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雪穂 4
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「遊びすぎ。」
雪穂は僕を指して言った。
「ん?」
「遊びすぎ、飲み行き過ぎ、聞いてるっちゃかい。」
雪穂は元々きていた2人組のもう1人を指さして言った。
それはあたかも自分のネットワークを使えばいかようにもできる、チクろうと思えばいつでもチクれる、そんなマウントを取ってくるような言い方だった。
雪穂の親友と呼ばれている女の子はMKに来た事もあった、そしてMKのスタッフと知り合いという事も聞いていた。噂はもろもろ聞く事があったのだった。
僕はそれに対して特別反応はしなかった。
何故ならMKの人間はほぼ僕のサイドにつくだろう事は、重々に分かっていたからである。雪穂のそれはお角違いの言い方だった。
最初、泣き出しそうな雪穂へ支社長がおしぼりを渡して「大変やもんな~。」と慰め、それを素直に受け取っていたのだった。ただもう、この予想外の出会いに酒の回りが異常に進んだのだろう。
「どんげや?」
「まだ心配はしちょ。」
この二言だけは僕が言った事は覚えている。
典型的な、酒瓶を片手にふらついている、酔っ払った大阪人をイメージさせる物言いで、後は雪穂が独りでに喋っていた。
「しょうちゃんもどうーっしていいか分からないの。」
「ほら。」
と支社長と僕を交互に差し
「しょうちゃんはあんったらの事が好きやから、どうーっしていいか分からないの。」
「なのになんっっであんた達が歩み寄っていかない?」
一瞬、僕はイラっときて、
「幼稚園児じゃねっちゃかいよ!!」
という言葉が頭をよぎったが、雪穂の様子を見ていると、思っている事と違う言葉、気が付けば発してしまっていた、僕にはそんな風にも見えていた。
その言葉を突き詰めていけば、彼女の中で「正造がしっかりしていれば」という結論に達してしまうという事は目に見えていて、雪穂は言葉を発しながらも、暗に彼女自身がそれに気づいてしまう事、言葉としてハッキリさせてしまう事は、正造と同じように彼女自身がタブーとしていて、どうしようもなくなってしまっている。
酔っ払った大阪人、その姿は、僕にはそういう風に見えたのである。
自分で自分の首を絞めていく、墓穴を掘っていく彼女を少し哀れむような気持ちもあったが、なつみとの関係だとか、MKに通っていた頻度だとか、その辺りの情報を、雪穂がどれだけ把握しているか、全く分からなかった為、僕はただ、黙って聞いておくしか無かった。
僕とは反対隣に座っていた営業員と喋っていた支社長は、様子がおかしいのを察し、もう一度雪穂へおしぼりを差し出したが、もうあとの祭りで、雪穂は不機嫌にそれを払いのけた。
そして口を手で押さえながら、カウンター奥へと入っていったのだった。
「え?なんか言ったと?」
と支社長は聞いていたが、
「いや、何も。」
と僕は答えた。
それから戻ってきた雪穂は、単純に絡んできただけだった。
「勝負するぞ!」
と言われたので僕はそれに
「いいよ?」
と乗っかり、
「結局同じ延岡におるっちゃかいさあ…、また飲めばいいやん。」
何かのタイミングで僕と雪穂が一緒になれば、一緒に飲もうという意味合いで言ってきた。僕はそれにも
「いいよ。」
と返した。
支社長の隣で飲んでいた他の営業員は
「角田さん、よく我慢しましたね!俺やったら我慢できなかったっす。」
と言われたが、酔った席の事なので大して僕は気にする事はなかった。
次の月曜日、出社すると、例のように飲み会の話題となり。雪穂の話題にもなった。
どうやら、あのカウンターの奥に入った時間、雪穂は泣き叫んでいたようだった。それはそうだろうな、僕はそう思った。
「ほんとに何も言わんかったと?」
支社長は聞いてきたが、
「いや、かわいいやん。としか言ってません。」
と僕は本当の事を言うしかなく、それ以降に感じた事は説明するに難しかったので、大まかに会話の流れを説明するにとどまった。
雪穂は僕を指して言った。
「ん?」
「遊びすぎ、飲み行き過ぎ、聞いてるっちゃかい。」
雪穂は元々きていた2人組のもう1人を指さして言った。
それはあたかも自分のネットワークを使えばいかようにもできる、チクろうと思えばいつでもチクれる、そんなマウントを取ってくるような言い方だった。
雪穂の親友と呼ばれている女の子はMKに来た事もあった、そしてMKのスタッフと知り合いという事も聞いていた。噂はもろもろ聞く事があったのだった。
僕はそれに対して特別反応はしなかった。
何故ならMKの人間はほぼ僕のサイドにつくだろう事は、重々に分かっていたからである。雪穂のそれはお角違いの言い方だった。
最初、泣き出しそうな雪穂へ支社長がおしぼりを渡して「大変やもんな~。」と慰め、それを素直に受け取っていたのだった。ただもう、この予想外の出会いに酒の回りが異常に進んだのだろう。
「どんげや?」
「まだ心配はしちょ。」
この二言だけは僕が言った事は覚えている。
典型的な、酒瓶を片手にふらついている、酔っ払った大阪人をイメージさせる物言いで、後は雪穂が独りでに喋っていた。
「しょうちゃんもどうーっしていいか分からないの。」
「ほら。」
と支社長と僕を交互に差し
「しょうちゃんはあんったらの事が好きやから、どうーっしていいか分からないの。」
「なのになんっっであんた達が歩み寄っていかない?」
一瞬、僕はイラっときて、
「幼稚園児じゃねっちゃかいよ!!」
という言葉が頭をよぎったが、雪穂の様子を見ていると、思っている事と違う言葉、気が付けば発してしまっていた、僕にはそんな風にも見えていた。
その言葉を突き詰めていけば、彼女の中で「正造がしっかりしていれば」という結論に達してしまうという事は目に見えていて、雪穂は言葉を発しながらも、暗に彼女自身がそれに気づいてしまう事、言葉としてハッキリさせてしまう事は、正造と同じように彼女自身がタブーとしていて、どうしようもなくなってしまっている。
酔っ払った大阪人、その姿は、僕にはそういう風に見えたのである。
自分で自分の首を絞めていく、墓穴を掘っていく彼女を少し哀れむような気持ちもあったが、なつみとの関係だとか、MKに通っていた頻度だとか、その辺りの情報を、雪穂がどれだけ把握しているか、全く分からなかった為、僕はただ、黙って聞いておくしか無かった。
僕とは反対隣に座っていた営業員と喋っていた支社長は、様子がおかしいのを察し、もう一度雪穂へおしぼりを差し出したが、もうあとの祭りで、雪穂は不機嫌にそれを払いのけた。
そして口を手で押さえながら、カウンター奥へと入っていったのだった。
「え?なんか言ったと?」
と支社長は聞いていたが、
「いや、何も。」
と僕は答えた。
それから戻ってきた雪穂は、単純に絡んできただけだった。
「勝負するぞ!」
と言われたので僕はそれに
「いいよ?」
と乗っかり、
「結局同じ延岡におるっちゃかいさあ…、また飲めばいいやん。」
何かのタイミングで僕と雪穂が一緒になれば、一緒に飲もうという意味合いで言ってきた。僕はそれにも
「いいよ。」
と返した。
支社長の隣で飲んでいた他の営業員は
「角田さん、よく我慢しましたね!俺やったら我慢できなかったっす。」
と言われたが、酔った席の事なので大して僕は気にする事はなかった。
次の月曜日、出社すると、例のように飲み会の話題となり。雪穂の話題にもなった。
どうやら、あのカウンターの奥に入った時間、雪穂は泣き叫んでいたようだった。それはそうだろうな、僕はそう思った。
「ほんとに何も言わんかったと?」
支社長は聞いてきたが、
「いや、かわいいやん。としか言ってません。」
と僕は本当の事を言うしかなく、それ以降に感じた事は説明するに難しかったので、大まかに会話の流れを説明するにとどまった。
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