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異界の剣士

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その侍は身長は小柄で顔はあまり良いほうではなかったが目だけは非常に澄み切った良い目をした男だった。 
侍は勇者の前に歩み寄るとはっきりとこう言った。

「遊佐とか言ったか。拙者はこの江戸中の岡っ引きを取り仕切る同心 小谷 平次である。お主を取り囲んでおるのはわしの部下である岡っ引きの連中だ。その腰に差した刀から察するにお主も剣士とお見受けする。どうだろう。お主も剣士なら自分の身の潔白はその腰に差した剣で証明して見せるというのは。」

そう言うと小谷は懐から木刀を数本取り出して岡っ引きの連中や勇者に投げつけた。

そして、岡っ引きの連中や勇者が木刀を受け取ったのを見るとドヤ顔で説明を始めた。

「試合形式はそうだな。岡っ引き連中から一本取って見ろ。一対一でな。岡っ引き連中を倒しこの拙者から一本取れたらお主の不法滞在の件見なかった事にしてやろう。ただしお主が拙者らに一本でも取られた時は容赦なくお縄とするからな。まあ、こちらとしても本来即お縄になるところを挽回する機会を与えてやってるんだ。これくらいの不利な条件は飲んでもらおうか。」

小谷は薄ら笑いを浮かべながら勇者を見ながらこう言った。

「まあ、この勝負受けるも受けないもお主次第だがな。その場合は容赦なくお縄にして、お奉行様の裁きをうける事になるがな。お主も剣士なら挑まれた勝負から逃げるなんて事しないであろうがな。」

勇者は小谷の目をまっすぐ見つめてこう言った。

「もちろん。受ける。それで私の無実が証明できるならその試合お受けしましょう。」

こうして、異界の剣士同士の戦いが始まった。

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