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Story 1
妹
しおりを挟むセレスと2人、玄関でロバート様とジル兄様を見送った後、私はセレスに誘われ、セレスの部屋でお茶をしていた。
「お姉さまったら、本当にもう危ないことはやめてくださいよ?」
「わかってるわよ。今日のは少し足を滑らせただけ。」
私はあの階段での出来事を妹のセレスに注意されていた。これではどちらが姉かわからない。
セレスはよく私の心配をする。好いてくれているのは嬉しいのだが、私はそんなに頼りないものかと、セレスに心配される度に考えてしまう。
「それより皇太子殿下がなぜうちに?」
聞くのは野暮かとも思ったが、両親が不在の今、この家の留守を預かれるのは長女である私だけだ。これは長女として聞いているのであって、決してあの東屋で聞いてしまったことが気になっているからというわけではない。
「あ、えっと、招待状です!!!それでいらしたみたいです!!!」
「招待状?あー、今度の誕生祭の。」
「わざわざ持ってきてくださったみたいで…」
セレスは侍女に招待状を持ってくるよう頼んだ。十日後はロバート様の誕生日で、それに伴って三日間は皇太子の誕生を祝う祭りが開催される。皇帝と皇后の誕生日の次に重要なイベントだ。街も大いに賑わう。しかし私は貴族ながら、夜会のような煌びやかな場はあまり好きではないので気乗りはしない。だからといって参加しないなど言語道断。行かないわけにはいかないだろう。
「失礼します。」
セレスの侍女から受け取った招待状は皇室から送られてきたものだという証明印を押してあるし封筒もバーガンディ色をした羊皮紙。確かにこれは皇室から送られた公的なものだ。
しかし、これを皇太子自ら持ってくるというのもおかしい話である。そう考えると、これはただの口実…?
いやいやいや、こんなこと考えても仕方ない。
セレスは隠したがっているようだし、第一、ロバート様にはまだ婚約者がいない。別にセレスと会おうが会うまいがどちらでもいいじゃない。気にしないことにしよう。
「そう、10日後ね…」
「お姉様、髪飾りとかアクセサリーはもう買いました?」
「そういえばまだだったわ」
セレスは身を乗り出して大きくて丸い目を輝かせて私を見た。何か思いついたのか、この顔はこっちから聞くのが私達のルール。
「セレスはどうするの?」
「私も実はまだなんです!」
「そう、じゃあ明日にでも髪飾りのリボンやアクセサリーを買いに行きましょうか」
「はい!!!」
10日後の誕生祭は少し憂鬱だが、セレスとの買い物は楽しみだ。そうだ、大通りに新しくオープンしたあのお店に行ってみよう。
私はわずかに心を弾ませながらも、ロバート様の事は忘れられていなかった。
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