ヤノユズ

Ash.

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○月×日『Too late⑤』

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学校の教室。
矢野くんはいつも通り僕の席の側まで来て座ってる。
けど、今日は心ここに在らずと言った感じだ。
でもこれは今に限った話じゃない。
朝からこんな感じだ。
僕を迎えに来てくれた時も、授業中も、今のお昼休みも。

「……昂平くん、お昼休み終わっちゃうよ?」

「え?……ああ、そっか」

返事はしてくれるけど、箸を動かす気配はない。

「……あーんして?」

卵焼きを矢野くんの口元まで運ぶと、素直に口を開けてくれたので、食べさせてあげる。

「まだ食べれる?」

「ん。」

食欲はあるみたいなので、矢野くんの好物は全部食べさせた。
体調が悪いわけでも無さそうだ。
ただ上の空なだけ。

……あれから将平くんの様子はどうかとか、聞きたいこと沢山あったんだけど、この感じじゃ無理そうだ。

……何か悩みでもできた?
勉強のこと?……それか、将平くんのことかな……?

「……昂平くん、」

少し控えめに、小声で呼びかけながら矢野くんに顔を寄せる。
矢野くんの青い瞳が僕を見下ろす。

「……将平くん、元気?」

「えっ……兄貴?」

えっ、て……
そんなに驚くこと?
元気?て聞いただけなんだけど……

「ねぇ、何かあった?喧嘩したの?」

「喧嘩?いや、してねぇよ…」

「昂平くん、朝から変だよ?ずっとボーとしてるもん。」

「…………、まぁ、ちょっと気になることあってな」

気になること……

「それって、将平くんのこと?」

「ああ……」

「……、」

矢野くんをじっと見つめるけど、続きを話してくれるつもりはないらしい。

「……」

今日1日、ずっとこんな感じで、ずっと話してくれないつもりなんだろうか……?

「……家、」

「え?」

「ゆずんちで話す」

「ぁ……うん、」

どうやら話してくれる気はあるみたいだ。
けど、学校じゃできない話しなのかな……?
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