ヤノユズ

〇月×日『目撃②』

「え」

思わず発してしまった。
驚く光景を目にして。

昼休み、中庭で歩くんとお昼ご飯を一緒に食べている時だった。
正面に座る歩くん越しに矢野くんの姿を発見した。
けど、驚くのは矢野くんの隣にいる人物。

矢野くんの隣に、花村さんがいた。
なんであの二人が一緒に……？
クラスメイトだから、一緒にいてもおかしくはない。
けど、矢野くんは花村さんにいい感情を持っていなかったはず。
好き好んで花村さんと二人で居たりするはずない。

…………もしかして、

「……、」

目の前に座る歩くんを見る。
相変わらずの整った顔で綺麗な所作でお弁当をたべてる。
彼が、僕の恋人になったから……？
歩くんは僕と付き合うために花村さんとの関係を終わらせた。
歩くんが離れていったから、また矢野くんに？

「ぁ、」

考え事をしている内に、矢野くんと花村さんを見失ってしまった。

「どうかしました？」

歩くんが僕の顔を不思議そうに見つめる。

「ううん、なんでもない」

先日の休日デートの時みたいな焦燥感が芽生える。
矢野くんの目の前で歩くんとの交際を宣言して、やっぱり矢野くんとの間に距離ができてしまった。
だから矢野くんがいつ誰と会ってるかなんてわからない。
誰と会ってたって、関係ないんだろうけど、ないんだろうけど…………山梨先輩の次は花村さんて……なんで？

矢野くん、何考えてるんだろ……