宝かごみかは、君しだい

七草すずめ

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 わすれてないよ、雪が降ってもよろこぶ大人になりたいと願ったこと。
 変わっていくのはそんなちいさなこころ。

 おいしい珈琲を飲んでも、理屈でものを考えても、
 しずかに白いまちは美しくあってほしい。

 転がったペットボトルにも雪の積もる日。
 コートの色を変えながら、そうっと歩いていく。


   *


 忘れられない俳句がある。小学六年生、冬。国語の授業で書いた一句。
「寒いけど雪が降ったら外に出る」
 なぜ覚えているかというと、となりの席だったオガワくんにからかわれたからだ。
「お前ほんとに外に出るんだな、大人になっても外に出るんだな?」
 出るもん、雪遊び楽しいじゃん! と答えながら、少しどきりとした。大人になったら、外に出たくなくなるのかもしれない。だってお母さんは外遊びなんてしないし、「子供は風の子 大人は火の子」ともいう。わたしが大人になったら、雪なんてうれしくないって思うのかもしれない。
 そんなわたしに言葉を届けられるなら、大きな声で叫びたい。わたしいま、全力で雪遊びしています、と。
 去年だったか、雪がたくさん降った日があった。朝早く学校に出勤し、雪かきをして子供たちが登校するための道を作る。あいまに誰も踏み入れていない雪面に足跡をたくさんつける。ついでにミニ雪だるまを作る。
 雪かきがひと段落した頃、校長先生の指示が出る。「もめないように、一時間目は全学年雪遊びにしよう」。とびあがってよろこぶ。
 子供たちとたくさん雪合戦をして、雪だるまも雪うさぎも作った、雪をばらまきアナ雪ごっこもした。いくつになってもしっかり楽しかった。幸せな職業についたな、と思った。
 大人でも、雪が降ったら外に出よう。
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