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さき 6
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それからさきへ、
〔一回ちゃんと話したいからご飯いこう〕
そうLINEした。
〔冷たくされるのが無くなったら行きます。〕
さきからの返信は敬語になっていた。冷たくしているのではなく、そもそもの2人の会話なんて「好き」「かわいい」そんな中身のないものだったんだから、話す事がないのは当然だった。
彼女の中で消化しきれていない、それは重々感じていた。そんなさきを可愛く感じていた。僕は意識的にLINEの頻度を下げていたのだった。
〔ちゃんと話すの大事かも、ご飯いこう〕
さきからそのLINEがくるまで、僕は上手く転がしたのだった。
真理恵さえいれば、僕はそのさきとのご飯に合わせて真理恵を誘ったのに、そんな事を考えていた。
さきに予定が入ったとでも言って、さきとの誘いを蹴り、真理恵と同伴してMKに入っていく。その時のさきの顔を想像すれば、これ以上ない程のアドレナリンが出てきたのだった。
残念ながら真理恵とは連絡がつく状態ではなかった為、僕はさきと2人で同伴する事にした。他の子では役不足、適任は真理恵より他にいなかった。
その時に行った居酒屋、その時に教わったのだった。もう5年程、オンラインで繋がっている男性がいる事を。聞けばインスタで知り合って、それからテレビ電話もするような仲だと言った。同情せずに自分の意見を言ってくる彼で、テレビ電話をすれば必ず号泣していると言っていた。今の子はすごいなあ、とおっさんは感嘆したのだったが、19歳、20歳、その頃を思い起こすと、僕もそれに似たような経験をしていたと、ふと思いだしたのだった。
「好きな人ができた。」
さきはそう言ったが、僕は、
「やべーやろ。」
と一言で返した。彼女にとっての好きな人、それは僕からすれば興味が薄いものだった。これが本当の事なのか、妬かせる為に言った事なのか、どちらでも良かった。僕と同じレベルで「大好き」を向ける人ができる、それは考えにくいと思った。
何より自分自身に対する理解が少ない中で、「かわいい」「好き」と言われれば嬉しくてすぐに舞い上がるような、自分を持たない人間の、相手に対する気持ちは尊重できるものではなかった。2,3カ月ごとに好きな人が変わるのであれば、それはそれで楽しいのかもしれないが、ただいつまで経っても同じ事を繰り返すんだろうなと僕は思った。
ここで、特にちゃんと、そういった2人の関係だとかを話したわけではなかった。
いつもと変わらず、さきは一人でに喋り続けていた。
そんな事はあったものの、元々あると思っていたものが無くなるのは、辛いものだった。どうすれば上手くいっただとか、そんなものも元々ない関係であって、お互いに尊重し合えるような関係でもなかった。ただ、本当に十数年ぶりに「愛」ではなく「恋」をした。そんな感覚をくれた事、そして愛するという事の難しさを教えてくれたさきに感謝したし、愛しくも思った。
何もはっきりと聞いたわけではないが、MK内部では、この関係が終わった頃に、2人の関係がそれとなく知れ渡っていたようで「今日さきは?」と女の子に聞かれたり、「よくさきが何も言わんよねー」と言われたり、まきから「えー、真理恵やと思ってたー」と言われたりしていたのである。
僕はそれからもさきを同伴に誘ったし、さきから誘われる事もあった。
MK終わりにさきからのLINEが〔送信を取り消しました〕となっていて、僕はそれを見逃さず、2人で辛麺を食べにいったりした。
たまのLINEで電話をかけて欲しいんだろうな、と思うスタンプが送られてきても、僕はもうそれに反応しなかった。
〔一回ちゃんと話したいからご飯いこう〕
そうLINEした。
〔冷たくされるのが無くなったら行きます。〕
さきからの返信は敬語になっていた。冷たくしているのではなく、そもそもの2人の会話なんて「好き」「かわいい」そんな中身のないものだったんだから、話す事がないのは当然だった。
彼女の中で消化しきれていない、それは重々感じていた。そんなさきを可愛く感じていた。僕は意識的にLINEの頻度を下げていたのだった。
〔ちゃんと話すの大事かも、ご飯いこう〕
さきからそのLINEがくるまで、僕は上手く転がしたのだった。
真理恵さえいれば、僕はそのさきとのご飯に合わせて真理恵を誘ったのに、そんな事を考えていた。
さきに予定が入ったとでも言って、さきとの誘いを蹴り、真理恵と同伴してMKに入っていく。その時のさきの顔を想像すれば、これ以上ない程のアドレナリンが出てきたのだった。
残念ながら真理恵とは連絡がつく状態ではなかった為、僕はさきと2人で同伴する事にした。他の子では役不足、適任は真理恵より他にいなかった。
その時に行った居酒屋、その時に教わったのだった。もう5年程、オンラインで繋がっている男性がいる事を。聞けばインスタで知り合って、それからテレビ電話もするような仲だと言った。同情せずに自分の意見を言ってくる彼で、テレビ電話をすれば必ず号泣していると言っていた。今の子はすごいなあ、とおっさんは感嘆したのだったが、19歳、20歳、その頃を思い起こすと、僕もそれに似たような経験をしていたと、ふと思いだしたのだった。
「好きな人ができた。」
さきはそう言ったが、僕は、
「やべーやろ。」
と一言で返した。彼女にとっての好きな人、それは僕からすれば興味が薄いものだった。これが本当の事なのか、妬かせる為に言った事なのか、どちらでも良かった。僕と同じレベルで「大好き」を向ける人ができる、それは考えにくいと思った。
何より自分自身に対する理解が少ない中で、「かわいい」「好き」と言われれば嬉しくてすぐに舞い上がるような、自分を持たない人間の、相手に対する気持ちは尊重できるものではなかった。2,3カ月ごとに好きな人が変わるのであれば、それはそれで楽しいのかもしれないが、ただいつまで経っても同じ事を繰り返すんだろうなと僕は思った。
ここで、特にちゃんと、そういった2人の関係だとかを話したわけではなかった。
いつもと変わらず、さきは一人でに喋り続けていた。
そんな事はあったものの、元々あると思っていたものが無くなるのは、辛いものだった。どうすれば上手くいっただとか、そんなものも元々ない関係であって、お互いに尊重し合えるような関係でもなかった。ただ、本当に十数年ぶりに「愛」ではなく「恋」をした。そんな感覚をくれた事、そして愛するという事の難しさを教えてくれたさきに感謝したし、愛しくも思った。
何もはっきりと聞いたわけではないが、MK内部では、この関係が終わった頃に、2人の関係がそれとなく知れ渡っていたようで「今日さきは?」と女の子に聞かれたり、「よくさきが何も言わんよねー」と言われたり、まきから「えー、真理恵やと思ってたー」と言われたりしていたのである。
僕はそれからもさきを同伴に誘ったし、さきから誘われる事もあった。
MK終わりにさきからのLINEが〔送信を取り消しました〕となっていて、僕はそれを見逃さず、2人で辛麺を食べにいったりした。
たまのLINEで電話をかけて欲しいんだろうな、と思うスタンプが送られてきても、僕はもうそれに反応しなかった。
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