勘違い令嬢と3人の男

ringo69

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自覚

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「セレス…大丈夫よ、ジル兄様が助けてくれたから」
「あぁ、よかった…もう、気をつけてね」

セレスは私の両腕を掴んで私の目を見ながらそう言った。セレスは空気が読めない所はあるがそれ以外は優しくて可愛い私の妹だ。

「ええ、ありがとう」
「ジル兄様もありがとう!姉さんが転ばずにいるのは兄様のおかげだわ!」
「いやいや、俺もヒヤッとしたよ。本当に俺がいてよかった。」
「コホン…」

身内で話していると外から咳払いが聞こえて変な汗が流れる。そうだ。ロバート様がいるじゃない!!私は慌ててロバート様にお礼を言う。

「今日はセレスのためにわざわざご足労いただきありがとうございました。ご用事がお済みなのでしたらそこまでお送りします…」
「ああ、では失礼しよう。」
「じゃあ俺もそろそろ帰るよ」

ジル兄様も帰ると言うので私達は4人でまた階段を降りようとした。が、過保護なジル兄様はまた転ばないかヒヤヒヤしているのか私の腰に手を回して支える姿勢をとった。

「兄様、大丈夫ですわ!こ、子供じゃありませんし…」
「いいや、俺が心配なんだ。また転ばれたらたまったもんじゃないからね」
「ひどいですわ。そんなにひ弱じゃありません!」
「ふふ、顔真っ赤だよ?可愛い」
「兄様!!!」

ジル兄様は時々おかしなことを言う。私を子供扱いして可愛いとか綺麗とか褒められてるのかイジられてるのかわからない為、最近はいじられているんだと思うようにした。

「クラリス子息、俺がレティを支えよう。
本を抱えていては難しくないか?」

先を歩いていたロバート様が振り返ってそう言った。私はとても否定したかった。
こんなジル兄様みたいなことをロバート様がしてしまえば、私はどうなってしまうのかわからない。顔が今よりも赤くなって茹で蛸のようになってしまうだろう。そんな失態、好きな人の前でしたくはない。

「皇太子殿下のお手を煩わせるようなことはできません。それこそ皇太子殿下が転んでしまっては元も子もありませんので、レティは私が。」
「いやしかし…」
「皇太子殿下、お気持ちは嬉しいのですが、私は大丈夫です。」
「……そうか。わかった。」

助かった……。

巷で恋愛小説が流行っていると聞いたことがある。私はまだ読んだことがないけれど、きっとそのヒロインになるのは私のような女ではなく、セレスの様な明るい可愛い子がなるのが普通なんだろう。そして王子様と結ばれて末永く幸せに暮らす。

前を見て歩き出したロバート様の隣にはセレスがいる。ロバート様に何か言っているセレス。それに答えるロバート様。それを後ろで見ている私。この2人は一体どこで仲良くなったのだろう。密かな疑問とこの恋は叶わないことを証明された事にそっと胸を痛め、現実を突きつけられた様に、私は自覚する。


ヒロインの姉は結ばれることの無い立ち位置であるということを────
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