48 / 81
ナチュール 5
しおりを挟む
これに関しても1日中悩んでいた。
すぐにでも、まきに伝えたかった。
ただ、それはまきにとって、まきを困らせてしまう、無駄に考えさせてしまう要因の一つだと思い、僕は躊躇していた。
僕自身、冷静な判断ができるような精神状態でもなかったし、これをただ単に、まきに聞いて欲しかっただけなのかもしれない。何をどうすべきで、何が正解なのかが、自分の中でも分からなかった。
ドラマのような出来事であるが故に、ほんの少し、また、ドラマのように記憶が蘇る、そんな可能性も少しは考えられた。しかしながら、その後の、ポツリポツリと入ってくる情報を聞いていくと、おそらくそれは、ないんだろうと僕は判断していた。
しかしながら、契約をもらって、MKにお世話になって、工事をして、そのお礼にフレンチに行った、5日後の事だけに、担当した営業員に起きた事は、遅かれ早かれ、伝えるべきだった。個人的な感情論のみならず、会社としての契約がある限り、僕はまきとの契約についてフォローする必要があった。この事を知られた最悪の場合の「解約」も考えられたからだった。
僕は中指と人差し指、2本立てて言った。
「手短に。2つあるんよ。まず、正造が倒れて病院に運ばれた。」
まきの細い目が、大きく開いた。
「もう一つ、ここ一年半の記憶がならしい。」
「…まじ…?」
まきは深いため息をついて、頭を抱えた。少し間を開けて
「…アイツ…、ものすごく言いたい事があるっちゃけど…。」
と喉に手をあてて、言った。
「ほんとにもう、ここまで出かかってるっちゃけど。」
呆れたように怒り笑いながら、まきは言ってきた。
明らかに、この契約うんぬんの話ではなく、他の何かがある、そんな言い回しだった。ただ、その場で聞く事なんてとてもできなかった。
「まきは絡みが大きいから…、本当に申し訳ありません。」
僕は頭を下げた。これまでの経緯を考えると、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
何もかも僕の発案。僕がけしかけた話だった。
「今後、こちらは僕が担当させて頂きます。」
間髪入れずに、まきは早口で強く言った。
「当たりまえよ!」
それから僕は、そのまきの言った事について、探ろうとはしなかった。
正直もう、大体分かっていたが、それをはっきりさせるような必要はどこにもなかった。
女の子をご飯を食べにいっても、MKの中での会話でも、何が起こっていたのかなんて聞く事は野暮ったく思え、そしてそれを知ったところで、それを明らかにしたところで、問い詰めたところで、当の本人から返ってくる言葉は
「覚えてません」
それ以外にない事は、分かり切っていたんだから。
すぐにでも、まきに伝えたかった。
ただ、それはまきにとって、まきを困らせてしまう、無駄に考えさせてしまう要因の一つだと思い、僕は躊躇していた。
僕自身、冷静な判断ができるような精神状態でもなかったし、これをただ単に、まきに聞いて欲しかっただけなのかもしれない。何をどうすべきで、何が正解なのかが、自分の中でも分からなかった。
ドラマのような出来事であるが故に、ほんの少し、また、ドラマのように記憶が蘇る、そんな可能性も少しは考えられた。しかしながら、その後の、ポツリポツリと入ってくる情報を聞いていくと、おそらくそれは、ないんだろうと僕は判断していた。
しかしながら、契約をもらって、MKにお世話になって、工事をして、そのお礼にフレンチに行った、5日後の事だけに、担当した営業員に起きた事は、遅かれ早かれ、伝えるべきだった。個人的な感情論のみならず、会社としての契約がある限り、僕はまきとの契約についてフォローする必要があった。この事を知られた最悪の場合の「解約」も考えられたからだった。
僕は中指と人差し指、2本立てて言った。
「手短に。2つあるんよ。まず、正造が倒れて病院に運ばれた。」
まきの細い目が、大きく開いた。
「もう一つ、ここ一年半の記憶がならしい。」
「…まじ…?」
まきは深いため息をついて、頭を抱えた。少し間を開けて
「…アイツ…、ものすごく言いたい事があるっちゃけど…。」
と喉に手をあてて、言った。
「ほんとにもう、ここまで出かかってるっちゃけど。」
呆れたように怒り笑いながら、まきは言ってきた。
明らかに、この契約うんぬんの話ではなく、他の何かがある、そんな言い回しだった。ただ、その場で聞く事なんてとてもできなかった。
「まきは絡みが大きいから…、本当に申し訳ありません。」
僕は頭を下げた。これまでの経緯を考えると、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
何もかも僕の発案。僕がけしかけた話だった。
「今後、こちらは僕が担当させて頂きます。」
間髪入れずに、まきは早口で強く言った。
「当たりまえよ!」
それから僕は、そのまきの言った事について、探ろうとはしなかった。
正直もう、大体分かっていたが、それをはっきりさせるような必要はどこにもなかった。
女の子をご飯を食べにいっても、MKの中での会話でも、何が起こっていたのかなんて聞く事は野暮ったく思え、そしてそれを知ったところで、それを明らかにしたところで、問い詰めたところで、当の本人から返ってくる言葉は
「覚えてません」
それ以外にない事は、分かり切っていたんだから。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる