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一部

花の人間

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「こんにちは、お邪魔しますね」
花束を抱えた奴が来た。
「ここが噂の隠れ家ですか?」
噂なんてした覚えがないのに裏口から不法侵入する人間。
薄いブルーの髪に黄色の目。
真っ赤な唇に…真っ白な服。
パッと見では男か女か分からない妙な奴。
でかい紙袋を抱えて隠れ家を見回している。

そいつに「お前は誰だ」と尋ねても無視し、花瓶はここにあるよ~なんて教えてもないのに勝手に花瓶を取り出して飾り出す始末。

「おいお前、なにしてんの」

勝手な行動をやめないこいつの肩を掴み、動きを無理矢理止めると、わざとらしく首を傾げてから、何故か声を出して笑い出した。

「あはは!ごめんなさいローズさん、お近づきの印にと…迷惑でした?」
「お近づきの印って何…おい、なんで私の名前を…」
「貴方はマーガロさんですね!あそこでのんびりしてる人は雪さん!」

突然、隠れ家に居る人間達を指差しながら名前を呼び始める人間。

……何者だ。こいつ。

「おい、お前何……」
「紹介が遅れましたね…私は…そうだな、花屋とでもお呼びください」
「分かったよ花屋さん!きれいなお花ありがとう!」
「マーガロ!!黙ってろ!!!喋んな!!!!」

能天気な幼馴染みのマーガロに、一人だけ名前を呼ばれなくて不機嫌になったのか怒鳴っているもう一人の幼馴染みのアリス。

花屋はそんなアリスをじっと見つめてから、ぐっと目を逸らし、こんなことを言い始めた。

「実は私予知が出来まして…ここに居る…女性でも男性でもない方が殺されるという予知を見たと忠告しに来ました」

……予知が出来る…人間か。
こいつも能力者か。
なら少し信頼してもいいかもしれないな。

「能力者だとは知らなかった、忠告ありがとう」
と言いながら頭を下げると、満足そうに頷き、アイスコーヒーを飲んでいるアリスへ、紙袋から取り出した小さな植木鉢を渡した。

「どうぞアリスさん、オダマキです、名前を呼ばなかったお詫びにどうぞ」
「……何も生えてないけど」
「これから生えるんです、自分で育ててくださいね」

そんなやり取りを数回繰り返してから、アリスが花屋の隣に立ち、花屋の肩を2度叩いてこう言った。

「忠告するために来てくれてありがとう、花については強くないから…たまに会いに来て教えてくれると嬉しいな」
「ふふ、分かりました」
「ありがとう、頼りにしてる」
「……はい……?」
「…なんで疑問系?」
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