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一部

さようなら

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女は呼吸方法を忘れた。
腕の感覚がない。女の魂である、腕の、感覚が。
右腕と左腕を動かそうとした。しかし脳味噌が、神経が、筋肉が言うことを聞いてくれない。
解離感。まるで白昼夢。明晰夢なのかもしれない。
死にかけている女はこんな状況でも歌詞を考えていた。

ガリガリとガラスを引っ掻くような音が聞こえて耳の中が腐っていく。
不快な音が耳に響く。

死ぬ。

頭に浮かぶのは男の姿。

真っ白な服を着た男。その足は私の血でどろどろに穢れていた。

その隣に居た男がこう呟いた。

「これでギタリストが減った」と。

男はそう呟いてから、女が持っていたギターを撫でた。

ギタリスト殺しの男は真っ白な男の手下なのか。
真っ白な男はふっくらした唇で賛辞の言葉を口にした。
「偉い」と、ただ一言だけ。

ギタリスト殺しは怪訝な顔をしてから立ち去った。
女へこう呟いてから。

「さようなら、ローズ」

微笑んでいる真っ白な男の横顔は、美しい少女のようであった。
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