十二支vs十二星座

葛藤

返せ。俺の仲間を返せ。

あなたにも仲間の声が聞こえる様にしてあげましょう。
その瞬間、石板が光り輝き、ホロケウカムイの中に吸い込まれる様に身体の中に入り始めた。
ホロケウカムイは苦しみ叫び声をあげた。

ヴァァァァァァァァァァ。何だ。これは。

ヴァルノは複雑な顔をしながらこう言った。
これは彼らの記憶。そして、彼等の思いです。
友よ。友よ。
その声はチロンヌプカムイ。

友よ。もうやめてくれ。私達の為に苦しまないでくれ。なあ。終わりは確かに悲しいだが。だが、それは最高の喜びでもあるんだ。俺達はやり切ったって事だよ。紙のいらない強い民に導く事を。物事は終わりを迎えて初めて完成するんだ。
やっと俺は一人前になれたんだ。

そう言うと声は消えた。待ってくれ。友よ。まだお前と話したい事が。

ホロケウカムイ。その辺にしとくがいい。過ぎた事を惜しむな。

その声は爺さん。


わしは嬉しいんじゃ。アイヌの終わりに向き合えてなあ。アイヌと共に滅びれる事がな。終わりを迎えられず知らない間に人々に忘れられた同胞に胸を張って会いに行ける。

爺さん。まだ行くには早いだろ。こんな未熟者置いて行っちまったんじゃ笑われちまうだろ。


宿敵よ。終わりを受け入れるのだ。我が牙も我が爪も役目を終えたのだ。もう切り裂くべき敵はいないのだ。あると、すればそれは己の弱さだ。

うるさい。俺はまだお前に勝ててない。勝ち逃げは許さんぞ。切り裂くべき敵ならまだここにいるだろ。おい。もう一度俺と戦え。頼む。置いていかないでくれ。
ホロケウカムイの目から涙が溢れて頬をつたい地面に落ちた。

分かりましたか。これがあなたの仲間の声なのです。これが現実なのです。

そうか。分かった。ありがとよ。ヴァルノさんよ。最後に頼みがある。

何ですか。

最後に俺はアイヌ神として全力で戦う。その相手をしてくれ。

言われなくてもそのつもりです。　

みんな先に待っててくれ。

その瞬間、ホロケウカムイはアイヌ神としての本来の姿に変わった。

身体中から取り込んでいたアイヌ神達が身体中から抜け出して煙の様に光ながら天に登りながら宙に溶けて消えた。

さあ。最後の勝負です。ホロケウカムイは本来の武器名刀氷狼を取り出し構えた。それは必殺の居合の構えだった。