最後の晩餐レストラン

冷やかし

おやおや、あなた、またいらしたんですか。

困りますね。ウチは基本一期一会でやっております。常連客はお断りなのです。
　
いつの間にか当たり前の様にカウンターの席に座っている全身包帯だらけの男を追い払うため声の主の白髪で白い肌をしたアルビノエプロンするの女が困り顔をしながら出てきた。

女は呆れたながらこう言った。
そもそも、この店に転生もせずに何度もくる何て。あなた相当身体が丈夫な自殺者か、相当悪運が強い不運さんのどっちかでしょうね。

来たくて来たわけじゃない。気づけばいつもここにいるんだ。シロさん。今日はいつもの信号娘と巨人は留守か。

はい。店長とムノーちゃんは買い出しです。ここの料理は現世の食材で作ってますから仕入れは全部現世に行って買わないと行けないんです。

そうか。まあ。せっかく、来たんだ。料理の一つくらい出してくれよ。後俺は野笠　作だ。ここにくるのも三回目だ。覚えてくれ。

それは出来ません。私、冷やかしの顔覚える程暇じゃないんです。それに、あなたはまだ死んでいません。だから、料理はだせません。

良いだろ。ちょっとくらい。ほら、おれまだ若いのに。寝たきりで食事も出来ないんだよ。ずっと点滴で生きてる状態なんだ。

でも、ここなら、ほら立って歩けるし。こうして話せる。

後は食事さえ取れれば完璧さ。なあ頼む。ちょっとで良いから。

ダメです。あなたはこのまま遺族が満足するまで死ねないんです。

そんな。うっ。痛い。痛い痛い痛い痛い。痛い痛い痛い痛い。痛い。何で、急に。またか。

良かったですね。まだ生きられるみたいですよ。意識のないまま。

シロは面白そうに笑いながらこう言った。
貴方の遺族は意識のない貴方でも愛してる見たいですね。ああ。なんと。深い愛なんでしょう。生殺にして苦痛を与え続けてまで生きて欲しい何て。苦痛を伴う愛。幸せですね。元気な内に愛せなかったからこうして最後の最後にありったけの愛をもう後悔しない様に注いでるんですよ。
どうですか。愛の味は存分に味わって下さい。

男は苦痛にもがき泣きながら助けを求めた。
頼む。助けてくれ。もう嫌だ。ここにいたい。もう辛いのは嫌だ。死にたくて自殺したのに。何でだ。嫌だ。こんな愛いらない。

あらあら。そんな事言ったら家族が悲しみますよ。それに普通逆じゃないですか。皆んな死にたくないって泣き叫ぶのに。あなたって生きたくないって泣くなんて。

細目の彼女は目を大きく開いてこう言った。
失礼な奴だな。生きたくても私は生きらないのに。

そう言うと彼女はいつもの穏やかな顔に戻ってこう言った。
ほらほらどんどん透けてきてますよ。　
じゃあ。行ってらしゃい。今度は客として来てくださいね。　　

男が消えた後シロは小声で呟いた。
本当に医療って何なんでしょうね？