7 / 26
○月×日『表札』★
しおりを挟む
あれから一条さんと寝るようになった。
彼が僕の何を気に入ったのかは分からない。
けど、彼は僕を恋人のように優しく触れてくれた。
一緒にいると心地いい。
体が満足したら終わりじゃない、ベッドの上で他愛もない話もするし、会社の愚痴だって話したり、聞いたりする。
場所はいつもビジネスホテルだけど。
最初にシラフで抱き合ったのがスイートではないけど綺麗なホテルだった。
それに比べたら寂れてる。
けど、堂々とラブホテルなんか行けない。
お互いの部屋に行くような関係でもない。
セフレが欲しいわけじゃなかったのに、この関係て、間違いなくセフレだよね……。
恋がしたい。
一条さんと、というわけじゃない。
そんなのは、高望みだとおもう。
会社の先輩で、優しくて、かっこよくて。
でも、そういう人に惹かれてしまう。
先輩みたいな人に……。
ほんとは、先輩がいい。
先輩のものでいたかった。
新しい恋をしたら先輩を忘れられると思ったのに、そんな恋も見つからない。
昂平だって傷つけた。
僕は、欲しがる癖に人を傷つける。
わかってる。
分かってるなら、深入りしなければいいんだ。
昂平の時に学んだはずだ。
セフレはいらない。
けど、この位の関係が、僕にはいいのかもしれない。
それ以上の甘い関係は、僕も、相手も傷つく。
「山梨」
名前を呼ばれて、慌てて顔を上げた。
本日の一条寿志も周りの女性が必ず振り返るほどのいい男を発揮してる。
会社帰りに晩御飯、のちにビジホでセックスが今の僕らの関係だ。
ちょうどこの関係も1ヶ月くらいたった。
「またボーとしてる」
一条さんが呆れた顔をする。
「……すみません」
こんなやりとりは、最近増えた。
一条さんと会うと、必ず考えるからだ、自分の気持ちを殺してるって。
だからって、真剣に恋人をつくろうともしてない。
何かと言い訳を並べて、逃げてきた。
あの人と出会う前だって、女の子と付き合ったことだってあったし、大学時代に、いくらでもチャンスはあった。
でも作らなかった。
今は、一条さんだからだ。
あの人に似てるから…………だから、……だから、1番駄目なのに。
「もう食わないなら場所移すか?」
「ぇ」
僕の箸は完全に止まってる。
食欲が無いわけじゃない。
一条さんといるのに、上の空過ぎ……
一条さんは店員を呼んでお会計してる。
…………呆れられたかな。
……呆れて、捨てられたら、スッキリするのかな。
「ご馳走様でした」
「ん。」
店を出て、お礼を言う。
一条さんは僕に財布を出させない。
6つも年上だし、自分も楽しんでるからって言ってた。
最初は申し訳なかったけど、しだいに慣れてきて……今は、また申し訳なく思ってる。
さっきのご飯だって、楽しい会話とか、なかった。
仕事終わりで疲れてるはずなのに、僕は気の利いた会話1つ出来ずに、一人でボーとしてた。
僕の悩みなんて、一条さんには関係ないんだし、彼と会う時くらいは割り切らなきゃいけないのに、全然誠意ってものが無かった……。
こんな気持ちで、次はセックス……。
……できるのかな、一条さん、呆れてたみたいだし、……怒ってないのかな。
黙って彼の後ろをついてくしかできない。
情けない、僕。
一条さんがエントランスに入って行くあとに続いて足を踏み入れた。
いつもと違った雰囲気だ。
何件か馴染みのビジネスホテルがあるけど、ここは初めてだ。
エントランスからロビー周辺を見渡して、いつものビジネスホテルより綺麗だなと感じる。
「え、あれ……?」
一条さんはロビーを素通りしてエレベーターに乗り込む。
受付とか、手続きはどうなってるの?
僕があたふたしてると、一条さんがエレベーターに乗ったまま手招きしてくるので、よく分からないままエレベーターに乗り込んだ。
「……、あの、宿泊中とかですか?」
多分ありえないけど、聞いてみる。
会社近くだし、出張てわけでもないのにビジネスホテルに宿泊中はないだろう……。
じゃあなんで受付を素通り……?
「ボーとしすぎだろ」
ため息混じりに、一条さんが僕を見下ろしてくる。
エレベーターを降りて、部屋の前で一条さんが鍵を取り出す。
ドアノブにさして……
その1連の流れと、部屋の表札を見て、やっと気づいた。
「……なに泣いてんの」
一条さんが困ったように笑う。
俯いて泣き出す僕の髪を撫でて、胸に抱き寄せてくれる。
「嫌だった?」
慰めるように背中を撫でてくれながら一条さんに尋ねられて、首を振った。
「ボーとしてて道順覚えてなさそうだから、次連れてくる時覚えるように」
「はい」
顔を上げて、頷くと、一条さんが嬉しそうに微笑んでくれた。
手を引かれて、部屋に入る。
まさか自宅に連れてきてくれるなんて思ってもみなかった。
すごくドキドキする。
こんな時て、現金だ。
頭の中が一条さん1色になってる。
「ん、」
寝室に直行して、キスした。
ベッドになだれ込んで、服を脱がし合って、すぐに一条さんを受け入れた。
滑りの悪いソコに、一条さんがローションを垂らして、細かく抜き差しして解してくる。
「んんぅ…っ」
抜けそうで抜けない、その位置が焦れったい。
痛くない、から、もっと奥まで……
「おっと、」
一条さんを寝かせて、上に乗ってやった。
ポジションが入れ替わって、一条さんが僕を見上げてくる。
「無理するなよ?」
「してないです。」
ゆっくりと一条さんのものを胎内に埋め込む。
ピッタリと裸が触れ合って中に全て収まった頃にはお腹がいっぱいに感じた。
「このへん?」
一条さんが面白がって僕の下腹部を指でつついてくる。
「……このへん」
余裕そうな顔に腹が立ったので、一条さんの手を掴んで、へその辺にその手を持って行って撫でさせる。
一条さんの表情が変わったのが見れた。
余裕顔が、獣っぽいそれに変わる。
腹の中で一条さんが膨れ上がるのを感じる。
「あっ、ぃ……っ」
一条さんが中で暴れる。
彼の胸に手をついて、必死にそれを受け止める。
「ぃく、も、僕…っ、ィっ」
堪らなく訴えると、腕を引かれて抱きしめられる。
「あァ、」
一条さんの腹に射精すると、僕の中で彼が脈打つのも同時だったと思う。
「山梨……」
僕の耳元で一条さんがまだ荒い息のまま囁く。
「ここで暮らさないか」
「………………えっ?」
僕は一条さんの上に乗ったまま、照れながら僕の様子を伺う一条さんを、真っ赤な顔で見下ろしてた。
一足飛びすぎじゃないだろうか。
彼が僕の何を気に入ったのかは分からない。
けど、彼は僕を恋人のように優しく触れてくれた。
一緒にいると心地いい。
体が満足したら終わりじゃない、ベッドの上で他愛もない話もするし、会社の愚痴だって話したり、聞いたりする。
場所はいつもビジネスホテルだけど。
最初にシラフで抱き合ったのがスイートではないけど綺麗なホテルだった。
それに比べたら寂れてる。
けど、堂々とラブホテルなんか行けない。
お互いの部屋に行くような関係でもない。
セフレが欲しいわけじゃなかったのに、この関係て、間違いなくセフレだよね……。
恋がしたい。
一条さんと、というわけじゃない。
そんなのは、高望みだとおもう。
会社の先輩で、優しくて、かっこよくて。
でも、そういう人に惹かれてしまう。
先輩みたいな人に……。
ほんとは、先輩がいい。
先輩のものでいたかった。
新しい恋をしたら先輩を忘れられると思ったのに、そんな恋も見つからない。
昂平だって傷つけた。
僕は、欲しがる癖に人を傷つける。
わかってる。
分かってるなら、深入りしなければいいんだ。
昂平の時に学んだはずだ。
セフレはいらない。
けど、この位の関係が、僕にはいいのかもしれない。
それ以上の甘い関係は、僕も、相手も傷つく。
「山梨」
名前を呼ばれて、慌てて顔を上げた。
本日の一条寿志も周りの女性が必ず振り返るほどのいい男を発揮してる。
会社帰りに晩御飯、のちにビジホでセックスが今の僕らの関係だ。
ちょうどこの関係も1ヶ月くらいたった。
「またボーとしてる」
一条さんが呆れた顔をする。
「……すみません」
こんなやりとりは、最近増えた。
一条さんと会うと、必ず考えるからだ、自分の気持ちを殺してるって。
だからって、真剣に恋人をつくろうともしてない。
何かと言い訳を並べて、逃げてきた。
あの人と出会う前だって、女の子と付き合ったことだってあったし、大学時代に、いくらでもチャンスはあった。
でも作らなかった。
今は、一条さんだからだ。
あの人に似てるから…………だから、……だから、1番駄目なのに。
「もう食わないなら場所移すか?」
「ぇ」
僕の箸は完全に止まってる。
食欲が無いわけじゃない。
一条さんといるのに、上の空過ぎ……
一条さんは店員を呼んでお会計してる。
…………呆れられたかな。
……呆れて、捨てられたら、スッキリするのかな。
「ご馳走様でした」
「ん。」
店を出て、お礼を言う。
一条さんは僕に財布を出させない。
6つも年上だし、自分も楽しんでるからって言ってた。
最初は申し訳なかったけど、しだいに慣れてきて……今は、また申し訳なく思ってる。
さっきのご飯だって、楽しい会話とか、なかった。
仕事終わりで疲れてるはずなのに、僕は気の利いた会話1つ出来ずに、一人でボーとしてた。
僕の悩みなんて、一条さんには関係ないんだし、彼と会う時くらいは割り切らなきゃいけないのに、全然誠意ってものが無かった……。
こんな気持ちで、次はセックス……。
……できるのかな、一条さん、呆れてたみたいだし、……怒ってないのかな。
黙って彼の後ろをついてくしかできない。
情けない、僕。
一条さんがエントランスに入って行くあとに続いて足を踏み入れた。
いつもと違った雰囲気だ。
何件か馴染みのビジネスホテルがあるけど、ここは初めてだ。
エントランスからロビー周辺を見渡して、いつものビジネスホテルより綺麗だなと感じる。
「え、あれ……?」
一条さんはロビーを素通りしてエレベーターに乗り込む。
受付とか、手続きはどうなってるの?
僕があたふたしてると、一条さんがエレベーターに乗ったまま手招きしてくるので、よく分からないままエレベーターに乗り込んだ。
「……、あの、宿泊中とかですか?」
多分ありえないけど、聞いてみる。
会社近くだし、出張てわけでもないのにビジネスホテルに宿泊中はないだろう……。
じゃあなんで受付を素通り……?
「ボーとしすぎだろ」
ため息混じりに、一条さんが僕を見下ろしてくる。
エレベーターを降りて、部屋の前で一条さんが鍵を取り出す。
ドアノブにさして……
その1連の流れと、部屋の表札を見て、やっと気づいた。
「……なに泣いてんの」
一条さんが困ったように笑う。
俯いて泣き出す僕の髪を撫でて、胸に抱き寄せてくれる。
「嫌だった?」
慰めるように背中を撫でてくれながら一条さんに尋ねられて、首を振った。
「ボーとしてて道順覚えてなさそうだから、次連れてくる時覚えるように」
「はい」
顔を上げて、頷くと、一条さんが嬉しそうに微笑んでくれた。
手を引かれて、部屋に入る。
まさか自宅に連れてきてくれるなんて思ってもみなかった。
すごくドキドキする。
こんな時て、現金だ。
頭の中が一条さん1色になってる。
「ん、」
寝室に直行して、キスした。
ベッドになだれ込んで、服を脱がし合って、すぐに一条さんを受け入れた。
滑りの悪いソコに、一条さんがローションを垂らして、細かく抜き差しして解してくる。
「んんぅ…っ」
抜けそうで抜けない、その位置が焦れったい。
痛くない、から、もっと奥まで……
「おっと、」
一条さんを寝かせて、上に乗ってやった。
ポジションが入れ替わって、一条さんが僕を見上げてくる。
「無理するなよ?」
「してないです。」
ゆっくりと一条さんのものを胎内に埋め込む。
ピッタリと裸が触れ合って中に全て収まった頃にはお腹がいっぱいに感じた。
「このへん?」
一条さんが面白がって僕の下腹部を指でつついてくる。
「……このへん」
余裕そうな顔に腹が立ったので、一条さんの手を掴んで、へその辺にその手を持って行って撫でさせる。
一条さんの表情が変わったのが見れた。
余裕顔が、獣っぽいそれに変わる。
腹の中で一条さんが膨れ上がるのを感じる。
「あっ、ぃ……っ」
一条さんが中で暴れる。
彼の胸に手をついて、必死にそれを受け止める。
「ぃく、も、僕…っ、ィっ」
堪らなく訴えると、腕を引かれて抱きしめられる。
「あァ、」
一条さんの腹に射精すると、僕の中で彼が脈打つのも同時だったと思う。
「山梨……」
僕の耳元で一条さんがまだ荒い息のまま囁く。
「ここで暮らさないか」
「………………えっ?」
僕は一条さんの上に乗ったまま、照れながら僕の様子を伺う一条さんを、真っ赤な顔で見下ろしてた。
一足飛びすぎじゃないだろうか。
0
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
離したくない、離して欲しくない
mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。
久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。
そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。
テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。
翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。
そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる