カルバート

角田智史

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 福岡事変 2

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 憤慨していた僕は、しずかにLINEした。
 〔ご飯も別々はあんまりなんじゃないん?〕
 〔何が?〕
 としずかから返信がきたので
 〔福岡行くっちゃろ?〕
 と送った。

 そのLINEからだった。
 無駄な時間、暴走する山之内への恐怖、どうやっても受け入れられない、自分の中での感覚、不調和音。

 それから、しずかは山之内にもう福岡には一緒に行かない、とLINEしたようだった。それは誰にも言わない、という約束を破ったからだ、というものだった。

 始まったのは、山之内のしずかへばらした犯人捜しだった。

 誰にも言わないで、と自分で言ったわりには、僕、そして、正造、そしてもう一人の社員に言っているようだった。
 それは、電話で、何も顧みずに、確認の連絡があった。家族がいる、だとかそういう事は全く彼に関係ない事だった。もちろん、僕は電話に出ずにLINEでお願いしますとお願いしたが、一向に関係ないようだった。
 何を言っても、聞かない、それも分かっていたし、何より、そんな決して浮かばれないキャバ嬢との話をわざわざ家庭の時間を削ってしないといけないのか。
 逃げ切れそうにない、そう思った僕は22時指定で電話を掛ける事にした。それをしなければ、家まで押しかけると思ったのだ。この僕の反応は過剰なものではない。何故なら一度、山之内は正造の家の下まで来ていた事があったからだ。
 それは、しずかが大分にいてピンチだから、俺も行く。一人じゃ寂しいから正造も一緒に行くぞ、というわけの分からないものだった。4人の子供がいる事を承知で夜、正造のアパートの下に車を停めて暫く待っていたようだった。さすがに正造は「ムリです」と繰り返してその日は事なきを得たようだったが、
 「山之内さんはマジでヤバいっす!」
 と、僕は次の日報告を受けていた。

 家まで行くぞと脅された時の為に、僕は歩きながら近くのコンビニに向かった。電話に出た彼は、今、思い返しても、身の毛がよだつような雰囲気だった。
 「どゆ事やおまえ?どゆ事やおまえ?あ?。」
 「いやだって、あんまりでしょ。福岡まで行ってそれって。」
 「誰にも言うなって言ったやろが?あ?。」

 ずっと分からない事があった。
 それは、山之内が何がしたいのかだった。
 セックスしたい、とか、付き合いたい、とか、そう言う事であれば、助言はできた。ただこれを彼に聞いたところで、その答えは返ってきた事はなかった。
 「いや、あの、どうしたいんですか?。」
 ごちゃごちゃと変わらず言ってくる彼に僕はもう一度言った。
 「結局、どうしたいんですか?。」
 「あ?そういうのはどうでもいいっつよ、とりあえず犯人は分かったかいよ。」
 山之内は電話を切ったが、それからもLINEでの攻撃は続いた。
 
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