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EPISODE.3
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「ふぅ…」
ユノは一息つく。青年は呼吸を正常に取り戻し、魔症の進行も治まっている。とりあえず峠は超えただろうか。
ユノは少しの血液を小瓶に入れると、額を覆っていた汗を拭ってナイフを元あった場所へと置く。腕にあった傷口は既に塞がり始めており、血は完全に止まっていた。
これは魔人の呪いだ。傷ついても直ぐに再生し、歳をとることもない。不老不死の呪い。悪魔との契約による代償。
外に散らばった青年の持ち物を回収しようと、ユノは外に出た。するとローマンが恰幅のいい体を揺すって奥から走ってくるのが見えた。
「ユノさん!大丈夫ですか!」
ローマンの問にユノは「あぁ」と無愛想に返事をするだけで、何かを気にかける様子は無い。これは決して魔人だから等ではなく、ただ、ユノがそういう性格なだけだ。
「なら、良かった。近くでハインドルの街に向かう商隊が魔獣に襲われたみたいで。危ないんで戻ってきたら鎧が脱ぎ捨てられてて焦りましたよ」
フーフーと息を切らし、汗を全身からかきながらローマンは事情を伝える。
ユノは青年がここに辿り着いた理由を察するものの、この時間に魔獣が出た事と、青年が魔症に襲われていた謎が深まる。深く考えても仕方が無いので、とりあえずは青年をどうするかを考える事にした。
「ローマン、俺はその現場を確認してくる。その間、申し訳ないけど中にいる青年を看病してくれないか。お金は勿論払う」
ユノの言葉にローマンは驚いた顔をしたが、「ドンと任せてください!」と快く引き受ける。
青年は先程までとてもじゃないが周りを確認できる状態じゃなかった。これで魔人に助けられたという事は隠し通せるだろうと、ユノはローマンに全て丸投げする事にした。
「青年が起きたら適当に帰らせてくれ。それまでにもし何かあるようだったらこれを飲ませてくれ」
ローマンは不思議そうな顔をしながら頷き、ユノから小瓶を受け取る。真っ赤な液が入ったその小瓶にはユノの血が入っていた。
「それと、ついでにその辺の物全部部屋に運んでおいて欲しい。起きたらベッドの彼に渡しといて」
「今日は一段と注文が多いですね」
「無理か?」
「いえいえ!ユノさんの初めて人間らしさを見た気がします」
「フッ、人間らしさね…」
「あ、笑った顔も初めて見たかも!」
魔人に人間らしさなんて皮肉の様に聞こえるが、きっとローマンは本心からそういったのだろう。
ユノの無関心にいつも積極的に対応するローマン。彼の行動がどこかで少しくらいはユノを救っているのかもしれない。
「あとは頼む」
ローマンとユノは魔人にとっては短い、人間にとっては長い付き合いだ。きっとその年月からくる信頼からその言葉は出たのだろう。
ユノは一息つく。青年は呼吸を正常に取り戻し、魔症の進行も治まっている。とりあえず峠は超えただろうか。
ユノは少しの血液を小瓶に入れると、額を覆っていた汗を拭ってナイフを元あった場所へと置く。腕にあった傷口は既に塞がり始めており、血は完全に止まっていた。
これは魔人の呪いだ。傷ついても直ぐに再生し、歳をとることもない。不老不死の呪い。悪魔との契約による代償。
外に散らばった青年の持ち物を回収しようと、ユノは外に出た。するとローマンが恰幅のいい体を揺すって奥から走ってくるのが見えた。
「ユノさん!大丈夫ですか!」
ローマンの問にユノは「あぁ」と無愛想に返事をするだけで、何かを気にかける様子は無い。これは決して魔人だから等ではなく、ただ、ユノがそういう性格なだけだ。
「なら、良かった。近くでハインドルの街に向かう商隊が魔獣に襲われたみたいで。危ないんで戻ってきたら鎧が脱ぎ捨てられてて焦りましたよ」
フーフーと息を切らし、汗を全身からかきながらローマンは事情を伝える。
ユノは青年がここに辿り着いた理由を察するものの、この時間に魔獣が出た事と、青年が魔症に襲われていた謎が深まる。深く考えても仕方が無いので、とりあえずは青年をどうするかを考える事にした。
「ローマン、俺はその現場を確認してくる。その間、申し訳ないけど中にいる青年を看病してくれないか。お金は勿論払う」
ユノの言葉にローマンは驚いた顔をしたが、「ドンと任せてください!」と快く引き受ける。
青年は先程までとてもじゃないが周りを確認できる状態じゃなかった。これで魔人に助けられたという事は隠し通せるだろうと、ユノはローマンに全て丸投げする事にした。
「青年が起きたら適当に帰らせてくれ。それまでにもし何かあるようだったらこれを飲ませてくれ」
ローマンは不思議そうな顔をしながら頷き、ユノから小瓶を受け取る。真っ赤な液が入ったその小瓶にはユノの血が入っていた。
「それと、ついでにその辺の物全部部屋に運んでおいて欲しい。起きたらベッドの彼に渡しといて」
「今日は一段と注文が多いですね」
「無理か?」
「いえいえ!ユノさんの初めて人間らしさを見た気がします」
「フッ、人間らしさね…」
「あ、笑った顔も初めて見たかも!」
魔人に人間らしさなんて皮肉の様に聞こえるが、きっとローマンは本心からそういったのだろう。
ユノの無関心にいつも積極的に対応するローマン。彼の行動がどこかで少しくらいはユノを救っているのかもしれない。
「あとは頼む」
ローマンとユノは魔人にとっては短い、人間にとっては長い付き合いだ。きっとその年月からくる信頼からその言葉は出たのだろう。
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