白い男1人、人間4人、ギタリスト5人

正君

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溺れていた
私は
友達がほしくて
いばしょがほしくて
なまえがほしかったから

喉を焼くアルコール
味は最早分からない
甘いのか苦いのかも
分からなくていいさ
私の素顔も全部全部

ゆいいつのいばしょがなくなった

「隣、座りますよ」

隣に座るすっごい美人
よく見たら知り合いだった
女学院に 通ってたとき
密かにあこがれてた人

「どうぞ」

お辞儀してカウンターにごちんとぶつけた
おでこ
痛い
彼女はクスクスと笑ってから
テーブルとキスしてるわたしの

「…やけ酒、ですか?」

耳に囁いた

「……はい、仕事、うまく行かなくて」

大学へ通いながら片手間にしている塾講師
あのクソガキ共
でもお金がいいからやめられない

彼女は私の愚痴を聞きながら、クスクスと笑ったり、頷いたり、悩んだりしてくれた。

「……」

昔読んだ漫画を思い出す
なんか、男を、誑かす、女の漫画。

ほくろも、同じ位置
こういうひとが、男を、誑かすのか


「全部聞こえてますよ」
「え」
「酔ってると、口から思ってる言葉全部出ちゃうんですね」
「う………」
「私は、貴方に誑かされたいです」
「……へ?何、言っ」



唇に残る真っ赤な跡
じゅんじゅんと血液が耳の奥を流れているような感情
ぞわりと沸き立つ劣情


「……!?」


……キス、された…?



ボブカット

立ち去る後ろ姿

あの漫画の人はロングだったな
でも切れ長の目はそのまんま

ほくろも
赤い唇も




あ、私あの人の事好きかもしれない





酔ってるわたしが、そんなバカな思考で追いかけた

お金払った

もう払われてた

白い手首をつかむと、待っていたように振りかえって微笑んだ

「誑かして、くれるんですか」
「え、あ…はい」
「では、お言葉に甘えて」







「馴れ初めイカれてんな」
「な」
「そうですね、でもちょっと嬉しかったんですよ」
「何?」
「わかるわ~」
「私、いつも…ナンパはああいう感じでするんです」
「帝王さんナンパとかしてたんですか?」
「寂しいときはいつもしてました…でも、追いかけてくれたのはあの子が初めてで…」
「なにそれウケる~」

惚気が聞こえた。
それも僕に関しての。
「会議する」って連絡が来たから急いで向かったらこれだ。
というか、え?ナンパ?あんたいつもナンパされる側じゃなかったっけ?
まあいいか……。

…真剣に、でもどこか楽しそうに話を聞いているローズさんと新入りのパン屋君と…携帯を触りながら適当に相づちを打っているアリスさん…そして……。


「あの!い、イロハさん!!」
「帝王」
「へっ?」
「帝王とお呼びください?」
「あーもう…」
「さあ」
「分かりましたよ!帝王!」
「それでよろしい」

…あの時僕に誑かされたいとか言ってたよな。
逆に僕が誑かされてるというか…からかわれてる気がするんだけど。

「あの、僕達の馴れ初めよりまず白い男についての会議を…!」
と言ってみても
「まずは緊張をほぐすのが先ですよ、ほら、アリスさんも頷いていらっしゃいます」
なんて適当な言い訳してくるし。

いや…。

「聞かずにずっとスマホいじってましたよあの人!!」
「マルチタスクの鬼ですよアリスさんは」
「そうだよ、私マルチタスクの鬼だから、マジ卍」
「センスが古いんだよ…何年前の流行だよ「マジ卍」って」
「ナウいヤングに対してそういう事言って良いのかな~?は~いムカ着火ファイアーでーす」
「全部が古すぎますよ」
「ナウいヤングってどういう意味ですか?」
「ほら!最年少が意味理解してないぞ!」
「化石人間」
「それ私のミドルネーム」
「マジ?フルネームは?」
「アリス・化石人間・ゴルゴンゾーラ」
「苗字ゴルゴンゾーラかよ!」
「あんたら会議する気あるんですか!?」





「今日の会議も、有意義でしたね」
「最初の30分間は無駄だったと思いますけど…」
「まあいいじゃないですか、楽しかったです」
「……まあ、そうですね…楽しかったです」
「…」
「…あ、もう着いちゃいましたね」
「ですね、ではまた」
「はい、あの、イロハさん」
「はい」
「言うのが遅れて申し訳ありません」
「?」
「朝からずっと思ってたんですけど言う機会がなくて」
「なんですか」
「…今日もお綺麗ですね」
「そうですか」
「はい、あと…」
「?」
「……愛してます、では、また明日」
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