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〇月×日『エース』
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一条寿志
29歳
身長188cm
B型
営業部のエースで、社内の誰もが彼を知ってる。
そんな彼と、一夜の過ちを……いや、事故を起こしてしまった。
最悪だ。
最悪……
会社行きたくない。
休みたい……
朝から気分が悪い。
あんなに酒には気をつけてたのに…………また同じ過ちを繰り返すことになるとは夢にも思わなかった。
「はぁ……」
自宅から会社までは徒歩通勤。
その間にいったい何回ため息がでたことか……
一条さんは自分とは部署が違う。
鉢合わせになる可能性はほぼ無い。
でも万が一顔を合わせたらどうすればいいのか……。
あの日はパニックで逃げ帰ってしまった。
週末だったことには安心したが、会社は週休二日制。
二日のうちに策を練ろうと思い悩んだものの何も浮かばなかった。
万が一があったら、謝ろう。
もうそれしかない。
一条さんがどんな人かは知らないけど、言いふらしたりはしないはずだ。
一条さん自身になんのメリットもないんだし、それにきっと一条さんにとっても最悪の出来事だったに違いない。
謝って、謝って…………許してもらえなかったら、会社、辞めなきゃいけないとこまでいってしまうんだろうか……
「おはよう」
やばいやばい、考え事をしているうちに会社についてしまった。
ここは会社だ、気持ちを切り替えなきゃいけない。
気持ちは重く沈んでるけど、顔を上げて挨拶を返す。
「おはようございま……」
挨拶を言い切る前に、体が固まった。
目の前にはビシッとスーツできめた一条さんがいた。
万が一がこんなに早く来てしまうなんて……
「……おはようございます……」
バッチリ視線が合ってしまったのを、さり気なく外して挨拶を言い直す。
足は止めずに一条さんの横を通り過ぎる。
万が一が起こったら謝るんじゃなかったのか、自分……!
心の中で叫びながら、背中を小さくしてそそくさと過ぎ去ろうとしたが、大きな手で肩を掴まれて阻まれてしまった。
「おい、冷たいんじゃないの?俺たちもう知らない仲じゃないだろ?」
肩にのせられた手がスマートに移動して肩を抱く形になる。
耳元で囁くように言われて、思わず顔が熱くなった。
完全に足は止まってしまって、顔は下を向いてしまった。
どうしていいか固まってると、一条さんに肩を抱かれたまま会社の中に引きずられる。
途中すれ違う社員に冷やかされたが、一条さんはスマートに交わしていた。
人気のない埃っぽい部屋に連れ込まれて、やっと一条さんは肩を抱いていた手を外してくれた。
「早速だけど、金曜のことどこまで覚えてる?」
金曜……飲み会のあった日、あの夜のことを言ってる。
まぁ、一条さんがそれ以外の理由で僕に話しかけることはないだろうけど。
「……、……ベッドに、寝かせてもらって、介抱してもらいました……」
「その後は?何回ヤったか覚えてるか?」
「ヤ……っ?」
なんて直球を投げてくるんだ、この人は……
「……全く、覚えてないです……、ただ、そういうことしたのは、雰囲気で……」
しどろもどろで話しながらまた顔が熱くなってくる。
だって、僕は今目の前にいる人とセックスしたんだ。
「ふぅん、なるほどね。」
呆れてるのかな……
あんなことしといて覚えてません、なんて。
恐る恐る一条さんを見る。
長身の一条さんの顔は、見上げる高さにある。
長い手脚、高そうなスーツを着こなしていて、モデルのようだ。
整髪剤で整えられた黒い髪が彼の魅力を際立たせていて、たまらなくセクシーで、これが大人の男なのかと思わされる。
ドキマギして冷や汗をかいてる僕とは違って、涼しそうな顔で僕を見ている。
余裕たっぷりな感じが、すごく怖い。
「まぁ俺も三十路だし、それなりに経験はしてきてるが男と寝たのは初めてだ。けど山梨は経験あるんだな」
「え、」
「先輩、先輩~て言ってたけど、彼氏か?」
「……………………違います」
呆れた……
また、先輩を求めてたのか。
また先輩を求めて、先輩じゃない人と寝たのか、僕は。
「まぁ、悪かったよ。お互い酔ってたわけだしさ…………おい、大丈夫か?」
先輩じゃない人と……
……気持ち悪い。
…………気持ち悪い……
「おい、」
しゃがみ込む僕を、一条さんが支えてくれる。
急にリアルに感じたんだ。
先輩……
僕はまた……
先輩……先輩…………
29歳
身長188cm
B型
営業部のエースで、社内の誰もが彼を知ってる。
そんな彼と、一夜の過ちを……いや、事故を起こしてしまった。
最悪だ。
最悪……
会社行きたくない。
休みたい……
朝から気分が悪い。
あんなに酒には気をつけてたのに…………また同じ過ちを繰り返すことになるとは夢にも思わなかった。
「はぁ……」
自宅から会社までは徒歩通勤。
その間にいったい何回ため息がでたことか……
一条さんは自分とは部署が違う。
鉢合わせになる可能性はほぼ無い。
でも万が一顔を合わせたらどうすればいいのか……。
あの日はパニックで逃げ帰ってしまった。
週末だったことには安心したが、会社は週休二日制。
二日のうちに策を練ろうと思い悩んだものの何も浮かばなかった。
万が一があったら、謝ろう。
もうそれしかない。
一条さんがどんな人かは知らないけど、言いふらしたりはしないはずだ。
一条さん自身になんのメリットもないんだし、それにきっと一条さんにとっても最悪の出来事だったに違いない。
謝って、謝って…………許してもらえなかったら、会社、辞めなきゃいけないとこまでいってしまうんだろうか……
「おはよう」
やばいやばい、考え事をしているうちに会社についてしまった。
ここは会社だ、気持ちを切り替えなきゃいけない。
気持ちは重く沈んでるけど、顔を上げて挨拶を返す。
「おはようございま……」
挨拶を言い切る前に、体が固まった。
目の前にはビシッとスーツできめた一条さんがいた。
万が一がこんなに早く来てしまうなんて……
「……おはようございます……」
バッチリ視線が合ってしまったのを、さり気なく外して挨拶を言い直す。
足は止めずに一条さんの横を通り過ぎる。
万が一が起こったら謝るんじゃなかったのか、自分……!
心の中で叫びながら、背中を小さくしてそそくさと過ぎ去ろうとしたが、大きな手で肩を掴まれて阻まれてしまった。
「おい、冷たいんじゃないの?俺たちもう知らない仲じゃないだろ?」
肩にのせられた手がスマートに移動して肩を抱く形になる。
耳元で囁くように言われて、思わず顔が熱くなった。
完全に足は止まってしまって、顔は下を向いてしまった。
どうしていいか固まってると、一条さんに肩を抱かれたまま会社の中に引きずられる。
途中すれ違う社員に冷やかされたが、一条さんはスマートに交わしていた。
人気のない埃っぽい部屋に連れ込まれて、やっと一条さんは肩を抱いていた手を外してくれた。
「早速だけど、金曜のことどこまで覚えてる?」
金曜……飲み会のあった日、あの夜のことを言ってる。
まぁ、一条さんがそれ以外の理由で僕に話しかけることはないだろうけど。
「……、……ベッドに、寝かせてもらって、介抱してもらいました……」
「その後は?何回ヤったか覚えてるか?」
「ヤ……っ?」
なんて直球を投げてくるんだ、この人は……
「……全く、覚えてないです……、ただ、そういうことしたのは、雰囲気で……」
しどろもどろで話しながらまた顔が熱くなってくる。
だって、僕は今目の前にいる人とセックスしたんだ。
「ふぅん、なるほどね。」
呆れてるのかな……
あんなことしといて覚えてません、なんて。
恐る恐る一条さんを見る。
長身の一条さんの顔は、見上げる高さにある。
長い手脚、高そうなスーツを着こなしていて、モデルのようだ。
整髪剤で整えられた黒い髪が彼の魅力を際立たせていて、たまらなくセクシーで、これが大人の男なのかと思わされる。
ドキマギして冷や汗をかいてる僕とは違って、涼しそうな顔で僕を見ている。
余裕たっぷりな感じが、すごく怖い。
「まぁ俺も三十路だし、それなりに経験はしてきてるが男と寝たのは初めてだ。けど山梨は経験あるんだな」
「え、」
「先輩、先輩~て言ってたけど、彼氏か?」
「……………………違います」
呆れた……
また、先輩を求めてたのか。
また先輩を求めて、先輩じゃない人と寝たのか、僕は。
「まぁ、悪かったよ。お互い酔ってたわけだしさ…………おい、大丈夫か?」
先輩じゃない人と……
……気持ち悪い。
…………気持ち悪い……
「おい、」
しゃがみ込む僕を、一条さんが支えてくれる。
急にリアルに感じたんだ。
先輩……
僕はまた……
先輩……先輩…………
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