94 / 198
〇月×日『大事にしたい』
しおりを挟む
「今どき小学生でもこの時間には寝ないだろ」
夜、ノックもなしに部屋に入ってきたのは矢野くんだった。
僕は布団の中から顔を出して矢野くんを見上げた。
「……さ、寒いから……」
「お前の部屋暖房置いた方がいいぞ」
そう言うと、矢野くんは僕をベッドの端に追いやって自分も布団の中に潜り込んでくる。
「ぇ、なに……」
「寒いから?」
「……、」
だからってシングルベッドに男2人は狭い。
というより、この矢野くんの行動、良くないんじゃないだろうか。
「……矢野くん、誰にでもこんなふうにしない方がいいよ?」
「お前にしかしねーよ」
「……、……先輩は、嫌がるんじゃないかな…」
「今更お前相手に嫉妬なんかしないって」
僕だったら絶対にするけど。
「……何か用があるの?」
気を取り直して尋ねると、矢野くんは珍しく口篭った。
「…………お前さ、俺のセックスどうだった?」
「…………。ぇ、……えっ?」
思わず赤面してしまった。
まさかそんなことを聞かれるとは思ってもいなくて、顔が熱い。
「なぁ、どうなんだよ」
恥ずかしくて布団を頭までかぶると、呆気なく矢野くんに剥がされる。
おずおずと矢野くんを見上げると、矢野くんも照れくささが無いわけでもなさそうで、少し耳が赤く染まってる気がした。
「……なんで急に、そんなこと聞くの……?」
「…………………………別に。なんとなくだよ」
ものすごい間があった。
僕に言いづらい理由?
簡単に想像がついてしまった。
「先輩に何か言われたの?」
矢野くんの蒼い瞳が揺れる。
図星なんだろう。
「いいよ、話して?」
どんな内容にせよ、矢野くんが僕を頼ってくれることなんて珍しいんだ。
傷つくとわかっていても力になってあげたい。
「今まで、相手を良くしようと思ったことなかったから、気になって」
「……先輩のこと、大事なんだね」
「当たり前だろ。」
「…………あの、大丈夫だとおもう…」
「大丈夫て?良いってことか?」
「んー……悪くはない……?」
「はぁっ?」
矢野くんが勢い良く起き上がる。
「矢野くんっ、ざ…雑だから……」
「雑!?」
まずい。
何を言ってもダメな気がしてきた。
「どこが雑なんだよ」
矢野くんは半分くらいキレてる。
「……ぜ、前戯とか?」
「……、」
矢野くんは信じられないものを見た、と言いたげな顔で僕を見下ろして、長いため息をついた。
「マジかよ……」
「もうちょっと、優しくして欲しいと思う……、矢野くんについていけなくて、待ってほしいなって思う時があったから……」
「………待ってほしい、か………そういや、あの人も言ってた」
「え?」
「いや、……なるほどな。わかった。」
自分の中で何か納得したようで、矢野くんは数回頷くとまた布団の中に潜り込んだ。
「ぇ、帰らないの?」
「寒いし、面倒だから泊まってく」
…………いいのかな。
先輩を大事にしたくて僕に聞にくい話を聞きに来たのはいいけど、この状況を先輩はよく思わない気がする。
幼馴染みだけど、僕は矢野くんが好きだ。
矢野くんはやましい気持ちがなくても、僕達の間には確かに肉体関係があった。
先輩はそれを知ってる。
篤也さんと3人で共同生活をしている時のことがあったんだ、よくは思わないはずだ。
「……、」
布団から出て、クローゼットから布団を引っ張り出す。
「ゆず?」
矢野くんが布団から顔を出す。
「矢野くんはそこで寝ていいよ。僕はこっちで寝るから」
床に布団を敷いて、横になる。
掛け布団を肩までかけて寝の体勢にはいるが、矢野くんが体を起こして僕を見下ろす。
「一緒に寝ればいいだろ」
「……駄目だよ。」
「なんで。」
「先輩嫌がるよ?大事にしたいんでしょ?」
「……」
矢野くんは少し考えたあと、横になった。
どうやらわかってくれたみたいだ。
「おやすみ、矢野くん」
「……おやすみ」
同じ部屋なのに同じ布団で寝ないのは初めてかもしれない。
でも、これが正しい。
ただの幼馴染みなんだから。
夜、ノックもなしに部屋に入ってきたのは矢野くんだった。
僕は布団の中から顔を出して矢野くんを見上げた。
「……さ、寒いから……」
「お前の部屋暖房置いた方がいいぞ」
そう言うと、矢野くんは僕をベッドの端に追いやって自分も布団の中に潜り込んでくる。
「ぇ、なに……」
「寒いから?」
「……、」
だからってシングルベッドに男2人は狭い。
というより、この矢野くんの行動、良くないんじゃないだろうか。
「……矢野くん、誰にでもこんなふうにしない方がいいよ?」
「お前にしかしねーよ」
「……、……先輩は、嫌がるんじゃないかな…」
「今更お前相手に嫉妬なんかしないって」
僕だったら絶対にするけど。
「……何か用があるの?」
気を取り直して尋ねると、矢野くんは珍しく口篭った。
「…………お前さ、俺のセックスどうだった?」
「…………。ぇ、……えっ?」
思わず赤面してしまった。
まさかそんなことを聞かれるとは思ってもいなくて、顔が熱い。
「なぁ、どうなんだよ」
恥ずかしくて布団を頭までかぶると、呆気なく矢野くんに剥がされる。
おずおずと矢野くんを見上げると、矢野くんも照れくささが無いわけでもなさそうで、少し耳が赤く染まってる気がした。
「……なんで急に、そんなこと聞くの……?」
「…………………………別に。なんとなくだよ」
ものすごい間があった。
僕に言いづらい理由?
簡単に想像がついてしまった。
「先輩に何か言われたの?」
矢野くんの蒼い瞳が揺れる。
図星なんだろう。
「いいよ、話して?」
どんな内容にせよ、矢野くんが僕を頼ってくれることなんて珍しいんだ。
傷つくとわかっていても力になってあげたい。
「今まで、相手を良くしようと思ったことなかったから、気になって」
「……先輩のこと、大事なんだね」
「当たり前だろ。」
「…………あの、大丈夫だとおもう…」
「大丈夫て?良いってことか?」
「んー……悪くはない……?」
「はぁっ?」
矢野くんが勢い良く起き上がる。
「矢野くんっ、ざ…雑だから……」
「雑!?」
まずい。
何を言ってもダメな気がしてきた。
「どこが雑なんだよ」
矢野くんは半分くらいキレてる。
「……ぜ、前戯とか?」
「……、」
矢野くんは信じられないものを見た、と言いたげな顔で僕を見下ろして、長いため息をついた。
「マジかよ……」
「もうちょっと、優しくして欲しいと思う……、矢野くんについていけなくて、待ってほしいなって思う時があったから……」
「………待ってほしい、か………そういや、あの人も言ってた」
「え?」
「いや、……なるほどな。わかった。」
自分の中で何か納得したようで、矢野くんは数回頷くとまた布団の中に潜り込んだ。
「ぇ、帰らないの?」
「寒いし、面倒だから泊まってく」
…………いいのかな。
先輩を大事にしたくて僕に聞にくい話を聞きに来たのはいいけど、この状況を先輩はよく思わない気がする。
幼馴染みだけど、僕は矢野くんが好きだ。
矢野くんはやましい気持ちがなくても、僕達の間には確かに肉体関係があった。
先輩はそれを知ってる。
篤也さんと3人で共同生活をしている時のことがあったんだ、よくは思わないはずだ。
「……、」
布団から出て、クローゼットから布団を引っ張り出す。
「ゆず?」
矢野くんが布団から顔を出す。
「矢野くんはそこで寝ていいよ。僕はこっちで寝るから」
床に布団を敷いて、横になる。
掛け布団を肩までかけて寝の体勢にはいるが、矢野くんが体を起こして僕を見下ろす。
「一緒に寝ればいいだろ」
「……駄目だよ。」
「なんで。」
「先輩嫌がるよ?大事にしたいんでしょ?」
「……」
矢野くんは少し考えたあと、横になった。
どうやらわかってくれたみたいだ。
「おやすみ、矢野くん」
「……おやすみ」
同じ部屋なのに同じ布団で寝ないのは初めてかもしれない。
でも、これが正しい。
ただの幼馴染みなんだから。
1
お気に入りに追加
375
あなたにおすすめの小説
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
【本編完結済み】朝を待っている
は
BL
幼い頃に父を亡くし、母子二人で暮らしていたオメガの太一。しかし最愛の母も中学生の頃に他界し、親戚の家で肩身狭く暮らしていた太一だったが、高校に入学したその日に運命の番いと出会ってしまう事に……。
淡々とゆっくり進む高校生同士のオメガバース話です。
*マークはほんの少しモブレ未遂の表現がございますのでご注意ください。
本編完結済み。
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる