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雪穂 3
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想像はしていたのである。
子供が4人、そして家を建てたばかり、そして、車も、ファミリーカーを購入したばかり。
僕は善意ではなく、彼にうちのチャイルドシートだとか、子供服を正造に渡していた。単純に家にあると邪魔だったのと、それをもし使ってくれるならWINWINでまあ悪くはないか、と思っていた。
同じ営業職、インセンティブ制であるので、正造の給料は手に取るように分かっていた。正直、MKに毎日通うような余裕はなかった。
僕はずっと、飲みにいく際、正造の分も出していたのである。ただその流れの中で一度正造から
「有難いとは思うんすよ!本当に有難いんすよ!ただ僕もそれはめっちゃ気を遣うんすよ!申し訳ないなって思うんすよ!だから今日はもう僕の分は僕が出しますんで!」
と熱弁され、それはそれでそうかも知れないなあ、と思った僕は
「そうけ、分かったわ。」
と言ってそれからは、僕は正造の分を払わなくなった。その中で
「クレジットカードの明細を嫁に見られたんで、もうMKには行けないっす。」
そんな言葉も聞いていたが、暫くすると、同じようにMKに通っていた。
その旦那が、倒れて、記憶を失くす。
家を建てた事も覚えてない。
4人目の子供も覚えていない。
それを目の当たりにした、嫁は、どう、感じるだろうか。
それに、どう、向き合うだろうか。
どれだけの想いを1人でしょい込むのだろうか。
雪穂が泣き崩れる姿を、僕は想像していた。
別会社への異動で、給料が下がる事も聞いていた。
古賀さんに強引に手を引っ張られていた雪穂は、口を手で押さえながら、泣きそうになりながら、気まずさを隠しきれていなかった。
「おお!まじで!?」
と僕はテンションが上がったのだが、彼女は気まずさに耐え切れなかったのだろう。またすぐに元の席に戻ったかと思うと、今度はカウンターの中に立ち、座っていた支社長と話をし出した。元々、雪穂と親交のあるスナックだとは前から聞いていた。
支社長はあの事件から、会議室での対談、もろもろとあった事を知っているので、唯一話せるような存在だったであろう。
それをボックスで座って見ながら、酔っ払いの相手をしていた僕は、とうとういてもたってもいられなくなり、カウンターの支社長の横へ座ったのだった。
雪穂は黒いキャップをかぶっていた。
前述した通り、僕はちゃんと顔を見た事も、ちゃんと喋った事もなかったのだった。僕はもろもろずっと喋りたいと思っていた。
「かわいいやん。」
僕はいつものように、雑にお決まりの一言目を言い放った。前評判からすると、やはり僕には分からなくて、ただ単純に好みじゃない、それだけなのかもしれないが、この時の「かわいい」という言葉は僕からすれば社交辞令以外の何物でもなかった。
すると、雪穂はこう言ってのけた。
「当ったりまえやん……。」
「しょうちゃんの嫁が可愛くなくて勤まるはずないやん…」
一言も喋った事もない正造の嫁からの第一声はこれだった。
確かにお互い酔ってはいたものの、その一言で、夫婦間、彼女の人間性、友人関係、その全てが見えたような、そんな感覚になり、僕はその予想外の言葉に戸惑いを隠せず、ただグラス片手に愛想笑いを浮かべるしか、なかったのである。
子供が4人、そして家を建てたばかり、そして、車も、ファミリーカーを購入したばかり。
僕は善意ではなく、彼にうちのチャイルドシートだとか、子供服を正造に渡していた。単純に家にあると邪魔だったのと、それをもし使ってくれるならWINWINでまあ悪くはないか、と思っていた。
同じ営業職、インセンティブ制であるので、正造の給料は手に取るように分かっていた。正直、MKに毎日通うような余裕はなかった。
僕はずっと、飲みにいく際、正造の分も出していたのである。ただその流れの中で一度正造から
「有難いとは思うんすよ!本当に有難いんすよ!ただ僕もそれはめっちゃ気を遣うんすよ!申し訳ないなって思うんすよ!だから今日はもう僕の分は僕が出しますんで!」
と熱弁され、それはそれでそうかも知れないなあ、と思った僕は
「そうけ、分かったわ。」
と言ってそれからは、僕は正造の分を払わなくなった。その中で
「クレジットカードの明細を嫁に見られたんで、もうMKには行けないっす。」
そんな言葉も聞いていたが、暫くすると、同じようにMKに通っていた。
その旦那が、倒れて、記憶を失くす。
家を建てた事も覚えてない。
4人目の子供も覚えていない。
それを目の当たりにした、嫁は、どう、感じるだろうか。
それに、どう、向き合うだろうか。
どれだけの想いを1人でしょい込むのだろうか。
雪穂が泣き崩れる姿を、僕は想像していた。
別会社への異動で、給料が下がる事も聞いていた。
古賀さんに強引に手を引っ張られていた雪穂は、口を手で押さえながら、泣きそうになりながら、気まずさを隠しきれていなかった。
「おお!まじで!?」
と僕はテンションが上がったのだが、彼女は気まずさに耐え切れなかったのだろう。またすぐに元の席に戻ったかと思うと、今度はカウンターの中に立ち、座っていた支社長と話をし出した。元々、雪穂と親交のあるスナックだとは前から聞いていた。
支社長はあの事件から、会議室での対談、もろもろとあった事を知っているので、唯一話せるような存在だったであろう。
それをボックスで座って見ながら、酔っ払いの相手をしていた僕は、とうとういてもたってもいられなくなり、カウンターの支社長の横へ座ったのだった。
雪穂は黒いキャップをかぶっていた。
前述した通り、僕はちゃんと顔を見た事も、ちゃんと喋った事もなかったのだった。僕はもろもろずっと喋りたいと思っていた。
「かわいいやん。」
僕はいつものように、雑にお決まりの一言目を言い放った。前評判からすると、やはり僕には分からなくて、ただ単純に好みじゃない、それだけなのかもしれないが、この時の「かわいい」という言葉は僕からすれば社交辞令以外の何物でもなかった。
すると、雪穂はこう言ってのけた。
「当ったりまえやん……。」
「しょうちゃんの嫁が可愛くなくて勤まるはずないやん…」
一言も喋った事もない正造の嫁からの第一声はこれだった。
確かにお互い酔ってはいたものの、その一言で、夫婦間、彼女の人間性、友人関係、その全てが見えたような、そんな感覚になり、僕はその予想外の言葉に戸惑いを隠せず、ただグラス片手に愛想笑いを浮かべるしか、なかったのである。
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