋はこう呟いた。
「向日葵とはずっとこういう関係だった」
「向日葵は愛されていたい人間で、自分もそうだから」
「お互いの隙間を埋め合ううちに離れられなくなってしまった」
「貴方だって向日葵の事は理解している筈だ」
傷は、妙な気持ちになってしまった。
花屋から手が離れる。
隙間?向日葵の隙間はなんだ?
それを知らなかった、否、理解しようともしなかった僕はこの二人を責められるのか。
向日葵の隙間を理解していない自分が、向日葵の側に居るに相応しい人間なのか。
心を読める自分が、理解しなければいけないはずの自分が何をしているんだと。
何もかもが分からなくなった。
「……向日葵の、隙間は、セックスで…埋まるのか」
「埋まりません、応急処置にしかならない」
「……お前の、隙間は」
「……埋まりません、未来永劫」
「……そうか」
傷は、同情していた。
隙間という単語に覚えがあるからだ。
自らの背にある傷、そして…花屋の腕に刻まれた、小さな細かい傷。
向日葵の心にある、大きな傷。
その隙間へ、覚えがあったのだ。
「…」
傷は、跪いた。
大きな花屋の手を握り、傷は目を見つめた。
花屋は、彼の瞳を綺麗だと思った。
何を思ったか、傷は、花屋の頬を親指で撫でた。
伸びた襟元から見える長く逞しい首。
目を見開きじっと制止している花屋の首を。
喉を…薬指でそっと撫でた。
泣きそうな瞳で、自らの首を、喉を、体を必死で隠す花屋。
「……ッ!!!!」
傷は、花屋を理解した。
目覚めた向日葵
三人は、見つめ合い、理解した。
花屋が首を隠す服を選んで着る理由を
二人が寝ている姿を、覗き見していた自分を
お互いへ劣情を抱いていた自分達を、理解した
花屋の空色の髪が濡れる
傷の背を大きな手が這う
向日葵の太ももが痙攣し、三人はお互いを理解した。
「…いい、場所があるんです、私達を理解してくれる…場所が」
花屋は二人へ隠れ家を紹介した。
二人は、グッと手を握り、花屋はタートルネックを着るのをやめた。
あの夜、花屋は二人へ打ち明けた
既に知っていた傷は、向日葵は、目を伏せ、目尻に溜まる涙を拭った
「私、」
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